最も美しい村のワイナリーでテロワールを知る【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

最も美しい村のワイナリー

更新日: 2026年09月11日

奥利根ワイナリーは「日本で最も美しい村」の一つである昭和村の赤城西麓の冷涼な地でワインを作る小規模ワイナリーです。ここでは、この地域の特性であるテロワールを理解し、ブドウの栽培から熟成までこだわりをもって、ワインを造っています。今回は、このブティックワイナリーでワインへの思いを伺ってきました。

小規模だからこそできること

小規模だからこそできること

奥利根ワイナリーは、ブドウの栽培からワインの醸造までを手がけるブティックワイナリーです。1991年に群馬県沼田市でアップルワイン(シードル)を作り始め、2004年に隣の昭和村へ移転し、標高700mにある3haの農地でブドウを栽培しています。ブドウ畑がある赤城高原は、赤城山西麓に広がり、日当たりが良く、レタスやほうれん草などの栽培が盛んな高原野菜の一大産地であり、冷涼な気候が良質なブドウを育てています。ブドウは、生食用のブドウの栽培でよくみられる棚栽培とは異なり、垣根仕立てで栽培されています。

 

<垣根のように仕立てられたブドウの樹>

 

赤城高原のテロワール(気候、地域、地質、土壌などの複合的な地域性)に注目し、ブドウの樹を管理している2代目の代表である金井 圭太さんは、赤城高原のブドウの特徴は“酸”だと言います。冷涼な気候ではブドウの実から酸が抜けにくいことから、その酸を活かし、ワインを作っているそうです。そんな彼は、ブドウの木の成長を人の人生の豊さに例えます。若い時には血気盛んで、実をつけるよりも旺盛に枝を伸ばします。少し落ち着いてくると、実をつけるようになりますが、まだ、その実の味は単純です。さらに年月を重ねるにつれ、味が複雑になり、深みが増してくるのだそうです。こう話す代表の顔には、ブドウの成長を見守る親の表情を感じました。

 

海外のワイナリーでは、自らブドウを栽培するのが一般的ですが、日本国内では、契約農場からのブドウを使用することが多いでそうです。高原に広がるブドウ畑を歩くだけで気分が高揚してきます。

 

<広大な農地に何重にも並ぶブドウの垣根>

 

栽培されるブドウの品種は、白ワイン向けのシャルドネ、赤ワイン向けのメルローやピノ・ノアールなどです。カベルネ・ソーヴィニオンにも挑戦しましたが、残念ながら満足できる結果とならず、栽培を断念したそうです。

 

<満開となったブドウの花>

(画像提供:奥利根ワイン)

 

<間も無く収穫を迎えるピノ・ノワー>

(画像提供:奥利根ワイン)

ブティックワイナリーだからできるワイン造り

ブティックワイナリーだからできるワイン造り

手積みされたブドウの房は軸を取り除き、破砕され、果汁を取り、タンク内で発酵させます。果汁に含まれる皮や種子は、白ワインでは発酵の前に、赤ワインでは発酵後に果汁から取り除かれます。発酵後のワインは、フレンチオークの樽で、その後ビンに詰め、それぞれ1年間熟成されます。使用しているフレンチオークの樽は、数社から吟味し、ニーズに適している樽を選び、シャルドネ、メルロー、ピノ・ロワールの順に使うそうです。樽は、熟成に使用される度に樽特有の香りや酸などが少なくり、ワインへの影響も小さくなっていくので、ブドウの品種とワインの出来上がりを考慮して、使用しているとのこと。

 

奥利根ワイナリーのワイン造りの特徴は、冷涼な高原の気候で育つブドウ酸を重視した醸造・熟成です。この酸を活かすことにより、味わいにキレや爽やかさが与えられ、バランスの取れたワインとなるのだそうです。そして、小規模ワイナリーだからこそ、そのようなワイン造りができると話す代表の顔には、ワインの成長を見守る親の表情を感じました。

 

<奥利根ワイナリーならではのワインがここから造り出されます>

 

ワインには造り手の個性も強く影響します。昨年までは醸造工程を取りまとめていたスタッフがいましたが、今年からはその工程も代表が担うことになったそうです。代表の作業量が大幅に増えるにもかかわらず、彼の目はやる気に満ち、全工程を自分で担当できることが楽しみなようです。代表は言います。今後も、その年ごとのブドウの出来とテロワールの個性を引き出した、このワイナリーでしか作れない最高のワインのために、更なる品質向上を目指してブドウの樹と一緒に成長していきたい。そして、この地でのワイン造りが継承できるように次の世代を育てていきたいとのことです。

 

<奥利根ワイナリーのワイン造りは次の世代へ>

 

奥利根ワイナリーでは、代表と1時間かけてワイナリーを巡る見学ツアーをおこっています(要予約、有料)。代表と共に施設を巡りながら、赤城高原のテロワール、さらにワイン造りの説明を受け、樽などからのテイスティングを体験することができます。きっとワインへの興味がさらに深まることでしょう。ぜひご参加ください。

ショップで購入できるワイン達

ショップで購入できるワイン達

選りすぐったブドウから生まれた奥利根ワイナリーのワインたちには大きく2シリーズあり、昭和村産のブドウを使った「I’m(アイム)」とオーストラリアからの原料を使った「OK’sTra(オーケストラ)」です。

「I’m」ラベルは、自社の畑で収穫されたブドウ、それも品種の特徴を最大限に引き出すために単一品種を100%使用した、こだわりの赤城高原のヴィンテージワインです。自社産のブドウの単一品種で使用するために生産量が限られてしまいますが、赤城高原のテロワールや、ブドウの出来を考慮し、醸造します。造り手の醸造技術やワインづくりへの哲学により、この地ならではの芳醇で自然感に富む、ここでしか造りえない贅沢なワインです。特別な日に特別な人と味わっていただきたいワインだそうです。

 

OK’sTra」はスタッフが研修を受けたオーストラリアにあるワイナリーからのブドウを使った高品質で飲みやすい普段使いのワインです。南半球にあるオーストラリアと北半球の日本ではブドウの収穫時期が異なるので、規模が小さいワイナリーにとって設備を効率よく運転できるメリットがあるそうです。

 

<フラッグシップのI’mシリーズ>

 

また、奥利根ワイナリーにはブドウのワインの他に2種類のシードルがあり、みなかみ町産のサンふじを使ったシードルと和梨の名産地である高崎市里見地区の和梨を使ったペアーシードルです。これらは奥利根ワイナリー創業時と変わらない方法で生産され、可愛らしいボトルも当時と変わらないものだそうです。ペアーシードルをいただきましたが、シードルは甘いと思い込んでいた私は想像以上に辛口で驚きましたが、これなら食事にも合わせやすそうです。

 

<リンゴと和梨のシードル>

地産地消を楽しむブドウ畑の中のレストラン

地産地消を楽しむブドウ畑の中のレストラン

奥利根ワイナリーの付属のレストランは、赤城高原の自然に囲まれた『高原の中の隠れ家的なレストラン』という趣です。ワイナリーの付属といっても「ワインに詳しくないから・・・」と入店をためらう必要はありません。食事のみで利用する方も多く、さらに、クルマを利用している方がほとんどなので、食事の際にもワインを飲まない方もいらっしゃるそうです。

 

大きな窓越しに広大なブドウ畑を眺めながら食事を楽しめるアットホームで明るい雰囲気のレストランです。穏やかな日には赤城高原の空気感を存分に楽しめる、ウッドデッキにあるテラス席での食事も気持ちが良さそうです。

 

<テラス席ではパラソルにより日差しをコントロール>

 

自慢の一品は、赤城高原産生乳で作った濃厚ホワイトソースと群馬県産タマネギ、エリンギなどの地元野菜を使った「高原グラタン」です。同様に群馬県産のホウレンソウと昭和村産のトマトをふんだんに使ったパスタとグラタンをセットにした「ワイナリーランチ」が一番人気だそうです。これらの料理には、赤ワイン、白ワイン、どちらもよく合うので、クルマを運転しないのであればグラスワインをぜひ!また、スパイスたっぷりの「ドライ焼きカレー」や、自家製のデミグラスソースとの相性が抜群な「赤城牛のハンバーグステーキセット」もリピーターが多いそうです。さらに、お子様にはお子様向けのパスタやカレーのメニューを用意しています。ワイン云々にかかわらず、一度足を運んでランチを楽しんでください。

 

<地産地消のパスタとグラタンのワイナリーランチ>

(画像提供:奥利根ワイン)

いつでも美しいワイナリーの四季

いつでも美しいワイナリーの四季

赤城高原にある奥利根ワイナリーの標高は700m。夏は涼しい反面、冬は積雪もある地域です。さらに、赤城高原がある昭和村は、「最も美しい村」連合に加盟しているように、自然豊かなこの地は風光明媚であり、四季折々の顔を見せてくれます。

 

お話を伺ったのは夏でしたが、秋になり収穫が終わると賑やかだった時が嘘だったかのように静寂がブドウ畑を包むようになります。

 

<秋:収穫を終えた樹から漏れる夕日>

(画像提供:奥利根ワイン)

 

冬には雪に足を取られながら剪定が始まります。秋の収穫を念頭に置き、どのように実をならせるかを思い描きながら慎重に枝を切ります。

 

<冬:収穫に向けた剪定が始まる>

(画像提供:奥利根ワイン)

 

春になると、周囲が明るくなり、雪が解け、野の花が咲き始めます。今年はどうなるのだろうか?と思いながら、ブドウの発芽を待ちます。

 

<春:芽が出ると今シーズンもスタート>

(画像提供:奥利根ワイン)

 

このような美しいブドウ畑を眺めながらキャンプ「Camp in the vineyards」を楽しむことができます。広大なブドウ畑に13組限定なので豊な自然をたっぷり満喫できるそうです。

 

<ブドウ畑でキャンプできます>

(画像提供:奥利根ワイン)

 

奥利根ワイナリーは赤城高原にある小さなワイナリーで、小規模だからこそできるテロワールを重視し、手間をかけた良質なワインを作っています。また、付属のレストランでは、ブドウ畑を眺めつつワインに合う地産地消の料理を楽しむことができます。このワイナリーを訪れ、テロワールやワインについての思いを聞けば、きっとワインに対する興味がより深くなるに違いありません。

 

この取材は20268月に実施しました。

インフォメーション

奥利根ワイナリー

 

住所:利根郡昭和村大字糸井字大日向6843

電話:0278-50-3070

営業時間:9:00~17:00

定休日:木曜・年末年始

 

HP:https://oze.co.jp

facebookhttps://www.facebook.com/people/奥利根ワイナリー/100063612818954/

ぐんま観光県民ライター ぐん記者

福田 靖

私が奥利根ワイナリーを知ったのは、創業者の井瀬 賢 様とのお会いした時でした。 就農前にはワイナリーという選択肢も考えていましたが、新規でワイナリーを立ち上げる費用が莫大であることから断念し、生食用のブドウ農家になりました。今でもワイナリーを立ち上げていたら、どうなっていただろうか・・・と思うことがあります。