【群馬・秋の風物詩】渡り蝶アサギマダラが舞う赤城自然園【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
赤城自然園とは?
赤城自然園は、渋川市・赤城山西麓の標高600~700mにある緑豊かな自然園です。約120ヘクタール(一般公開エリアは約60ヘクタール)の広い敷地が「セゾンガーデン」「四季の森」「自然生態園」の3つのエリアに分かれていて、四季折々の花や昆虫、野鳥が見られます。

<歩くだけで心が癒やされる森林セラピーの森>
30年以上かけて雑木林を再生し、植物や生き物が住みやすい環境を少しずつ整えてきた場所です。園内では昆虫類が約1,810種、鳥類が約80種以上確認されていて、とても豊かな生態系を持っています。森林セラピー基地にもなっていて、足に優しい樹皮を敷いた散策路を歩きながら、ゆっくりと森の空気を味わえるのも魅力です。
季節ごとにさまざまな魅力を見せる園ですが、筆者の今回の目的は秋の訪れを告げるアサギマダラです。9月下旬の澄んだ秋空の下、優雅に舞う「旅する蝶」に会いたくて、静かな森の中へ踏み入れました。
赤城自然園で見られるアサギマダラ
アサギマダラは、浅葱色の透き通るような羽を持つ「旅する蝶」です。赤城自然園では例年9月下旬から10月中旬頃、南下の途中に立ち寄った多くの姿が見られ、羽を休める優雅な光景が広がります。
日本に分布するアサギマダラは、主な越冬地である九州から2世代をかけて遠く北海道まで移動することが調査でわかってきました。赤城自然園では、季節と気温に応じて次のような姿が見られます。
■ 6月(誕生と北上)
クサタチバナなどに産卵が行われ、その葉を食べて育った幼虫はサナギを経て羽化します。気温が25℃以上になると、日光・福島・山形、近年では北海道など、より涼しい北や標高1,000m以上の場所へ移動していきます。

<初夏に咲き、アサギマダラが産卵し幼虫が葉を食べて育つクサタチバナ 写真提供:赤城自然園>
■ 9月(飛来と南下)
そして、気温が16℃以下に低下すると南下が始まります。成虫になるとフジバカマを中心にアザミなどの花の蜜を吸うようになり、ほとんど羽ばたかず風に身を任せるようにふわふわと滑空して渡っていきます。

<秋の渡りの時期に咲き、天敵から身を守る成分の補給源となるフジバカマ>
秋に飛来する多くは福島県や山形県でマーキングされた個体で、数か月をかけて成虫が九州方面(長野・高知・京都・山口・大分などでマーキング調査)へと向かいます。越冬地では、卵からかえった幼虫が寒さに耐えて、4月には成虫となって再び北を目指します。

<長距離を旅してきた証が刻まれた、マーキング入りの標本>
アサギマダラの羽は光の当たり方で浅葱色に見えたり、模様がくっきり浮かび上がったりと、見る角度によって雰囲気が変わるのが大きな魅力です。1,000km以上移動する過酷な旅の途中で羽が傷むこともありますが、それもまたたくましいところ。警戒心が比較的薄いので、じっくり観察しやすい点も多くの人に親しまれている理由のひとつです。
アサギマダラが見られる園内スポット
赤城自然園では、アサギマダラが好むフジバカマの群落を増やすなど、多くの蝶が集まりやすい環境整備が行われています。園内で特におすすめの観察・撮影スポットは次の3つです。
①自然生態園「カエデの丘」

<広々として約40頭が集まり、じっくり撮影しやすいエリア>
園内でも一番のおすすめスポットです。比較的新しく整備された場所で、アサギマダラとの距離が非常に近く観察しやすいのが魅力。飛来数も多く、敷地が広いため人が分散してゆったりと撮影に集中できます。
②自然生態園「チョウのはらっぱ」

<順路の前半に位置し、人混みを避けて撮影するのに最適なポイント>
散策順路の比較的前半に通るエリアです。その名の通り、シーズンの早い時期からアサギマダラの飛来が見られ、散策の期待が高まる定番スポットとなっています。
③四季の森「お花畑」

<距離があるため、ズームレンズを使うと綺麗に狙えるスポット>
エリアの奥側にフジバカマの群落が咲いています。蝶までの距離が少し離れているため、姿を鮮明に捉えたい場合は望遠レンズを用意していくと重宝します。
なお、すべてのエリアで柵(ロープ)内への立ち入りや、蝶の捕獲・直接触れる行為は禁止されています。三脚や一脚は使用可能ですが、脚が柵内に入らないよう注意して撮影を楽しみましょう。
フジバカマに集うアサギマダラ
筆者は実際に園内を巡り、アサギマダラの撮影に挑戦してみました。おすすめスポットをひと通り歩いた中で、特に「カエデの丘」には驚くほどたくさんのアサギマダラが集まっていたため、ここを中心に撮影を行うことにしました。
カエデの丘では、親切なガイドさんが「そちらにいますよ」と撮影しやすい場所を気さくに教えてくれました。案内された先を見ると、フジバカマの花に止まり、夢中で蜜を吸っているアサギマダラの姿を発見。初めて見る浅葱色の羽は光を受けて鮮やかに輝き、その美しさに思わず見惚れてしまいました。

<広大な園内でも、ガイドさんの案内でスムーズに出会えました>
非常に警戒心が薄く、近く寄っても逃げないため、花に止まって吸蜜する様子をじっくりカメラに収めることができます。当日は園内全体で60~70頭ほどを観察できましたが、やはりカエデの丘の飛来数は圧巻でした。ガイドさんのおかげで、フジバカマに佇む美しい写真を数多く撮影でき、満足の取材となりました。

<フジバカマの蜜を夢中で吸うアサギマダラ>

<フジバカマの花にとまり、ゆっくりと蜜を味わう姿>

<浅葱色の模様が美しく映える、羽のきれいなアサギマダラ>
ガイドさんインタビュー
<注目の観察ポイントを指さし、見どころを教えてくれるガイドさん>
取材の際、園のガイドさんにアサギマダラの魅力や観察のコツ、生態の不思議についてお話を伺いました。
筆者:当日の天候や時間帯によって、飛び方に違いは?
ガイド:日中の10時〜15時頃が一番活発に飛んでいます。風の強い日はあまり姿を見かけませんが、雨の日でも少し止んだ「雨の切れ間」などのタイミングで一斉にフジバカマへ飛び出してくることがあります。飛んでいないときも木の下などで休んでいますよ。
筆者:園内で撮影できるおすすめスポットは?
ガイド:一番のおすすめは「カエデの丘」です。新しくできたエリアで、フジバカマとの距離が近く、蝶がすぐ近くに止まってくれます。敷地が広いので来園者の方も一箇所に固まらず、ばらけてゆったり撮影できるのも良いところですね。

<「カエデの丘」はじっくり撮影するのに最適でした>
筆者:なぜ秋の時期に赤城自然園へ姿を現すのですか?
ガイド:暑さが苦手な蝶なので、夏の間は標高の高い涼しい山地などで過ごしています。秋になり気温が下がってくると、九州などの越冬地へ向けて南下(渡り)を始めるんです。その移動ルート上にある当園は、旅の途中で水分やエネルギーを補給するための大切な立ち寄り場所になっています。
筆者:フジバカマとアサギマダラにはどのような関係が?
ガイド:アサギマダラはフジバカマの花蜜が大好物なんです。フジバカマに含まれる毒素を体内に取り込むことで、鳥などの天敵から身を守っていると言われています。当園でもたくさんのアサギマダラに集まってもらえるよう、フジバカマの群生地を増やす取り組みを行っています。
筆者:お客さまとのやり取りで印象に残っているエピソードは?
ガイド:春の話なのですが、卵から孵化した幼虫をサナギまで追いかけて観察したことがあるんです。サナギが本当に綺麗な真緑色(メタモルフォーゼ)をしていて、まだ羽を乾かしている出たての状態も含めてお客さまにご紹介したら、すごく喜んでいただけたのが印象に残っています。

<園内には天敵にやられて黒くなったサナギもありました>
筆者:最後に、来園者の方々へメッセージをお願いします。
ガイド:風に乗ってスーッと滑空するように飛ぶ、優雅な姿をぜひ見ていただきたいですね。綺麗な個体ばかりでなく、長旅を経て羽がボロボロになりながらも頑張って飛んでいる子もいます。下の羽(後翅)に黒い斑点(性標)があるのがオスですので、オスメスの違いも含めて、ぜひ観察してみてください。

<羽の模様でひと目でわかるオスメスの標本>
秋の森全体を満喫しよう
<リアルな標本が並び、昆虫の魅力が詰まった昆虫館>
アサギマダラの観察に加えて、秋の赤城自然園内にはあわせて巡りたい魅力的なスポットや秋ならではの見どころが盛りだくさんです。
園内の自然生態園にある「昆虫館」もおすすめの立ち寄りスポット。アサギマダラの長距離移動ルートや詳しい生態について深く学ぶことができ、散策の途中で知識を深めるのにぴったりです。館内には、スタッフが心を込めて作ったアサギマダラの特製パネルも設置されていますので、ぜひパネルの前に立って記念撮影をしてみてください。

<館内にあるスタッフ手作りのアサギマダラ記念撮影スポット>
園内を飾る秋の植物も見逃せません。ガイドさんも見どころとして挙げられていた「四季の森」周辺では、舟を吊り下げたような愛らしい姿の「ツリフネソウ」が楽しめます。さらに散策路沿いには深紅の「彼岸花(ヒガンバナ)」も咲き誇り、緑豊かな森の中で鮮やかなコントラストを描いています。

<舟を吊り下げたような姿が愛らしいツリフネソウ>

<緑の森に美しく映える深紅のヒガンバナ>
さらに、例年8月中旬頃から園内で姿を見せ始める「オオセイボウ(大青蜂)」探しも楽しみのひとつ。「幸せを呼ぶ青い蜂」とも呼ばれる希少な昆虫で、金属的な質感を持つ鮮やかな青い体が美しく輝きます。

<小さくて撮影には苦戦したものの、希少なオオセイボウとの出会いに感動>

<「幸せを呼ぶ青い蜂」とも呼ばれ、金属光沢のある美しい青緑色が特徴 写真提供:赤城自然園>
カエデの丘でフジバカマに集まるアサギマダラと出会った瞬間は、時間を忘れて夢中でシャッターを切っていました。ガイドさんの解説や昆虫館の展示のおかげで知識も深まり、アサギマダラの生態の奥深さに触れられる充実した取材となりました。心地よい秋風が吹き抜ける赤城自然園へ、ぜひカメラを手に「旅する蝶」を探しに出かけてみてください。
※この取材は2026年9月に行いました。本文中の料金・営業時間などの情報は取材時点のものです。最新の情報は公式サイト等をご確認ください。
インフォメーション
赤城自然園
住所:群馬県渋川市赤城町南赤城山892
電話:0279-56-5211
営業時間:9:00~16:30(最終入園 15:30)
定休日:
【4月~11月】火曜日(4月・5月は無休/火曜日が祝日の場合は開園)
【12月~3月】火~金曜日(土・日・月曜日のみ開園、年末年始除く)
・駐車場:あり(400台/無料)
料金:
大人(高校生以上):1,000円
こども(中学生以下):無料
年間パスポート:3,000円(購入日より1年間有効)
※セゾン・UCカードのご提示で、大人入園料500円(会員ご本人様のみ)
※障害者手帳、療育手帳をお持ちのご本人様と介添えの方(1名)は無料
※大人(高校生以上)20名様以上の団体入園料は500円/人
※天候・整備などの理由により、開園日・開園時間・開園エリアが変更となる場合があります。
※施設内に飲食可能エリアはありますが、レストランなどの飲食施設はありません。
アクセス:
【車】関越自動車道「赤城I.C.」から約10分(東京から約90分)
【電車・タクシー】JR上越線「渋川駅」からタクシーで約20分
【路線バス】渋川駅から路線バス運行(2026年4月~11月の開園日運行/有料)
※土・日・祝日は伊香保温泉発着便もあり
タマル