名勝と名匠を訪ねる南牧村(なんもくむら)の旅【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

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更新日: 2024年04月11日

群馬県の魅力をぐんま観光県民ライター(ぐん記者)がお伝えします!

群馬県の南西部に位置し、長野県とも接している南牧村。土地の大部分を山林が占めるこの村は、四季折々の豊かな自然を楽しむことができる。特産品としては村の間伐材を利用した炭が有名で、その炭を使った様々な商品がこれまで生み出されてきた。今回はそんな南牧村の、繊細で美しい名勝と、地元の人々に愛される絶品炭グルメを作る名匠を訪ねる。

 

落差35m。岩壁をまっすぐに流れ落ちる一条の白い線

南牧村を奥に進んでいったところにある立岩登山口駐車場から少し歩くと、やがて滝の音が聞こえてくる。そして杉林に覆われた山を下っていくと、すぐに透明度が高い星尾川(ほしおがわ)がほぼ垂直の断崖絶壁から滑らかに滑り落ちていく線ヶ滝(せんがたき)が現れる。線ヶ滝は、県の天然記念物及び名勝に指定されており、三段の滝(さんだんのたき)と象ヶ滝(ぞうがたき)と並び、南牧村三名瀑に数えられている。

険しく切り立った岸壁と、35mの高低差をまっすぐに流れ落ちていく直瀑は、ダイナミックであると同時に、どこか日本的な繊細さも感じさせてくれる奥ゆかしさを持っている。観瀑台の近くに螺旋階段があり、そこから滝壺に降りることができる。少しスリルがあるが、下から見上げる線ヶ滝もまた絶景なので、ぜひトライしてほしい。

滝壺に続く螺旋階段はかなりの高さがある。足元には十分気をつけよう

自然の造形美を楽しみながら蝉の渓谷

南牧村にはもう一つ、県の天然記念物及び名勝に指定されている場所がある。蝉の渓谷といって、南牧川によって細く深く侵食された渓谷である。チャートと呼ばれる硬い堆積岩の岩盤が、川底を転がる石によって砕かれて、長い時間をかけて河床面が掘り下げられていったと考えられている。荒々しく削られた岩肌は、確かに時間の経過と自然の力強さを感じさせる。蝉の渓谷は吊橋や遊歩道なども整備されており、周辺を10分ほどでぐるっと散策することができる。南牧川は透明度が高く、深さはあるが川底もうっすらと見える。3月上旬だとまだ緑も少ないが、初夏の新緑や秋の紅葉など季節ごとの色合いの変化と、変わらぬ川の青さを一年を通じて楽しむことができる。

蝉とは狭水が語源と言われているらしく、確かに川幅が非常に狭い

秋には紅葉も楽しめる

白いスープと黒い麺のコントラスト。炭ラーメン!

南牧村の特産品である炭を麺に練りこんだ「炭ラーメン」を食べられるお店がある。明治33年創業の千歳屋である。豚骨と鶏ガラと野菜を丁寧に煮込んだスープは、優しいコクがありながらも、あっさりとしていて飽きがこない。また具材も、旬に応じて地場産のタケノコや下仁田ネギが使われたりするらしく、この土地ならではの味わいが楽しめる。炭入りの黒い麺は、見た目のインパクトは強いが変わった味がするわけではなく、細い縮れ麺とスープの相性が良く、シンプルながらも完成度はとても高い。土日に訪れると地元の人々と観光客で非常に賑わっており、人気なのもうなずける。

驚きの黒さ

しっかり味付けがされているタケノコは、よくあるメンマとは違った食感が楽しめる

菓子づくりの名匠によるお墨つきまんじゅう

ラーメンの千歳屋と同じように、南牧村の杉から作った炭の粉を使ったお菓子を作っている、信濃屋嘉助という菓匠がある。明治10年から150年近く、この南牧の地においてお菓子作りに代々打ち込んできたという。地域活性化のため、南牧村の特産品である炭を何かに活かせないかと、炭入りのリーフパイやハッカ飴など、これまで数多くの炭入り菓子を生み出してきた。実は先ほどの千歳屋で使われている炭入り麺もここで作られており、お土産用に買って帰ることもできる。和菓子以外にもフルーツケーキや焼き菓子など、目移りするぐらい様々な商品がショーケースに並んでいるが、一際目を引くのが「森林のお墨つきまんじゅう」という真っ黒な饅頭である。「炭」と押された焼き印が可愛いらしい小ぶりな饅頭で、中には甘さ控えめのこし餡とダイスカットされたチーズが入っている。この餡とチーズの組み合わせが天才的で、甘さとコクの絶妙なバランスが保たれている。

バラ売りの他に箱入りも用意されているので、お土産にうってつけである

ロールケーキや蒸し菓子など、和洋問わず豊富な品揃え

 

まとめ

南牧村は低山に囲まれており、草花を眺めながら気軽にトレッキングができるコースが数多くある。また、今回紹介した線ヶ滝以外にも数多くの滝があり、冬になると滝の水が凍った氷瀑が見られるようになるため、一年を通して豊かな自然を楽しむことができる。そして、その美しい自然の中で育てられた食材とキレイな水を使って作られた食事とお菓子を堪能することができる。山紫水明の名勝を見たあとは、美味しい炭グルメを作る名匠を訪ね、南牧村を隅々まで満喫しよう。

インフォメーション

線ヶ滝

場所:群馬県甘楽郡南牧村大字星尾 

駐車場:近くの立岩登山口駐車場を利用

トイレ:なし

 

蝉の渓谷

場所:群馬県甘楽郡南牧村六車

駐車場:あり

トイレ:あり

 

お食事処 千歳屋

住所:群馬県甘楽郡南牧村磐戸141

電話:0274-87-2027

営業時間:11:30〜14:30 17:00~21:00(夜は宴会のみ)※要予約

定休日:水曜日、木曜日

料金:炭ラーメン(塩・醤油) 815円

   炭ギョウザ 450円

 

菓心処 信濃屋嘉助

住所:群馬県甘楽郡南牧村磐戸160

電話:0274-87-2322

営業時間:7:00〜18:00

定休日:火曜日

料金:森林のお炭つきまんじゅう 100円

   嘉助ロール 150円

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秋山紫苑

普段は教師として専門学校で地理や生物を教えているが、休日はカメラを片手に群馬県内のあちこちに現れる。群馬の観光資源をこよなく愛しており、群馬の若者たちに地元のことをもっと好きになってほしいと心から願っている。好きなものは温泉と滝とB級スポット。