水辺散策~揚舟でゆく秋の谷田川めぐり【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

谷田川めぐり(板倉町)

更新日: 2024年10月01日

「鶴舞う形の群馬県、くちばし担当板倉町」このフレーズの通り、私の住む板倉町は、県の東の端っこにあります。利根川や渡良瀬川など大きな川がいくつも流れていて、その恩恵と脅威の両方を受けながら農業の町として発展してきました。そんな暮らしに根づいた文化のひとつが「揚舟(あげぶね)」。当時は避難具として家屋の軒に吊り下げられ、水害時には住民や家畜、穀物の運搬や水中の稲を船刈りするために使われてきたそうです。

 治水事業が進んだ結果、私が住み始めた現在では揚舟の出番はなくなったそうですが、「我が家にもあったんだよ」と義父母が懐かしく話してくれました。そんな揚舟を体験できる催しが町主催で行われているというので、家族と一緒に出かけてみました。

 

揚舟体験に「群馬の水郷」へ到着

群馬の水郷

残暑がようやく終わった!そんなからっとした空気に包まれた気持ちのいい秋晴れのこの日。午前10時に、揚舟体験の集合場所である「群馬の水郷」にやってきました。広い駐車場があり、普段から釣り客でにぎわっている様子。駐車場脇の看板を過ぎて、どんな舟に乗るのかな?とドキドキしながら川沿いに歩いていくこと100mほど。

受付の白いテントが見え、そこには笑顔で迎えてくれた町の職員さん。まずは、渡された申込の書類に記入して、注意事項の説明を受けます。水にぬれる可能性もあるということで、貴重品以外の荷物は預かってもらえるのはとても助かりました。

そして何やら子どもにはガチャガチャのプレゼントがあるというので、早速ガチャガチャすると、、、板倉町のマスコットいたくらんの缶バッチが出て大喜び。

仕上げに、涼しさはもちろん、なんだか雰囲気抜群の笠と、安全第一のライフジャケットを着用して準備はOKです。

 

 

風を感じる水辺散策に出発!

水辺散策に出発

6人乗りの舟にゆっくり一人ずつ乗船。サポートの職員さんが舟をしっかり押さえてくれるので、心強かったです。乗り込み終えると、長い竹竿をもった船頭さんとの舟旅がいよいよスタート。これでも水量は少なめだったそうですが、想像以上に水面が近く感じて、舟べりと水辺の隙間は10センチほど。

 

 

はじめは揺れる舟にソワソワしていた子どもたちも、ゆっくりと漕ぎ出した舟の上で、心地よい風を感じるとすぐにリラックスできた様子。土手の植物を眺めたり、水の生き物を探したり、トンボやアメンボを発見!と喜ぶうちに、じゃぼん!と音がして遠くで水しぶきが!どうやら鮒?鯉?らしき魚もいたようです。迫力満点のジャングルクルーズとはひと味違った、穏やかな癒しの谷田川クルーズを満喫しました。

 

町の職員さんも船頭さん!?

船頭さん

川沿いに自生している胡桃の木や、漁師さんが仕掛けた網(なまずや鯉、川エビがかかるそう)のこと、なぜ夏と冬には谷田川の水がなくなるのか?気さくにそんな話をしてくれたのは現在唯一の専属船頭、山根さん。「歌は歌えないけど、自然の音を楽しんで」とはにかみながら教えてくれました。

他にもこうした船頭さんが何人かいたそうですが、皆さん高齢で引退を決める中、残された山根さんだけではとても立ち行かなくなりました。そこで船頭として白羽の矢がたったのが町の男性職員さんでした。といっても簡単なことではなく、足腰を鍛えることはもちろん、川の水かさや流れの傾向をつかんだり、竿の扱いを学んだり、交代で船頭を務めるために、仕事の空いた時間には谷田川まで来て練習を重ねているそうです。自主練までとはすごいですね、と感心すると、担当の職員さんが、「舟では皆さんのお金も命もお預かりしていますから!」と静かに、でも熱く語ってくれました。

 

<あちらは、町の職員船頭さんの舟。すれ違いざまに気持ちいいですね~と>

おもてなしの心と仕掛けが盛りだくさん

チラシ

平成13年に郷土の水文化を伝えるイベントがきっかけでスタートしたというこの揚舟体験。現在も春と秋の年に2シーズン開催されています。来場者に喜んで貰おうと、土手回りにコスモスやひまわりを植えたり(残念ながら今年のコスモスは大雨で種が流されてしまったそうです)、舟の座面には小さな座布団が用意されていたり、体験当日の乗船券提示で町内のグルメがお得に楽しめたりと、おもてなしが盛りだくさん。

体験終了後、職員さんからは「板倉町はぐんまの端っこですが、ぜひ県内すみからすみまで楽しんでください!」そんなメッセージと笑顔で見送ってもらいました。

 

 

いかがでしたか?揚舟体験でお届けした秋の水辺散策。都会では感じることのできない、自然の音と水辺の空気、爽やかな風とおもてなしのこころに包まれたひと時を過ごしに群馬のはしっこ、板倉町を訪ねてみてはいかがでしょうか?

インフォーメーション

「揚舟 谷田川めぐり」

土日祝日のみの運航:春の運航5~6月/秋の運航9~10月

運航時刻:9:00~15:00

※天候や河川状況により運休する場合あり

料金:大人1000円、小学生以下500円

設備:駐車場あり/トイレあり

 

問い合わせ先

板倉町役場 産業振興課 商工観光係

電話:0276-82-1111

営業時間:平日8:30~17:15

https://www.town.itakura.gunma.jp/cont/s021000/d021020/agebune.htm

 

ぐんま観光県民ライター

柏崎祐子

佐賀県生まれ、群馬県板倉町に引っ越してきて7年目のきゅうり農家。3児の母。板倉の好きなところは、開けた田んぼ風景とバルーンが浮かぶ広い空。澄んだ夕焼けがとってもきれいなところです。