標高1,000mの天空リトリート|自然と動物に癒される日本最古の洋式牧場「神津牧場」 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

日本最古の洋式牧場「神津牧場」
<遠くに見える赤い屋根が目印です photo by Masaaki Muraoka>
国道254号線・内山峠から県道44号線に入りくねくねとした山道を登っていくと、眼下に広がる物見山東傾斜地に神津牧場があります。晴れた日には、浅間山を見ることもできます。
神津牧場は明治20年に開かれた日本最古の洋式牧場で、今もなお多くの牧場関係者が学ぶ認証牧場でもあります。
創業当時から牛の糞を堆肥にして牧草を育てる循環型の酪農を実現していて、自然の中で育ったジャージー牛の牛乳はタンパク質やミネラル、ビタミンの含量に優れているそうです。
牧場に着いて最初に感じたのは、とても開放的だということ。見渡す限り広がる空と大自然に囲まれ、心と体がすっきりしました。
<遠くの山並みまできれいに見えました photo by Masaaki Muraoka>
人間・自然・動物の「共存」を一つのテーマにしている神津牧場の敷地内には草原と林があり、牧場で飼育されている動物以外にも、野生のシカ、アナグマ、タヌキ、ノウサギなどさまざまな動物が暮らしています。
神津牧場名物・ジャージー牛の約80頭の行列は必見
<牛舎まで列を作って向かいます photo by Masaaki Muraoka>
神津牧場の名物の一つになっているのが、この牛の行列です。これは朝から放牧地に出ていた牝牛たちが毎日13:00頃、搾乳のために牛舎に戻るために見られるもの。
行列の時間が近づくにつれて、たくさんの来場者が集まってきました。
牛の行列は毎日の日課なので、牛たちは迷うことなく列を作って牛舎に向かいます。約80頭もの牛が列をなす光景は、まさに圧巻です。
ちなみに、夏の放牧期間中は1日2回放牧地と搾乳場を往復するので、牛1頭あたりの歩く距離は629㎞!放牧中に歩く距離も含めると、1,000㎞にもなるそうです。
牛の行列を見学したあとは、場内の牛舎も見学しました。こちらは人間でいうと高校生くらいの女子集団。
<牛たちから近寄ってきてくれました photo by Masaaki Muraoka>
おとなしい性格ながらとても人懐こくて、牛舎の柵の前に立つだけで牛たちから近づいてきてくれます。たった1〜2分で牛舎のほとんどの牛が集まってきてくれて、なんだか集合写真のようになってしまいました。
少し離れたところには、仔牛たちが過ごす牛舎もありました。
<クリクリとした目が可愛い photo by Masaaki Muraoka>
仔牛は生まれた直後からお母さんから離れ、一頭ずつ過ごします。その後数ヶ月すると、場長やスタッフから「幼稚園」と呼ばれる、数頭で一緒に過ごすエリアに入るのだそうです。
<photo by Masaaki Muraoka>
牛たちは大切に育てられて大きくなり、私たちに美味しい牛乳や乳製品を届けてくれるんですね。
「お散歩やぎさん」ならぬ「お散歩ひつじさん」にチャレンジ!
<お散歩に出発! photo by Masaaki Muraoka>
神津牧場は、動物たちへの理解を深めてもらうため、さまざまな体験も行っています。
私が気になったのは「お散歩やぎさん」。今回は、羊のラテちゃんとのお散歩にチャレンジしました。「お散歩やぎさん」ならぬ「お散歩ひつじさん」ですね。
スタッフさんに分けていただいたおやつを食べさせながら、最初はゆっくりゆっくり進みます。すると調子が出てきたのか、突然軽快な足取りに!
<ラテちゃん調子が出てきました! photo by Masaaki Muraoka>
この調子で最後まで駆け抜けるのかと思いきや、今度は突然道端の草を食べ始めたりと、なかなか思うようには進みません。でも、これもこの体験の楽しさですね。
同じタイミングで、ラテちゃんと仲良しのヤギのダニエルくんも散歩に出かけていました。
<photo by Masaaki Muraoka>
こちらの女の子とお母さんは、近隣にお住まいで、神津牧場には何度も訪れているようです。お散歩のあとは、ヤギたちに餌をあげて楽しんでいました。
<photo by Masaaki Muraoka>
そのほかにも楽しい体験やおいしいものが楽しめる
<ポニー乗馬はお子さま限定です photo by Masaaki Muraoka>
他にも同じエリアで、「ポニー乗馬(お子さま限定)」と「乳しぼり体験」にも挑戦できます。
<photo by Masaaki Muraoka>
私もスタッフさんにやり方を教えていただき、乳搾りに挑戦。親指と人差し指で輪っかを作って、中指・薬指・小指と順に指を添えて握るようにしてしぼります。
<photo by Masaaki Muraoka>
牛の大きな体はとても温かく、瞳は澄んでいて、側にいるだけで癒されます。
他にも牧場内では、神津牧場オリジナルの乳製品や牛肉製品が販売される売店、ジャージー牛を使用したハンバーガーやカレーなどのメニューが楽しめる食堂があります。
<木の温もりが感じられる店内 photo by Masaaki Muraoka>
<photo by Masaaki Muraoka>
鉄板焼きコーナーは土日祝日限定で営業、私はここでランチを楽しみました。
<photo by Masaaki Muraoka>
こちらで提供されているのは、神津牧場で大切に育てられたジャージー牛の鉄板焼きです。命を大切にする観点から、限られた数の牛だけ、お肉として提供しているのだそうです。
<photo by Masaaki Muraoka>
自然のままに育てているため、引き締まった赤身は脂身が少なく、すっきりした味わいでした。
<ジャージー牛のソフトクリームもおすすめです photo by Masaaki Muraoka>
ちなみに、こうした体験の際にサポートしてくれるスタッフさんは全員で20人程度。しかも牛の世話はもちろん、売店や鉄板焼きのお店、スーパー・デパートへの商品の配達など、場内の施設の運営もすべて担っているそうです。
最近はInstagramやX(旧Twitter)などのSNSでの発信にも力を入れているそうで、スタッフ全員で協力して神津牧場を「守っていこう」「盛り上げていこう」という熱意が伝わってきますね。
1泊2日の「親子牧場体験」とは!?
<場長の須山さん photo by Masaaki Muraoka>
当日は、須山場長にもお話をお伺いすることができました。
場長によると、神津牧場の一番の特徴はジャージー牛を放牧で飼っていることなのだそう。「牛にストレスが少ないこともそうだし、乳製品もシンプルな作り方を採用しているから、自然のままの美味しいものができています。このスタイルで運営している牧場は全国的にも珍しいですよ」とお話しされていました。
さらに場長は、「もっと神津牧場を楽しむなら、ぜひ『親子体験牧場』を体験してみください」と続けます。
「親子体験牧場」とは、1泊2日で草刈り、バター・チーズ作り、燻製作りなどの牧場の仕事を体験したり、夜中にサーチライトを持って放牧地へ探検したりなど、酪農への理解を深める取り組みです。
<photo by Masaaki Muraoka>
「神津牧場は牛の飼育、生産、そして販売まですべてを担っている牧場なので、どうやって商品ができていくのか、一連の流れがわかることに強みがあるんです」と場長。
年に4〜5回実施されているこの親子牧場体験はリピーターも多く、すでに3回以上参加している方も複数いるほど好評なのだとか。
きっと子どもたちだけでなく、大人もたくさんの発見ができるからなんでしょうね。
大自然に囲まれた神津牧場を日常を忘れて満喫したからか、当日は21:00には就寝。心地よい疲労感で朝までぐっすり眠れました。
自然と動物の「癒し」を全身で感じるリトリート、またすぐに訪れたくなる癒しの場所になりそうです!皆さんもぜひ、体感してみてはいかがでしょうか。
インフォメーション
公益財団法人 神津牧場
住所:群馬県甘楽郡下仁田町南野牧250
電話:0274-84-2363
営業時間:8:00〜17:00
定休日:毎週水曜日(GW、お盆等は営業※売店は冬季休業あり)
料金:入場無料(体験は別途料金)

望月優衣