「南郷の曲屋」で味わう、郷土の味とおもてなしの心【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
南郷の曲屋とはこんなところ
<日本最南端の曲屋とされる古民家>
「南郷の曲屋」は群馬県沼田市にある、1785年に建築されたとされる曲屋形式の古民家です。曲屋は東北地方などではよく見られる住居形式ですが、「南郷の曲屋」は日本最南端の曲屋とされ、2004年に沼田市の重要文化財に指定されています。主屋の上段の間には書院造りが施され、役人などの滞在に利用されていました。また、主屋に対してL形に曲がっている部分には、土間に隣接し、馬屋があり、馬の健康状態が容易に把握できるようになっています。
この曲屋は、この地域の名主であった鈴木家が2000年頃まで実際に居住に使っていたそうです。

<奥の上段の間は付け書院、床間、違棚などがある書院造り>
地元の方々のサポートによる調理体験
<もてなすのは地元の方々>
「南郷の曲屋」がある旧日影南郷村は、赤城山北面の山間地のために稲作には適していませんでした。そこで、米の代替品としてこの地域の方々が利用していたのが小麦やそばであり、これらを利用した郷土料理が発展してきました。「南郷の曲屋」での調理体験では、南郷の曲屋管理組合に所属する地元の方々がサポートしてくれます。
スタッフは体験が始まる2時間以上前に集合し、囲炉裏やカマドの火おこし、さらには、製麺機などを準備します。参加者の人数や動線を考慮し、スムーズに体験できるようにその準備には細心の注意を払います。また、体験中にはスタッフから「南郷の曲屋」やこれから体験する料理のことなどの話を聞くことができます。単なる体験にとどまらず、この南郷地区のような山間部での生活を理解するきっかけを作ってくれます。

<参加者の受入準備にも余念がありません>
古民家の日常は都会の非日常
「南郷の曲屋」では、米の代替食として山間部で利用されてきた小麦やそばを使った郷土料理の調理体験を楽しむことができます。年間の体験利用者は150組にのぼり、多くがリピーターになるそうです。今回は、大学生グループによる、うどんやすいとん、おやきの調理体験を取材しました。
うどん作りでは、手で小麦をこねた生地から手動の製麺機を用いて麺を作ります。そこに地元産の食材を多く使った天ぷらなどを添えて、つけ汁で食べます。一方、すいとん作りは、小麦粉の他に片栗粉を入れた生地を手でちぎり、これらを具沢山の汁に入れて出来上がりです。また、長野県のイメージが強いおやきですが、この南郷地区でも広く作られてきました。今回は、小麦粉を練った生地で自家栽培の野沢菜の漬物やあんこなどの餡を包み、囲炉裏で焼きます。

<うどんのコシを出すために生地を踏みます>

<製麺機を回して生地をうどんにしていきます>

<うどんに彩りを添えるために具材を準備します>

<餡を包んだおやきを囲炉裏で焼きます>

<すいとんの生地をダマにならないようにこねます>
体験者が口を揃える「楽しかった」の言葉
<友と作り、共に食す>
古民家での郷土料理の体験は、都会の大学生にとっては新鮮で貴重な楽しい体験だったようです。体験を終えた参加者が口を揃えて話すのは、「貴重な体験であり、仲間と一つの料理を作るという共同作業が楽しかった」という言葉でした。その背景には、地元スタッフの丁寧で温かいサポートがあります。しかし、その指導の根底には、「参加者に思う存分に体験を楽しんでもらいたい」という、スタッフのおもてなしの心があります。
取材に協力いただいたい大学生グループにとって「南郷の曲屋」での調理体験は初めだったそうですが、満足度が高いことから、来年の再訪を考えているそうです。次回はピザ窯でのピザ作りを希望する声も聞こえました。

<体験後の足湯を楽しむ, photo by H.N.>
「南郷の曲屋」では、曲屋形式の古民家で地元の方々のおもてなしの心に触れながら、すいとんやおやきなどの郷土料理の調理体験を楽しむことができます。さらに、群馬県の名産であるこんにゃくやピザ窯を用いたピザの体験も可能です。ぜひ、調理体験を通して、南郷のおもてなしの心を感じてみてください。
インフォメーション
福田 靖