群馬が誇るブランドいちご「やよいひめ」の魅力を徹底解剖! | 特集一覧 | 心にググっと観光ぐんま

群馬が誇るブランドいちご「やよいひめ」の魅力を徹底解剖!

DSC04503_23.3.18リサイズ.jpg

更新日: 2024年09月11日

 

■オリジナルいちご開発への挑戦

 

 キュートな形と甘酸っぱい味わいで、老若男女に愛されるいちご。冬から春にかけて、スーパーにはさまざまな品種のいちごがずらりと並びます。農林水産省に登録されている品種は、なんと約300種類。各県のブランドいちごがしのぎを削る中、群馬県を代表するいちごが「やよいひめ」です。

 群馬県農業技術センターがいちごの品種開発に本格的に乗り出したのは、今から30年ほど前。当時、群馬県では主に栃木県で育成された「とちおとめ」が栽培されていました。しかし、同じとちおとめでもブランド力のある栃木県産と比べると、群馬県産は価格がつきにくいのが実情でした。そこで群馬県独自の品種をつくろうという声が持ち上がったのです。

第1号として開発されたのは、アメリカから導入した品種に「女峰」(栃木県)を掛け合わせた「とねほっぺ」。大粒で綺麗な円錐形が特徴的でしたが、糖度と果皮の弱さがネックとなり大ヒットとはなりませんでした。とねほっぺの優れた特性を生かし、より品質の高いいちごを作れないだろうか。挑戦を続ける中で誕生したのが「やよいひめ」です。

 

いちごをはじめ様々な農産物の研究が行われている群馬県農業技術センター

 

■選び出された奇跡の一粒

 

 いちごの品種開発は、1度の交配だけで簡単にできるものではありません。色々な品種の掛け合わせを何十通りも試し、採取した種から苗を育成。ひと株ごとに成長を観察し、果実の味を確かめて、膨大な候補の中から優秀な株を選抜します。その株を増やして、また選抜。理想のいちごができるまで、その作業の繰り返しです。

「同じ親から生まれたいちごでも、少しずつ個性が異なります。ピーク時には1日100個以上を食べ比べることも。根気のいる作業です」と農業技術センター研究員の柳田悠輔さんは話します。

やよいひめの親にはとねほっぺと、とねほっぺの弱点を補うべく糖度が高いとちおとめが選ばれました。この2つを交配し選抜した株に再びとねほっぺを掛け合わせ、1系統に絞り込むまで3度の選抜作業を繰り返しました。県内の生産農家による試験栽培を経て、2001(平成13)年に品種登録を出願。2005(平成17)年、「やよいひめ」としてデビューを果たしたのです。

 

 

いちごの生育状況を観察する研究員の柳田悠輔さん

 

■3月を過ぎても美味しさそのまま

 

 一般的に春になり気温が高くなると、いちごの品質は落ちやすくなると言われています。ところがやよいひめは3月(弥生)以降も色が黒ずむことなく、美味しさもそのまま。これが名前の由来になっています。大粒で甘み・酸味のバランスが良いのに加え、果皮がしっかりしていて傷がつきにくいのも大きな特徴。明るい赤色で断面が美しく、フルーツサンドやパフェなど“萌え断スイーツ”の主役としても重宝されています。

やよいひめは他県のいちご育種担当者からも高い評価を受けています。佐賀県の「いちごさん」、埼玉県の「あまりん」、神奈川県の「かなこまち」など、近年開発された新品種の親としてやよいひめが使われているのがその証でしょう。

 2025年1月に育成者権(*注1)が切れ、全国どこでも自由にやよいひめが栽培できるようになります。栽培する農家が増え、全国区の知名度を獲得することが予想される一方で、“群馬ならでは”というブランド力が薄れてしまうことも懸念されます。

「やよいひめに続くいちごの開発が目下の目標です。やよいひめ唯一の欠点は、収穫開始時期が遅いこと。やよいひめよりも早く収穫できるいちごを目指して開発を進めています」と柳田さんは力強く語ってくれました。新しいブランドいちごの誕生も楽しみです。

 

*注1 栽培や販売を制限できる権利。

 

 

 

■より美味しい「やよいひめ」を目指して

 

 やよいひめは群馬県のいちご栽培面積の約8割を占めています。県では毎年いちご品評会を開催していますが、生産者の努力によって栽培技術は年々レベルアップしているといいます。

2024年1月に開催された「第41回群馬県いちご品評会」の「やよいひめ」部門で最高賞の県知事賞を受賞した、「松井ファーム」(前橋市上佐鳥町)を訪ねました。

松井ファームは創業から60年以上の歴史あるいちご農園。2代目・松井利彦さん、3代目・貴一さんが、やよいひめを中心に10品種のいちごを栽培しています。

やよいひめは比較的育てやすく管理がしやすい品種だと言いますが、「肥料を変えてみたり、ハウス内の温度設定を変えてみたり、毎年試行錯誤しています」と貴一さん。さらなる品質の向上に向けて余念がありません。

 「松井ファーム」ではいちご農家を志す研修生の受け入れにも力を入れており、松井さんのもとで学んだ生産者が、県の品評会で多くの賞を受賞しています。「ライバルが増えて大変ですよ」と苦笑しつつ、「生産者仲間で情報を交換し切磋琢磨する中で、より美味しいやよいひめを作っていきたい」と話してくれました。

 

いちごづくりに情熱を傾ける松井ファームの松井貴一さん

 

■摘みたての美味しさを味わおう

 

「いちごは鮮度が命。完熟したものを収穫してすぐに食べるのが一番です」と貴一さん。スーパーに並ぶいちごの中には、流通の時間を考慮して熟度が若いうちに摘みとられたものもありますが、松井ファームでは完熟したいちごを朝摘んですぐに出荷しています。

直売所では朝摘みいちごの他、いちご大福や、いちごスムージーなどのスイーツを販売。スムージーは時期によって5、6品種から好みのいちごを選べますが、一番人気はやはりやよいひめだそう。1月上旬〜5月下旬までいちご狩りも楽しめます(午前中のみ。要予約)。摘みたての新鮮いちごが味わえるだけでなく、たくさんのいちごの中から美味しい一粒を選び出すのもいちご狩りの醍醐味。最後に、美味しいいちごの見分け方を教えてもらいました。

「パッと見て色ツヤがよく、つぶつぶ(そう果)の間隔が離れているものを選ぶと良いですよ」

 

 

松井ファームの「濃厚いちごスムージー」と見た目も愛らしい「いちご大福」

 

群馬県は広い範囲でいちごが栽培されており、たくさんのいちご狩りが楽しめるスポットがあります。群馬が誇るやよいひめの美味しさを堪能しましょう。

くだもの狩りでぐんまの旬を楽しみたいと思ったら、是非下記のサイトもチェックしてみてください。

《味覚あふれるぐんまのくだもの園》

https://aic.pref.gunma.jp/kajyuen/