夢を乗せ走った赤城山鋼索鉄道、登山道を辿りその遺構を偲ぶ【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

赤城山鋼索鉄道山頂駅跡(写真提供:桐生市 教育委員会教育部 文化財保護課)

更新日: 2024年03月27日

群馬県の魅力をぐんま観光県民ライター(ぐん記者)がお伝えします!

かつて赤城山観光への移動手段として開発された「赤城山鋼索鉄道」。沢山のアクティビティを求 めて訪れる人々を乗せて走った鋼索鉄道(ケーブルカー)は、自家用車の普及と共に利用が減少 しその使命を終えます。現在レストラン兼資料館として活用される山頂駅から、キャンプ場を併設 した山麓駅までの遊歩道を辿りながら、当時の面影を紹介します。

四季を通じて多くの人が訪れた赤城山

日本の高度経済成長期。東京都の浅草駅から群馬県の新大間々駅(後に赤城駅に改称)の路線 を保有する東武鉄道株式会社は、赤城山観光事業として首都圏と群馬県の赤城山を結ぶ回遊 ルートを計画。その一環として黒保根村(当時)の利平茶屋から鳥居峠間の急峻な斜面を登る赤 城山鋼索鉄道を昭和32年(1957年)に開業させ、赤城大沼を中心とした一帯は四季を通じて盛況 を極めました。 

しかし、自家用車の普及などを理由に利用者は激減。開業からわずか10年余りの昭和43年( 1968)に廃止となり、現在は一部の路盤や橋脚などが残るだけとなりました。

開業間もない頃の山頂駅
(写真提供:桐生市 教育委員会教育部 文化財保護課) 

 

森林公園、キャンプ場として生まれ変わった利平茶屋

当時、赤城山山域の玄関口として最初に訪れる利平茶屋駅。鋼索鉄道廃止後は、桐生市が森林 公園として整備・活用されています。現在、併設されたキャンプ場は指定管理者である桐生市内 のコンセプト ショップ「Purveyors(パーヴェイヤーズ)」によって管理・運営されていて、センス溢れ る施設でアウトドアライフを楽しめます。 

標高1,000m付近に位置するため避暑に訪れる人も多く、夜には満天の星空が望めます。付近に はコンビニエンスストアなどの食料品店が無いので、事前に準備しておくと良いでしょう。

利平茶屋キャンプ場管理棟(利平茶屋森林公園キャンプ場様ホームページより転用) 

利平茶屋駅跡に設置されたあずまや

あずまや裏に現存するプラットホーム跡

鋼索鉄道と並走するように延びる登山道の歩き方

利平茶屋キャンプ場内を奥に進むと、赤城山への登山道入口があります。距離は片道約2.7km、 標高差約350m、約1時間30分ほどの道のりです。登山道の踏み跡は明瞭で歩きやすいですが、 できれば軽登山以上の靴が望ましいです。万が一道がわからなくなっても、落ち着いて観察すれ ば迷うことはありません。また害獣対策として熊よけ鈴や携帯ラジオなどで音を鳴らし、存在を知 らせながら行動しましょう。 

登山道を半ばまで進むと、鋼索鉄道の路線跡と交差します。路線跡を登れば鳥居峠に行けます が、勾配がきつく転倒すると大変危険なので登山道を進みましょう。 

利平茶屋側の登山道入口

登山道は整備されているが油断は禁物

鳥居峠へ続く路線跡

見どころいっぱい!? 四季折々の景色を楽しみながら山頂駅跡へ

片道約2.7kmの登山道、その道中には見どころもあります。 
春にはシャクナゲやアカヤシオ、秋には赤やオレンジに色づいた紅葉を見ることができます。路線 跡との分岐から少し外れると、赤城の山から湧き出た水「御神水」を頂けます。数年前までは立派 な小屋で守られていましたが、恐らく災害か何かで倒壊してしまったようです。山頂駅レストランで は御神水を使ったメニューもあり、山の恵みを味わうのも良いでしょう。 
タイミングが合えば野生動物と出会えるかも知れません。中には危険な動物もいるので、くれぐれも注意しましょう。 

様々な動植物と出会うことも

四季折々の景色を楽しめる

分岐から少し降った場所にある御神水

赤城山観光の光と陰、山頂駅保存に奮闘した塩原さん

登山道を登り切れば、いよいよゴールの鳥居峠に到着です。 
ここには赤城山鋼索鉄道の山頂駅があり、駅舎は現在「サントリービア・ハイランドホール」として 活用されています。この駅舎を管理されている塩原さんは「東武鉄道の赤城山観光の開発と撤 退」の歴史を後世に残すべく、国登録有形文化財(建造物)に向けて尽力されたそうです。駅舎は レストランとして鳥居峠を訪れる人達の憩いの場だけでなく、鋼索鉄道が走っていた頃の貴重な 資料も展示しています。 
駅舎周辺には、壮大な雲海が望める展望台。希少な高山植物が自生する覚満淵。赤城山麓への 登山口などがあります。

 レストラン兼資料館として活用されている駅舎

駅舎内には当時を伝える貴重な資料が展示されている

2階はゆったりくつろげる展望室

平成30年、国民的財産として登録

当時、沢山の観光客が見たであろう山頂駅プラットホームからの景色

鳥居峠から見る雲海を求めて、多くのカメラマンが訪れる(写真提供:塩原 勲さん)

まとめ

当時赤城山を訪れた人達は、山頂に広がる一大観光地にワクワクドキドキしながら、この鋼索鉄 道に乗っていたことでしょう。そんな楽しい思い出が現在も残る遺構を、様々な視点から観察し当 時に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 

インフォーメーション

サントリービア・ハイランドホール(旧赤城山鋼索鉄道赤城山頂駅駅舎) 

住所:群馬県桐生市黒保根町下田沢字赤面国有林413ほか 

電話:027-287‐8444 

営業時間:平日10:00 ~ 16:30、土日祝9:00 ~17:00 

定休日:4月~11月初旬頃、不定休 

URL:https://www.oonumasansougroup.com/ 

 

利平茶屋森林公園キャンプ場 

住所:群馬県桐生市黒保根町下田沢1900-1 

電話:0277-96-2588 

定休日:火・水曜日(冬季閉鎖期間あり) 

URL:https://www.rihei-jaya.com/ 

 

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ちぃ

産まれてずっと群馬県内在住の映像クリエイター。趣味は登山、キャンプ、遺構巡りなど。自然と 戯れたり美しいモノを見たり感動する事が好き。アルプス登山や縦走、テント泊にもチャレンジしたい。