【田んぼに浮かぶ巨大絵】群馬 高山村田んぼアート【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

高山村田んぼアート

更新日: 2026年09月04日

吾妻郡高山村の夏の風物詩「田んぼアート」。道の駅「中山盆地」から眺めるのどかな田園風景と色鮮やかなアートは、訪れる人の心をほっと癒やしてくれます。今回は見晴台からの全景をはじめ、アートを生み出す制作の裏側や見どころを、現地取材とインタビューを交えてご紹介します!

村の玄関口「道の駅 中山盆地」

道の駅 中山盆地

<村の観光拠点であり、一日中遊んで癒やされる道の駅 中山盆地>

 

吾妻郡高山村は、子持山などの山々に囲まれたのどかな里山の村です。盆地特有の寒暖差を生かした伝統野菜「高山きゅうり」やぶどう、さくらんぼといった名産品でも知られ、近年は充実した移住サポートでも注目を集めています。

 

そんな村の魅力を一箇所に集めた拠点が「道の駅 中山盆地」です。ここからは高山村の夏の風物詩である巨大な「田んぼアート」を一望できるほか、敷地内には魅力的なスポットが充実しています。

 

毎朝採れたての野菜が並ぶ直売所、地産食材のスイーツが楽しめる交流施設「さとのわ」、大型遊具のある「ふれあいパーク」、そして日帰り温泉「ふれあいプラザ」まで揃い、一日を通してゆったり過ごせる場所です。

 

<道の駅に設置されている、高山村のマスコットキャラクター「ひかるくん」たち>

高山村たんぼアートができるまで

位置出し(ポイント打ち)作業の様子

<位置出し(ポイント打ち)作業の様子。写真提供:高山村役場>

 

「たんぼアート」とは、色の異なる稲を使って田んぼ全体に巨大な絵や文字を描く芸術です。高山村で始まったのは2009年のことで、水田を巨大なキャンバスに見立てて描かれる夏の風物詩として親しまれています。

 

面積は約2,500平方メートルにもおよび、上から見下ろしたときに絵柄が最も美しく浮かび上がるよう綿密に工夫されています。品種ごとに異なる稲が生み出す、鮮やかな「色の対比」が最大の魅力です。

 

この美しいアートを形作るため、6月上旬には測量技術を生かした「位置出し(ポイント打ち)」が行われます。デザインの正確さを左右するこの作業では、寸分の狂いもなく苗を植えるため、ロープや目印を使って1ポイントずつ慎重に位置を決めていきます。

 

その後、職員やボランティアの手で丁寧に田植えが行われます。使用する稲は、背景の緑となる「コシヒカリ」のほか、青森県田舎館村由来の古代米など計6色です。

 

6月上旬に行われる田植え作業。大勢の職員やボランティアの手によって苗が植えられていきます。写真提供:高山村役場>

 

<絵柄ごとに決められた色の苗を、手作業で一本一本ていねいに植え付けていく様子。写真提供:高山村役場>

 

稲がしっかりと成長する7月下旬から8月下旬に見頃を迎え、秋の9月下旬の稲刈りを迎えるまで、色鮮やかなアートが道の駅を彩ります。

 

これまでは会員の高齢化や人員不足から2025年に一度中止を余儀なくされましたが、村民や観光客から「楽しみにしていたのに残念」という声がたくさん寄せられました。その熱い想いを受け、2026年からは村の直営事業として予算化し、見事に復活を果たしました。たんぼアートは、地域を愛する人々の想いが詰まった、村を代表する大切な観光資源となっています。

写真で振り返る歴代のアートたち

【2009年公開】幾何学模様と「たかやま」の文字

<【2009年公開】幾何学模様と「たかやま」の文字>

 

毎年改良が重ねられ、進化を遂げた高山村のたんぼアート。過去の作品を振り返ると、その時代の世相や村の歩みが鮮明によみがえります。

 

2014年に初めて群馬県のマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」が登場して以来、大河ドラマに沸いた2016年の「甲冑を着たぐんまちゃん」、コロナ禍の収束を祈った2020年の「アマビエ」、さらには干支にちなんだ2023年の「兎」など、毎年バラエティ豊かな傑作が誕生してきました。

 

<【2015年公開】ぐんまちゃんとくまモン&ひつじ雲>

 

<【2016年公開】真田ぐんまちゃん>

 

<【2020年公開】「祷」とアマビエ>

 

<【2023年公開】月に入る兎>

 

歴代の写真を見比べてみると、色の鮮やかさが年々深みを増しており、その進化とこだわりには目を見張るものがあります。

※過去のデザインや最新の情報は、こちらのページで紹介されています。

https://www.takayama-kanko.jp/info/shizen/tanbo-art.html

高山村たんぼアートのおすすめ撮影スポット3選

見晴台フェンス沿いにあるフォトスポット

<見晴台フェンス沿いにあるフォトスポット>

 

実際に現地を訪れた筆者が、たんぼアートをきれいに撮影できるおすすめのポイントを3つに分けて紹介します。

① 見晴台看板の右側

道の駅 中山盆地の駐車場付近にある見晴台看板の右側。ここからは全体像が綺麗に収まるだけでなく、少し離れた位置や低いアングルから狙うことで、アートの立体感がガラリと違って見えます。

 

<絵柄が綺麗に見えるベストスポット>

 

② 見晴台看板の左側

特におすすめなのが見晴台看板の左側です。手前の雑草が絵柄に被らないようにすっきりと撮影できる、絶好の撮影ポジションとなっています。

 

<①②の撮影場所のフェンスには「田んぼアートデザイン」の白い表記が貼ってあるので、これを目印に探してみてください>

 

<見晴台看板の左側から狙う、雑草に被らないイチオシの構図>

 

③ 四阿(あずまや)

2018年にオープンした隣接の緑地広場「高山ふれあいパーク」の遊具コーナー隣にある四阿(あずまや)。こちらの2階に上がって撮影するのも非常に良いアングルです。ただ、筆者は階段を上がっただけで最近の運動不足を痛感し、ぜえぜえ言ってしまいました。

 

<ふれあいパークの四阿(あずまや)の階段を上がると、アートの全体像を綺麗に俯瞰できます>

 

<ふれあいパークの四阿(あずまや)から見下ろす、一味違う立体感>

間近で実感!稲の種類と色の違い

直近で見る田んぼアート

回は特別に許可をいただき、田んぼのすぐ近くまで入って撮影する貴重な機会を得ました。当日は間近でたんぼアートを見て回ったのですが、そこには遠くからでは気づけない意外な発見がありました。

 

<間近で見てびっくり!コシヒカリと古代米の背丈の違い>

 

近くで見て驚いたのは、稲の種類による特徴の違いです。背景の緑である「コシヒカリ」は背が高く育っているのに対し、絵柄を描く「古代米」は一回り背が低く、同じ緑でも葉の色が少し違っていました。

 

<近くに迫ることで初めて分かる美しい色の対比>

 

<色の異なる稲が均等に配列よく並んでいたのが印象的でした>

 

遠くからでは一色に見える場所も、間近に迫ると鮮やかな色の違いがはっきりと分かり、そのコントラストの美しさが印象的でした。色の異なる稲が組み合わさることで、このきれいなアートができているんだなと、とても勉強になる時間でした。

高山村役場の担当者が明かす苦労と想い

高山村役場地域振興課 平形さん

現地を訪れた際、高山村役場 地域振興課の平形さんにお会いし、たんぼアートの裏側を詳しく伺うことができました。手探りの中で進む制作の舞台裏や、担当者目線での見どころをインタビュー形式でお届けします。

 

筆者:展望台から見ると完璧なバランスですが、どのように設計しているのですか?

 

平形さん:展望台から見下ろした時に絵がきれいに見えるよう、『遠近法』を使って、地上(田んぼ)では縦長に配置しているのがポイントです。現在は専門の業者さんにもご協力いただき、レーザーを使って数センチ単位で細かくポイントを打ち、紐を張ってエリア分けをするという作業を行っています。

 

筆者:今年の田植えの様子はどうでしたか?

 

平形さん:今年の田植えは6月5日に実施し、村職員のほか、一般ボランティア、移住コーディネーターなど計23名が参加しました。その中には、安中総合学園高校の生徒10名も実習として協力してくれたんです。背景部分は機械で植えますが、アートの命である絵柄部分はすべて手作業で行いました。

 

筆者:使用しているお米について教えてください。

 

平形さん:背景の緑は『コシヒカリ』ですが、それ以外の色は青森県田舎館村から取り寄せた古代米を使っています。紫、白、赤、黄、オレンジ、緑の計6色で絵を描いています。

 

筆者:苗を植えた後の維持管理で、特に大変なことはありますか?

 

平形さん:最大の苦労は水不足ですね。近年は空梅雨や猛暑の影響で田んぼが干上がるリスクが高く、農業用水が足りない時は自分たちでポンプと発電機を使い、遠くから一日中水を汲み上げています。ほかにも除草対策を徹底しています。絵の美しさを守るために、腰痛になりながらも職員たちが日々作業を続けています。

 

筆者:ベストシーズンや撮影のポイントを教えてください

 

平形さん:ベストシーズンは7月下旬から8月下旬で、この時期は稲の背丈が揃い、古代米の発色が最も鮮やかになります。写真撮影は日中の晴天時がおすすめですね。見晴らし台のフェンス沿いに、最も絵がきれいに見えるフォトスポットがありますので、そこから広角で撮るのが良いです!

 

筆者:今年の作品には、どのようなコンセプトや想いが込められているのでしょうか?

 

平形さん:今年の作品には、村のスローガンである「たからのやま」という文字が入っています。高山村には、まだ知られていない豊かな自然、心地よい温泉、美味しい農産物など、多くの「お宝」が眠っています。それらを掘り起こして村外へ発信していきたいという、私たちの強い想いを込めました。

筆者:これから訪れる方に向けてメッセージをお願いします。

 

平形さん:高山村の田んぼアートに関わってくださった多くの皆様のおかげで、今年度から無事に復活させることができました。村の事業として再スタートを切った1年目としては、非常にクオリティの高い、良いものができたと自負しています。

村内の方はもちろん、村外にお住まいの方も、ぜひこの田んぼアートを見に、そして高山村の魅力を感じに、道の駅「中山盆地」まで足を運んでいただければ嬉しいです。皆様のお越しをお待ちしております!

 

高山村の田んぼアートは、のどかな景色に心癒やされるだけでなく、毎日の水管理や雑草取りといった地道な手作業と、村の人たちの思いがぎゅっと詰まった素敵なスポットです。ぜひ夏の高山村へ足を運んで、のんびりとした時間を過ごしてみてください。

 

インフォメーション

高山村田んぼアート

 

住所:吾妻郡高山村大字中山2357-1(道の駅 中山盆地内)

開催時期:例年7月下旬~9月下旬(稲刈りまで)

駐車場:有り( 無料)

 

※掲載している情報は2026年7月時点のものです。生育状況や最新情報は、おでかけ前に公式サイト等でご確認ください。


問い合わせ先:高山村役場 地域振興課

電話番号:0279-63-2111(代表)

定休日:土曜日・日曜日・祝日

 

HP:https://www.vill.takayama.gunma.jp/

 

<アクセス>
・自家用車:関越道「渋川伊香保IC」か「沼田IC」から約30分、または「月夜野IC」から約20分。

・公共交通機関:JR吾妻線「中之条駅」かJR上越線「沼田駅」からバスに乗って約20分。

タマル様

タマル

ぐんまの魅力を発信する「タマルのぐん旅」を運営。温泉巡りとローカルフードの食べ歩きをライフワークとし、県内の秘境から隠れた名店まで、自ら足を運んで取材を重ねています。榛名山や碓氷峠のヒルクライムに挑むサイクリストでもあり、大自然が織りなす一瞬の美しさをファインダーに捉えるのが得意。最近は、季節の花スポットや隠れた絶景の執筆を中心に活動しています。