「飛行機王」と呼ばれた中島知久平が大空にかけた情熱の軌跡をたどる~大空への第一歩は『養蚕小屋』から始まった~【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

「飛行機王」と呼ばれた中島知久平

更新日: 2026年08月03日

「中島知久平」は、大正から昭和にかけ、SUBARUの前身である日本初の民間飛行機会社「中島飛行機」を東洋最大のメーカーへ育てた創業者です。新田郡尾島町(現在の太田市)の養蚕農家に生まれた知久平は、農家を継ぐことを嫌い16歳の時、家にあった繭代金100円(現在の200万円)を握りしめ、東京へ家出をします。海軍学校に入学し優秀な成績を収めた知久平は、海軍軍人となります。その後、民間飛行機会社を設立するため海軍を退役し群馬に戻ってきます。『養蚕小屋』を借り、知久平を含めわずか7名でスタートした研究所を従業員数25万人を超える東洋最大の航空機メーカーへと成長させました。

『養蚕小屋』から大空へ。飛行機王・中島知久平が駆け抜けた時代展 

飛行機王・中島知久平が駆け抜けた時代展 

<太田市尾島行政センターにある「中島知久平像」>

 

「飛行機王」と称された中島知久平。その誕生と軌跡、太平洋戦争前の激動の時代を背景に、原点である『養蚕』との深い繋がりを紐解く資料展が、伊勢崎市境島村の「福祉交流館しまむら」で開催されました。会場には、知久平が開発・製造に心血を注いだ航空機のプロペラやタイヤなど各種装備品、中島飛行機の制服や従業員証、社章、貴重な社内文書にいたるまで実物資料が並びます。さらに、ゆかりの施設や歴史を解説する紹介パネルなど展示品の総数は187点にのぼります。これまで知られることのなかった「中島飛行機」の真の姿を、多角的な視点から再確認できる見応えのある展示となっています。

 

<福祉交流会しまむら>

大正から昭和にわたる「中島飛行機」のリアルな軌跡『中島飛行機と航空資料展』

『中島飛行機と航空資料展』

<社員の給与袋など>

制服は、しっかりした生地でできておりボタンには「中島飛行機」の社章が入っていました。想像以上に綺麗に残っており、まるで昨日まで着ていたかのような息遣いを感じます。注目は社員の給料。様々な資料から推察すると、当時、警察官の初任給が45円ほどだったのに対し中島飛行機の初任給は、だいたい108円ほどと2倍以上の高額だったことが伺えます。また「寮生必携」と「就業規則」などの冊子を見ると、工場の機密漏洩をしないことや懲罰規定などもわかりやすく書いてありました。このように整備された規則があったからこそ、社員も安心して働くことができたのだと感じました。

 

<甲式三型練習機のプロペラ>

当時の従業員にも焦点を当てた貴重な展示

子供が楽しむ「すごろく」や「めんこ」

<子供が楽しむ「すごろく」や「めんこ」もありました>

 

本展示会の企画や歴史調査を担当した川田さんにお話しを伺うと、開催するきっかけとなったのは、太田市にある中島飛行機の最初の研究所「養蚕小屋」が倒壊寸前に荒れ果てていることを知ったこと。このままではいけないと、この現状を伝えるために展示会を開催したそうです。川田さんは、「開催までの期間が短く、また未経験の分野であったため新たな知見を必要としたことが大変でした。」と苦労を話してくださいました。見るだけの展示ではなく、展示物を手に取ることもでき、分かりやすい解説パネルで誰でも深く楽しめるよう展示されていました。

 

<川田さん・右>

国指定重要文化財「旧中島家住宅」へ

旧中島家住宅

つづいてやって来たのは「旧中島家住宅」。中島知久平が両親のために築いた敷地面積10,000平方メートルを超える大規模邸宅です。来客を迎える重厚な車寄せ、ステンドグラスやシャンデリアなど細部にわたり高価な装飾が施された応接間、客間から見渡せる広い前庭など、宮殿建築としての特徴が随所に見られる群馬県を代表する近代和風建築です。現在は地域交流センターとして、一部を公開しています。

 

<第一応接室>

型破りな発想と人望で飛躍した「中島知久平」

3,000平方メートルもの前庭

主屋の南側には3,000平方メートルもの前庭が広がります。綺麗に手入れをされた芝生の庭から南の空を眺めると、かつて利根川河川敷にあった中島飛行機の飛行場から「離着陸する飛行機を眺めることができた」と言われています。邸宅は両親への親孝行はもちろんのこと、「お世話になった地元の人々をいつでも盛大にもてなしたい」という中島知久平のおもてなしの心が形になったものです。部下を宝のように大切にし、地元の住民からも絶大な人望を集めた知久平の人柄が垣間見られる場所でした。 

 

<零式艦上戦闘機>

 

邸宅から車で5分ほどの場所にある太田市尾島行政センターの1階ロビーには、1/8縮尺の「零式艦上戦闘機(旧中島飛行機(株)製造52型)」が展示されています。また、南側の「町民の森公園」の一角には、生誕100年を記念し建てられた「中島知久平の像」があります。実物よりも一回り大きく造られた像ですが、背広姿で恰幅が良く堂々と立つ知久平の姿を見ることができます。

 

 

この取材は20267月に行いました。

インフォメーション

福祉交流館しまむら「中島飛行機と航空資料展」

 

住所:群馬県伊勢崎市境島村1968-378

営業時間:9時30分~16時

開催期間:2026年6月21日~8月16日毎週日曜

料金:無料

 

HP:「太平記の里」歴史研究会

 

 

旧中島家住宅(太田市中島知久平地域交流センター)

 

住所:群馬県太田市押切町1417

電話:0276-52-2235

利用時間:9時~17時(入場16時30分まで)

休館日:月曜(月曜が休日の場合は翌日) 年末年始

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