前橋刑務所の「市民向け見学会」に参加して|塀の中で知った、社会復帰への取り組み【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

前橋刑務所「市民向け見学会」

更新日: 2026年10月28日

前橋市の市街地に突如現れる、どこまでも続くような赤レンガの塀——それが前橋刑務所です。近年、受刑者が制作した木製のゴミ箱や革製品が前橋市のふるさと納税の返礼品として人気を集め、2025年12月には寄付者を対象にした所内スタディツアーも実施されました。今回、近隣住民を対象にした「市民向け見学会」が初めて開かれることに。

 

その背景には、2025年に施行された118年ぶりの法改正があります。受刑者への向き合い方が変わりつつある今、地域とともに歩む「開かれた刑務所」への一歩を踏み出した前橋刑務所を取材しました。

赤レンガの塀に囲まれた、前橋の“現役”刑務所

赤レンガの塀に囲まれた、前橋の“現役”刑務所

前橋刑務所は、前橋市南町に位置する法務省矯正局の刑務所です。前橋駅から15分程度歩いた、利根川のほど近くにあります。赤レンガの塀と表門は1888年の前橋監獄開設時からのもので、ドラマのロケ地としても注目を集めています。

 

現在の収容者は500名前後で、主に窃盗や薬物違反などを犯した受刑者を収容しています。再犯・累犯者も多く、社会復帰に向けた支援が特に重要な施設です。日本語でコミュニケーションが取れることを条件に、外国人受刑者も受け入れています。

「開かれた刑務所」への第一歩となる市民向け見学会

市民向け見学会

今回の「市民向け見学会」は、刑務所の中を地域の方々に知ってもらいたいという思いから、前橋刑務所と前橋市役所が連携して企画しました。定員20名に対して38名の申込があったことに※、「それだけ地域の関心が高いのだと、驚きと同時に手応えを感じました」と内藤睦所長は話します。

 

※当日の参加者は32名

 

前橋刑務所では受刑者が制作したゴミ箱や革製品などを前橋市のふるさと納税の返礼品として提供しており、2025年11月には「スタディツアー付き返礼品」もスタート。見学会はその流れを汲む取り組みです。会場には小学生の親子から高齢のご夫婦まで幅広い年齢層が集まり、体育館での概要説明から始まりました。

 

<ふるさと納税の返礼品になっているゴミ箱は軽くて扱いやすい>

「懲らしめ」ではなく「社会復帰・再犯防止」へ。118年ぶりの法改正が変えた刑務所のあり方

118年ぶりの法改正が変えた刑務所のあり方

<見学会の冒頭、体育館で概要説明が行われた>

 

概要説明では前橋刑務所の特徴や役割に加え、2025年6月1日の法改正についても説明がありました。従来の懲役刑と禁錮刑が「拘禁刑」に一本化された、1907年以来118年ぶりとなる刑事法の大改正です。「高齢者には認知機能向上を」「学習が必要な方には教育を」など、受刑者一人ひとりの特性に合わせた処遇が義務づけられ、刑務所は「懲らしめ」の場から、社会に戻るための準備の場へと軸足を移すことになりました。

 

ただし、内藤所長はこう強調します。

 

「被害者の方の感情を、決して忘れてはいけません。そのような意味でも、刑務所の変化に関して、我々には説明責任があると考えています」

 

再犯防止への取り組みは前向きな変化です。ただ、その根底には常に被害者への誠実な向き合いがある——そのことを忘れずにいたいと感じました。

初めて歩く「塀の中」。受刑者の会釈にほっとした

製品の売上の一部は犯罪被害者支援団体に寄付されている

<製品の売上の一部は犯罪被害者支援団体に寄付されている>

 

概要説明終了後は、所内の工場を見学しました。第1工場では財布などの革製品や印刷物を、第5工場では積み木やゴミ箱などの木工品を制作しています。

 

<受刑者が作業する場所に市民が入るのは前橋刑務所として初の試み>

 

受刑者の方がすぐ近くで作業をしている。その事実に、最初はとても緊張してしまいました。ところが、鍵をかたどったチャームを撮影しようとしたとき、近くにいた受刑者の方が目を合わせて会釈を返してくれました。なんでもない、ごく自然な仕草に、ほっとした気持ちになりました。

 

<そのとき撮影した木製のチャーム。スマホスタンドにもなるそう>

 

法改正後、受刑者は担当官と面接を重ねながら、自ら目標を立てて作業に取り組むようになったそうです。与えられた作業をこなすのではなく、自分で決めた目標に向かって手を動かす——その変化が、社会復帰への意欲につながっているのかもしれません。

「ずっと気になっていた」との参加者の声に、刑務所への関心の深さを感じた

参加者には「御来監状(通常は300円で販売)」が配布された

<参加者には「御来監状(通常は300円で販売)」が配布された>

 

見学後の質疑応答では、所内の医療体制や作業賃金などについて、参加者から活発な声が上がっていました。

 

<このような革製品は受刑者自らがデザインしている>

 

親子で参加していた小学生の女の子は「お母さんが絶対に行きたいというので一緒に来た。革製品の柄が細かくてすごい。作るのが大変そうだと思った」と話してくれました。

 

また、近くの中学校に通っていたという女性は「刑務所の中が見えるからと屋上への立ち入りが禁止されていた。すぐ近くにあるのに中のことを知らず、ずっと気になっていたので、見学できてとても良かった」と話してくれました。

 

これまでの経験や今の立場によって感じることはさまざまですが、前橋刑務所が地域の多くの人にとって、近くて遠い、隔てられた場所に感じられていたことに気づかされました。今回見学会に集まった人たちにとって、その距離が少し縮まった一日だったと思います。

 

被害者の方の感情に寄り添いながらも、受刑者が社会に戻るための準備を整えること。それがわたしたちの社会をより安全に、豊かにする道だと知りました。

 

前橋市のふるさと納税返礼品は、そんな取り組みの中で生まれた品々です。興味のある方は、ぜひ前橋市のふるさと納税ポータルサイトを覗いてみてください。

 

※この取材は2026年3月に行いました。

 

インフォメーション

前橋刑務所

 

住所:群馬県前橋市南町1-23-7

電話:027-221-4247

望月優衣

望月 優衣

渋川市出身・高崎市在住のフリーライター。群馬県内の取材・インタビューを中心に、文章を仕事に楽しく生活しています。趣味は街歩きや美術館めぐり、ノープランの旅行です。