まるで別の惑星!?浅間山のふもとを歩いたら、地球の歴史を感じた!【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
浅間山ってどんなとこ?群馬と長野の間にある国内有数の火山!
「スカイロックトレイル」は、群馬県と長野県の県境に位置する標高2,568mの浅間山のふもとを歩くトレッキングコースだ。浅間山は日本百名山の一つで、高山植物を楽しむことができる「花の百名山」の一つにも数えられる。
また、浅間山は日本有数の活発な火山としても知られ、現在でも山頂から煙(正確には水蒸気らしい)を出している。直近の大噴火は約240年前の1783年(天明3年)。その時の火山灰は200km離れた千葉県・銚子(!)まで達し、のちの天明の大飢饉のみならず、世界的な凶作に影響し、フランス革命の一因になったという説もあるらしい(中学の時の社会科の先生に習いました)。
私の生まれ育った嬬恋村はそんな浅間山の北側に位置し、浅間山の煙がどう流れているかで翌日の天気を予想したり、斜面の雪解けの様子を見て畑の種植えを始めたりと、浅間山は昔から身近で親しまれてきた山だ。今でも浅間山の斜面に“逆さ馬”と呼ばれる残雪が現れる頃になると、「春がきたな〜」と個人的にも思う。
浅間山とキャベツ畑
煙を上げる浅間山。中央右寄りの残雪が“逆さ馬”
天空の秘境⁉︎スカイロックトレイルってどんなコース?
さて、私がおすすめする「スカイロックトレイル」は、そんな浅間山の北側の斜面を約6km、高低差300mのコースを周遊するトレッキングツアーだ。浅間山北麓ビジターセンターから始まる約4時間のコースは、初夏にはシャクナゲやイワカガミが咲き、ナナカマドの実やオオカメノキの葉が赤く色づく秋の紅葉も美しい。夏に見晴台から望む嬬恋村特産のキャベツで大地が埋まっている景色も圧巻。さらに、壁のようにそびえる溶岩をハシゴで登る体験もできる。また、コースの後半では国の特別天然記念物である溶岩樹型と、その中に輝くヒカリゴケを観察することもできる。
いざ、“天空の秘境”へ!
背高く咲く野生のシャクナゲ。まさに“高嶺の花”(5月中旬ごろ)
真っ赤に紅葉するオオカメノキの葉(10月上旬ごろ)
見晴台からは四阿山や草津白根山、谷川連峰などが見渡せる
溶岩樹型とヒカリゴケ
溶岩をハシゴで登る!
鬼が溶岩を持ってきた?鬼押出し溶岩に囲まれた広場はまるで異世界!
紅葉やバードウォッチングも楽しいコースだが、「スカイロックトレイル」の最大の魅力は、コースの中盤にある広場、通称「舞台溶岩」からの下り道だ。標高約1,650mのこの場所から、240年前の大噴火で火砕流として噴出した地層の上を標高を下げながら歩くことで、「森の成長の過程」を楽しむことができるのだ。
浅間山の山頂が間近に見えるこの広場では、約240年前(1783年)に噴出し、流れ出た姿のまま冷え固まった黒い溶岩の表面を見ることができる。この溶岩は鬼が岩を押し出したように見えることから、“鬼押出し溶岩”と呼ばれ、今にも動き出しそうな迫力がある。その溶岩の周りは木や草があまり生えておらず、荒涼としている。まるで別の惑星に降り立ったような気持ちになる。月の表面ってこんな感じかも。
浅間山の下に広がる黒々とした“鬼押出し溶岩”
溶岩がゴジラに見えたり、某星戦争の帝王に見えたり…
高度を下げて、高山植物の群生地から森の中へ。
コースを歩き始めてここまでで大体2時間。舞台溶岩の広場を後にして、溶岩石が多いコースを下っていくと、まずはガンコウランやミネズオウなどの小さな植物が目立つ。土がほとんどない場所にも根付くパイオニア植物だ。さらに下っていくと、小さな樹木が茂ってくる。養分の少ない場所で大きく成長しきれないでいるカラマツやゴヨウマツなどのマツ類だ。マツが小さい!膝下ぐらいのサイズの、言わばマツの赤ちゃんをこんな風に見ることってあるのだろうか。少なくとも私はここでしか見たことがない気がする。小さくても、ちゃんとマツなところがちょっとかわいい。
さらに進むとだんだんと木の高さが自分より大きくなり、やがてカラマツやアカマツなど、見上げる高さの成木が茂る森の中を歩くことになる。森林限界は超えていないのに、なぜこのコースは木がないところから森までを体験できるのか、不思議な気分になる。
背の高さぐらいの木の間を標高を下げながら歩いていく
小さくてかわいいゴヨウマツを上から撮影。ガンコウランも見える
天然のカラマツが生い茂る森に到着!風景が全く違う
地球の歴史を疑似体験⁉︎自然のパワーってすごい!
このコースがユニークな理由は、噴火を繰り返してきた浅間山の溶岩流や火砕流の上を歩いて楽しむことができるということ。そして、噴火のたびにリセットされて姿を消した森などの自然が再生する自然の営みを間近に見ることができるということ。標高が高いと環境が厳しいため植物が育ちにくく、原始的な姿に近い自然を見ることができる。標高を下げていくとだんだんと環境が和らぎ、噴火の後にできた土壌の上に成長した森を見ることができる。まるで45億年前に生まれた星が、長い年月を経て植物が生い茂る豊かな地球になるまでの過程を疑似体験しているようだ。
コース内の森の中で倒木が多いのも、溶岩流や火砕流が固まった岩盤の上に土壌ができているため、根が地中深くまで成長できないからだそうだ。こういった倒木が、年月を経て新しい森の土壌になり、その上に新しい植物が成長していく。そういったことを繰り返し、豊かな森になっていくのを想像すると、途方も無い年月を感じるが、地球が重ねてきた年月に比べれば一瞬だ。こんなことを考えながら歩くと、自然の大きな力を感じてエネルギーが満ちてくる気がする。
小さなカラマツと浅間山。森になりつつある時間の中に自分がいると考えると感慨深い
まとめ
黒くゴツゴツとした鬼押出し溶岩の中にひっそりと生えている小さな植物も、約240年の間に根付いたと思うと、その健気さに愛おしささえ感じる。小さいマツや倒木など、普段のトレッキングなら見逃してしまうような発見も、森ができていく過程を感じながら歩くと、自然のパワーを強く感じられて楽しい。火山を歩くと聞くと、マイナスのイメージがあるかもしれないが、火山だからこそ楽しめる風景が「スカイロックトレイル」にはある。ぜひ多くの方に体験してほしい。
インフォメーション
「スカイロックトレイル」は上信越高原国立公園特別保護区内を歩くコースのため、ガイドの同行が必須です。ガイドのお申し込み、お問い合わせは下記サイトか浅間山ジオパーク推進協議会まで。
〈お問い合わせ先〉
浅間山ジオパーク推進協議会
住所:〒377-1524 群馬県吾妻郡嬬恋村鎌原494−45
電話:0279-82-5566
HP:http://www.asamaen.tsumagoi.gunma.jp/sky.html
料金:入山料1,000円/人
+ガイド料15,000円(ガイド一人につき7名まで入山可)
ぐんみゃ