高崎の根っこ、本町(もとまち)へ③― この街が好きで、ここに来た。本町の新しい担い手たち【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

本町の新しい担い手たち

更新日: 2026年08月21日

高崎の中心部にありながら、歴史ある街並みが今も残る本町。そこを歩き、そこで生きる人たちを訪ねる連載「高崎の根っこ、本町へ」。第3回で出会うのは、新しく本町に店を構えた二組です。タイカレーの「curry stand baimai」と、クラフトビールの「COTAMA BREWERY」、それぞれの物語の先に、本町という場所がありました。

スパイスと共に、旅をして。curry stand baimaiの10年

豚ひき肉のガパオライスとタイ風エビのココナッツカレーの2種盛り

<豚ひき肉のガパオライスとタイ風エビのココナッツカレーの2種盛り。色とりどりの副菜とともに、見た目にも華やかな一皿。>

 

本町通りと田町通りが交差する角地。ここで店を構えて、6年半になるという新井若木(わかこ)さんと夫の陽介さん。

 

タイカレー・スパイスカレーとクラフトドリンクを提供するbaimaiのメニューには、「食養生」という考え方が息づいています。定番のカレーに加え、四季の食材とスパイス・ハーブを組み合わせた季節限定カレーも登場。副菜も5〜6種類ほど添えられ、目でも楽しめる一皿に仕上がっています。「美味しいカレーを食べて、心も身体も元気になるように」そんな願いが込められているそうです。

 

もともとカレー好きだった若木さん。市内の居酒屋の空き時間を間借りする形でカレーを提供し始めたのがスタートでした。やがてマルシェやイベントへの出店、移動販売へと活動の幅を広げ、その後富岡市に念願の店舗を構えました。

 

<移動販売時代の屋号「ポンカレー」がさりげなく飾られていた>

 

しかし、間借りや移動販売時代についていたお客様の多くは高崎周辺の方で、富岡へは足を運びにくくなってしまった人も少なくなかったといいます。「もっと気軽に来てもらえる店を」――そんな思いから、高崎での2店舗目を模索し始めました。若木さんは高崎市の生まれ育ち。陽介さんも高崎で長く飲食業を営んできた経験があり、二人にとってなじみ深い土地でした。新天地で店を構えても、心のどこかにあったのは、やはりこの高崎の街だったのかもしれません。2人とも生まれも育ちもこの街で、陽介さんも地元で長く飲食業を営んできた経験がありました。新天地で店を構えても、心のどこかにあったのは、やはり生まれ育った高崎の街だったのかもしれません。

 

「なんだかんだ、高崎が好きだから」

 

この土地への愛着が、出店の決め手になったようです。

 

<本町通りと田町通りが交差する角地に立つ、白を基調としたシンプルな建物>

フラットに迎えてくれる本町の懐深さ

curry stand baimaiを営む新井若木さんと夫の陽介さん

curry stand baimaiを営む新井若木さんと夫の陽介さん>

 

移転当初、陽介さんは本町の人たちとの距離感をつかみかね、自分たちがこの街に馴染めているのか、不安を感じることもあったそう。しかし日々を過ごすうちに、それはおせっかいでもなく、距離を置くわけでもない、本町の人たちが持つほどよい「フラットさ」を捉えきれていなかったからだと気づいたといいます。

 

実際に、近隣の老舗店主たちが「美味しいから、ぜひ行ってみて」とお客さんを送り出してくれることも多いのだそう。

 

誰かを特別扱いするわけでも、余計な干渉をするわけでもない。でも、さりげなく後押ししてくれる。そんな距離感からくる心地良さが、この街には流れているようです。

 

<誰が飲んでも「これぞジンジャーエール」と感じられるスタンダードな味わいを目指して作られた一杯>

 

同世代で個人店を営む、顔なじみも多いといいます。陽介さんが高崎で飲食業をしてきた中で生まれたつながり、若木さんが移動販売時代のお客様との縁からできたつながり――出所はさまざまでも、気づけば周りに支え合える仲間も増えました。

 

群馬では移動手段がどうしても車になりがち。ですが個人店同士が競い合うのではなく、エリア全体に人が集まればいいという空気があるこの街だからこそ、陽介さんは「せっかく車を停めてご飯を食べに来てくれたなら、そのあとコーヒーを飲みに行ったり、甘いものを食べに行ったりしてほしい」と話します。

 

一つのお店で完結するのではなく、この辺りを歩いて、いろんなお店をはしごしてもらう――そんな循環がこの街に生まれたらいい。そんな2人の想いを感じました。

 

<大きな窓から本町の通りを見渡せるカウンター席。>

東京から高崎へ。物件探しの果てにたどり着いた本町

店主の結衣さん・良輔さんと常連さん

クラフトビールの醸造所兼タップルーム「COTAMA BREWERY(コタマブルワリー)」は、経営を担う武藤結衣さんと、醸造を手がける良輔さんご夫妻のお店です。

 

結衣さんは群馬県下仁田町の出身で、もともとクラフトビール好き。良輔さんはすでにビール造りに携わっていたといいます。良輔さんは東京で出店話が持ち上がっていたもののコロナ禍で立ち消えに。それなら結衣さんの実家近くの土地でと考えたものの、建物を一から建てる資金を用意するのは難しかったそうです。

 

そこで群馬県内で改めて物件を探すことになりました。とはいえ、理想の高さと広さを兼ね備えた物件はなかなか見つかりません。ようやく今の場所に出会えたのは、この連載の第2回で紹介している「まちごと屋」からの紹介がきっかけでした。

 

<ビールの醸造設備を設置できる広さと高さがあることも物件の条件だった>

 

駅から少し離れた立地ということもあり、開業当初は人通りへの不安もあったそうですが、JR高崎駅方面から歩いてくるお客さんと、JR信越線北高崎駅から降りて歩いてくるお客さんの両方が来店してくれているそうです。

 

「周辺には面白い個人店も増えてきていて、歩いて発見する楽しさがありますよ」

 

そんな本町らしさを実感しながら、お店を続けています。

 

内装デザインを手がけたのは、まちごと屋の取締役で建築デザインを担当している佐藤さん。まちごと屋として本連載の別の店(本町しもたや)にも登場する顔ぶれが、ここでも本町の新しい店づくりに関わっていました。

 

2階はカフェのような落ち着いた空間>

何杯でも飲める、「主張しすぎない」ビールで「街のビール屋」を目指して

黒ビール「ポーター」のラージ(480ml)と「フィッシュ&ポテト」

<すっきり飲める黒ビール「ポーター」のラージ(480ml)と「フィッシュ&ポテト」>

 

コタマブルワリーが目指しているのは、ビールそのものを主役にした店ではなく、ビールを介して会話が弾む場所だといいます。あまり主張しすぎない、ぬるくなっても美味しく感じられるビール。片手に持ちながら、何杯でもおしゃべりを続けられるような一杯を意識しています。

 

その結果か、クラフトビール好きというよりも、むしろワインや日本酒好きで普段あまりクラフトビールを飲まない人たちが「ここのビールなら美味しく飲める」と足を運んでくれることも多いといいます。

 

1杯だけ飲んで帰るお客さんも多く、そんなふうに気軽に立ち寄ってほしいという思いから、チャージ料金は取っていません。実際、店の近くには銭湯があり、風呂上がりに1杯だけ引っ掛けて帰る人もいるとか。

 

<一番大きな「ジョッキ(600ml)」サイズで楽しむ常連さん>

 

開業から2年余り。地域にはまだ知られていない部分も多いといい、もっと近所の人たちに知ってもらいたいという思いがあります。今年からは缶ビールの製造も始め、現在は群馬県内と都内の一部店舗で販売しています。今後は個人向けの通販も始め、県外の人たちにも届けていきたいと話してくれました。

 

 

「生まれ育った街だから」「たどり着いた街だから」――二組の店主が選んだのは、同じ高崎・本町でした。一皿のカレー、一杯のビールを通して、人と人がゆるやかにつながっていく。そんな共通の願いが、この街の懐の深さと重なって見えました。

 

本文中の料金・営業時間などの情報は、20267月の取材時点のものです。最新の情報は各施設・店舗の公式サイト等をご確認ください。

インフォメーション

curry stand baimai

 

住所:群馬県高崎市本町64−1−1

電話:027-381-8323

営業時間:11:00~15:30

定休日:不定休(Instagramで告知)

 

Instagram:@currystandbaimai

 

 

COTAMA BREWERY(コタマブルワリー)

 

住所:群馬県高崎市本町117−3

電話:080-9546-4003

営業時間:月曜・木曜・金曜17:00~22:00/土曜・祝前日15:00〜21:00/日曜・祝日 15:00~19:00

定休日:火曜、水曜

 

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望月優衣

望月 優衣

渋川市出身・高崎市在住のフリーライター。群馬県内の取材・インタビューを中心に、文章を仕事に楽しく生活しています。趣味は街歩きや美術館めぐり、ノープランの旅行です。