秋空に響く鏑矢!みどり市ひまわり畑で観る笠懸の武技【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

笠懸の武技

更新日: 2026年01月13日

群馬県みどり市の秋は、夏のイメージを覆す黄金色のひまわり畑が圧巻!約20万本が咲き誇る吹上地区で、毎年10月に源頼朝ゆかりの「笠懸の武技」と流鏑馬が繰り広げられます。雨の中でもひまわりを背景に200 mを駆け抜ける馬と射手。演武を見て、歴史を聞き、実際に和鞍や騎射笠まで触らせてもらった筆者は、もう完全に笠懸の虜になりました。あなたも黄金のひまわりと勇壮な騎射に、心を奪われてみませんか?

みどり市の秋のひまわり畑

みどり市の秋のひまわり畑

<青空の下、黄色いひまわりが一面に広がる様子>

写真提供:一般社団法人みどり市観光協会

 

みどり市は、豊かな自然と歴史が調和する地域です。秋には笠懸町吹上地区に約20万本のひまわりが咲き乱れ、黄金色の絶景が広がります。通常は夏の花ですが、みどり市では秋に満開を迎えるように育て、秋の風物詩になりました。地元「上鹿田むらづくり推進協議会」が管理し、農薬を抑えた安心栽培で家族連れにも人気です。

 

<約20万本のひまわりが咲き誇る圧巻の風景 >

写真提供:一般社団法人みどり市観光協会

 

このひまわり畑こそが、毎年10月に開催される「笠懸の武技」の舞台。次は、その伝統の歴史をご紹介します。

 

<黄金色に輝くひまわり>

写真提供:一般社団法人みどり市観光協会

笠懸とは?

源頼朝ゆかりの笠懸

<源頼朝ゆかりの笠懸発祥の地>

写真提供:一般社団法人みどり市観光協会

 

黄金色のひまわり畑の中で、伝統の「笠懸の武技」が行われます。  笠懸とは、疾走する馬上から小さな的を射る、古来の騎射武技のことです。流鏑馬が神事として格式高いのに対し、笠懸は戦場を想定した実戦的な鍛錬技で、的が低く斜め下に射るため的中が極めて難しい「騎射三物(きしゃみつもの)」の一つに数えられます。 

 

笠懸町周辺は、古くは広大な「新田の原」と呼ばれる原野でした。この地に笠懸のルーツがあります。鎌倉時代の建久4年(1193年)、源頼朝が那須野への狩りの帰途、新田荘の新田義重の館に立ち寄り、この原野で騎射を催しました。すると射手の笠が風に吹き落とされて漂う様子がおもしろく、頼朝は「笠を射よ」と命じたのです。これが笠懸の始まりと伝えられています。

 

頼朝は遊び心だけでなく、武士の射術を鍛える実戦的な武技として笠懸に格式を定め、奨励しました。以後、当地方は「笠懸野」と呼ばれ、現在の町名の由来と言われています。

 

次は、会場へ向かう観光周遊バスをご紹介します。

観光周遊バスでゆったり巡ろう

観光周遊バス

<観光周遊バス>

 

笠懸の武技を見るなら、ぜひ無料の観光周遊バスをご利用ください!特に「ひまわりの花畑まつり」開催日は、岩宿博物館第一駐車場から会場となる吹上地区のひまわり畑まで、直行便があり、演武開始前後も運行していました。駐車場が混雑しやすい日でも、バスなら会場近くまで楽にアクセスできるので大変おすすめです。  

 

<ひまわり畑近くを走る開放的な車両>

 

このバスは時速20km未満で走る電動の低速車両です。環境に優しく、ゆったりと観光を楽しむのにぴったりです。窓がなく、晴れた日には秋風を感じられる開放的なつくりですが、当日はあいにくの雨。そこで、幌が張られ、雨に濡れることなく快適に移動できました。車内はとても広々としており、定員は9名(お子様も1名として計算)でした。 

 

<広々車内でゆったり移動>

 

筆者も実際に乗車してみましたが、運転手さんがとても気さくな方で、道中の見どころや地元のお話をしながら楽しく過ごせました。雨で少し肌寒かったのですが、のんびりとした速度で揺られながら窓の外のひまわり畑を眺めていると、心がほっと和みます。無料でこの快適さと温かいおもてなしを受けられるなんて、本当にありがたい体験でした。

 

<筆者も実際に乗ってみました!無料でこの快適さは最高>

 

また、春には小夜戸・大畑花桃街道やカタクリさくらまつり、夏には小平の里、秋には鹿田山フットパスやひまわり畑を巡るコースなど、季節ごとに多彩なルートを楽しめます。運行日によってコースが異なる場合や、天候不良により運行予定が変更になる場合がありますので、事前にご確認ください。


みどり市観光協会:https://16106midori.jp/recommend/6698/

 

バスを降りたら、いよいよひまわり畑を背景にした笠懸の武技・流鏑馬の演武会場へ。次は、200mの馬場を駆け抜ける迫力のシーンをご紹介します!

大迫力の笠懸の武技

笠懸の武技

当日は雨模様で、予定されていた武者行列は残念ながら中止となりました。しかし、演武開始時刻の13時になると雨が小降りになり、無事に「笠懸」の演武と「流鏑馬」がスタートしました!

 

<疾走する馬上から鏑矢を放つ>

 

弓馬術礼法小笠原教場の宗家や門下生が伝統的な装束に身を包み、およそ200mの特設馬場を駆け抜けます。馬は6頭用意され、合計5回にわたり繰り返し披露されました。 

 

<的めがけて矢を放つ瞬間>

 

スタート地点から一気に加速し、笠懸の武技では1つの的を、流鏑馬では3つの的を狙って弓で木の的や笠に見立てた的を次々に射ます。

 

<一気に加速!ひまわり畑を蹴立てて疾走する人馬の迫力>

 

<弓がしなる最高の一枚>

 

筆者は目の前を凄いスピードで駆け抜ける馬の迫力に圧倒されました。それだけでも驚くのに、射手は手綱を完全に手放し、弓を構えて矢を放つのです。馬と完全に一体となったその姿は本当に格好良く、見とれてしまいました。矢が的中する乾いた音と割れる木の音に、観客から大きな歓声が上がりました。 

 

<鏑矢が空を裂く瞬間>

 

<手綱を離し、完全に馬と一体化した瞬間>

 

<矢を放った直後の射手。気迫が伝わる表情>

 

筆者は正面からのカットだけでなく、後ろからのショットも何枚か撮影してみました。雨で濡れた馬場を蹴立てながら遠ざかっていく後ろ姿と、ひまわり畑のコントラストは、疾走感あふれる迫力の写真になりました。  

 

<的に見事的中していて、矢が宙に舞っているのがわかります>

 

<演武が終わり、戻っていく射手には沢山の拍手が送られました。>

 

今回は天候で一部制限がありましたが、馬と射手の一体感、鏑矢が空を裂く瞬間は戦国時代の再現そのもの。演武が終わるたびに胸が熱くなりました。

 

次は笠懸保存会の方に、笠懸の武技について詳しくお話を聞きました。

笠懸保存会の方にお話を聞きました。

笠懸保存会

演武の興奮が残る中、日本の伝統的な騎射の技である「笠懸」を保存・継承する団体「笠懸保存会」の家住慧路会長と会長代行の大橋さんにお話を伺うことができました。以下にまとめます。


Q:笠懸保存会はいつ頃、どんなきっかけで結成されたのでしょうか?エピソードもあればお願いします。


家住会長:1989年に旧笠懸村制100周年事業として笠懸の武技が始まりました。笠懸の武技と流鏑馬の両方の取り組みをするために、笠懸保存会が一緒にスタートしました。それから弓馬術礼法小笠原教場さんに演武してもらい、力を合わせてやっています。笠懸保存会の会員は50名くらいいましたが、コロナ禍で演武が中止になったり紆余曲折があり、今は役員だけで運営している状況です。 


Q:笠懸の武技と流鏑馬の違いは?


家住会長:本来であれば、綾藺笠(あやいがさ)という鎌倉武士が笠懸に来たときに、風に飛んだ射手の笠を源頼朝が射るよう命じたのが始まりとされています。笠懸の武技は、鎌倉の武士が被っていた笠が的になっています。

 

大橋さん:流鏑馬の場合は的が3つ、笠懸の場合は1つしかありません。流鏑馬の場合は的の高さが水平で矢をはなすと的中する形になっています。

 

<流鏑馬は的の高さがほぼ水平>

 

大橋さん:一方、笠懸は(地面に近い)下の方に的があります。笠懸の武技では的の距離を短くしてあるのですが、本当は28メートルの距離の的なんです。その距離で的中しにくいので、短くしてあるのですが、それでも的中しない難しさがあるのです。 

 

<こちらが笠懸の的。低い位置にあるので的中が難しい。>

 

Q:笠懸の武技は疾走する馬から的を射るすごい技術だと思いますが、その迫力や難しさの魅力を観光客にどんな風に伝えたいですか?

 

家住会長:昨年は的中率が良かったのですが、笠懸の武技の的中率はすごく低いです。水平に打つということと、斜めに打つこと、当然矢の形が違うのですごく難しいです。

大橋さん:矢の形が流鏑馬と笠懸では違っているのも魅力です。流鏑馬の場合は的中すると板が割れますが、笠懸の場合はなめしの皮が貼ってあるだけで音がするだけです。迫力では流鏑馬のほうがあります。 

 

 Q:笠懸の武技を観光客にアピールするなら?

 

家住会長:笠懸は武技で、流鏑馬は神事です。笠懸の武技は、鎌倉武士の鍛錬からきています。笠懸の武技を正当に近い形でやっているのは日本中で笠懸だけなんです。背景がひまわり畑というのも全国的に珍しい舞台です。


大橋さん:小笠原宗家には、馬に乗って弓を射る伝書があるのですが、流鏑馬と笠懸と犬追物というものがあります。ただ、犬追物は動物愛護法でできないので、今できるのは流鏑馬と笠懸の2つです。


Q:笠懸の武技で使用している馬の特徴は?

 

大橋さん:基本的に元競走馬です。今日来ているのは日光東照宮の乗馬クラブの馬です。ただ、同じ馬でも鞍が違います。一般の乗馬だと皮の鞍を使っていますが、演武では和鞍(わぐら)という木で作ったものを使用しています。鞍が違うために、慣れてない馬で無いと、嫌がってしまって走ってくれなくなります。今日は6頭来ているのですが、和鞍に慣れている馬しか来てません。和鞍ですから、鐙(あぶみ)も昔のものなので、慣れた馬でないと、同じ元競走馬でも演武ができません。


Q:おすすめの楽しみ方は?

 

家住会長:基礎知識を勉強してきていただければもっと楽しいです。笠懸の町名の由来や鎌倉時代からの歴史を頭に入れて見ると、ただ的中するかどうかではなく、笠懸野という地域が武士の鍛錬の場だったことが実感できます。 

 

Q:笠懸の武技が全国に知られたら、どんな楽しい未来になりそうですか?

 

家住会長:付近に温泉センター(湯〜トピアみどモスパ)が建設中で、笠懸の武技を楽しんで、温泉に入って、地元産品を買って頂いて、ひまわり畑も楽しんでもらいたい。これは笠懸だけのもので、全国に通用するコンテンツだと思っています!

 

インタビューは以上になりますが、お二人のお話を聞いて一番驚いたのは、笠懸の的を短くしているのに、それでもほとんど当たらないという現実。手放しで弓を射る演武を見ただけでも「すごい!」と思ったのに、裏側の苦労と執念を知ったら、言葉にならないくらい感動しました。

次は、実際に触らせていただいた伝統の装備を詳しくご紹介します!

伝統の馬具に触れてみた!

興奮が冷めやらぬまま保存会のご厚意で演武で使われた和鞍・和鐙・弓を間近で見せていただけることになりました!  

 

まず手に取った和鞍は木製なのに驚くほど軽く、「これなら馬の負担も少ない!」と感動。座る部分は前のほうが高く作られていて、射手が立ち上がりやすい設計だとわかりました。  

 

<和鞍:軽量で前傾姿勢を支える木製の特徴を強調>

 

次に和鐙(わあぶみ)を手にすると、今度はびっくりするほど重い!「これを足で踏ん張るのか」と唖然。底が平らっきょう型で面積が広く、重心の高い武士が馬上でバランスを取るための工夫だと実感しました。  

 

<和鐙:騎乗時の安定性を高めるために堅牢な作りになっており、ずっしりと重い>

 

そして矢も見せてもらいました。矢は左に7本並んだ笠懸用、右の流鏑馬用です。鏑矢の先端を見ると、空洞に開いた「目」と呼ばれる穴がいくつもあり、軽く振るだけで鳴る仕組みになっているようです。

 

<弓:左7本が笠懸で使用する鏑矢(かぶらや)。右4本が流鏑馬で使用する雁股矢(かりまたや)>

 

 <鏑矢(かぶらや):印象的な形状。内部が空洞になっており、表面には「目」と呼ばれる複数の穴が開いています>

 

<雁股矢(かりまたや):矢の先端が雁の足のように二股にわかれたU字型になっています>

 

その後、射手が頭に被っていた「騎射笠(きしゃがさ)」も見せていただきました。竹を編んで作成している伝統的な笠で、雨の中でも濡れずに済む実用性と見た目の勇ましさが抜群でした。

 

<騎射笠(きしゃがさ)。こちらも軽量でした。>

 

群馬県みどり市笠懸町の名前の由来となったと言われる「笠懸の武技」は、源頼朝がこの地で始めたとされる実戦的な騎射。800年以上の時を超えて今も受け継がれています。雨のひまわり畑で見た勇壮な演武と、実際に触れた伝統の装備、そして保存会の皆さんの熱い想い。この日体験したすべてが、忘れられない宝物になりました。

 

黄金のひまわり畑を背景に輝く笠懸の武技。雨でも熱を帯びた演武は、まさに800年前の武士が蘇ったようでした。保存会の情熱と実際に触れた和鞍・和鐙・和矢が胸に残ります。歴史を知って見るからこそ味わえる感動を、あなたもぜひみどり市で!秋の群馬旅に絶対おすすめです。

 

インフォメーション

ひまわりの花畑まつり/笠懸の武技・流鏑馬 

 

開催場所:みどり市笠懸町吹上地区(ひまわり畑内特設馬場) 
アクセス:北関東自動車道「太田藪塚IC」より車で約20分。JR両毛線「岩宿駅」よりタクシー約10分

 

 

みどり市産業観光部 観光課

 

住所:みどり市笠懸町阿左美1912番地1

電話:0277-76-1270

 

HP:https://www.city.midori.gunma.jp/sangyou/1001646/1001795/1006608/1008759.html
SNS:@16106_midori_city

 

 

一般社団法人みどり市観光協会

 

住所:みどり市大間々町大間々1034番地5

電話:0277-46-7289

営業時間:9:0016:00
定休日:年末年始

 

HPhttps://16106midori.jp/
SNS@midori_kankou

タマル様

タマル

群馬の魅力を発信する「タマルのぐん旅」ブログを運営。旅形式で県内の秘境や温泉、隠れた名店などを綴っています。趣味は、県内の温泉巡りと地元グルメの食べ歩き。ロードバイクで挑む「榛名山ヒルクライム」や「碓氷峠ヒルクライム」で群馬の魅力ある自然を体感しています。