榛東村の美しい庭を巡る。「オープンローズガーデン」で体感するバラの魅力と地域の温もり【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

榛東村の「オープンローズガーデン」

更新日: 2026年07月17日

群馬県内では玉村町や藤岡市などでも知られる「オープンローズガーデン」 。榛東村でも今年で13年目を迎え、523日と24日の2日間にわたり一斉公開が行われました。一般の家庭が善意で開放する10軒の庭を、村の公共機関を拠点に歩いて巡った現地の模様と、訪問の際に知っておきたい見学マナーについてレポートします。

地図を手に最初の庭へ。一般家庭を訪れる際の見学マナー

オープンローズガーデン最初の庭

今回は、村の公共機関である「しんとぴあ」の駐車場に車を停め、ここを拠点として徒歩で移動することにしました。村が発行している案内地図を広げ、記載された情報を頼りに最初の目的地を目指します。スマートフォンのナビに頼るのとは違い、地図を見ながら実際の景色と照らし合わせてお庭を探す過程は、チェックポイントを探して歩くオリエンテーリングのような楽しさがあります 。

 

しばらく歩くと、最初の訪問先であるお庭が見えてきました。敷地の入り口には、見学客向けの目印として「のぼり旗」が立てられています。

 

ここで改めて意識したいのが、オープンガーデンを訪れる際のマナーです。このイベントは、あくまで庭主の方々の「善意」によって一般家庭の敷地が公開されているものです。観光施設ではないため、訪問にあたっては最低限のルールを守る必要があります。

 

村が配布する案内でも、以下のようなマナーへの配慮が呼びかけられています。

 

  • 事前の準備: 基本的に個人宅のトイレを借りることはできないため、訪問前に済ませておく必要があります。

  • 観賞時の配慮: 敷地に入る際、インターホン等で庭主を呼び出す必要はありません。また、庭主や近隣住民の迷惑にならないよう、静かに鑑賞しましょう。

  • 植物の保護: 園内の植物に直接触れたり、抜き取ったり、花びらを持ち帰ったりする行為は厳禁です。

  • 移動とゴミ: 一般家庭のため駐車スペースは限られています 。ガーデン近くの公共機関の駐車場を利用しましょう。また、ゴミは必ず自宅へ持ち帰るのが鉄則です。

 

こうしたマナーを念頭に、少し緊張感を持ちながら静かに庭へと足を踏み入れました。

 

当日の早朝には雨が降っていたため、庭に入ると、開いたばかりのバラの花びらに透明な雫が残っている美しい光景に出会いました。静かに鑑賞していると、庭主の方が出てこられ、「朝の雨で、バラが少し元気がないんだよ」と気さくに声をかけてくれました。初めての訪問でしたが、庭主の方がとても楽しそうにバラの特性やお手入れについて話してくださり、最初の庭からこのイベントならではの温かい交流を実感することができました。

 

<オープンガーデンには目印が出ています>

のどかな村の風景と、庭から庭へ歩く時間

ピアノの調べが響いていたお庭

<ピアノの調べが響いていたお庭>

 

最初の庭を後にして次のお庭へと向かう道中、榛東村の街並みを歩いていると、公開されている庭園以外にも見事にバラを育てている一般家庭が非常に多いことに気づかされます。村全体にバラを愛好する文化が深く根付いているのを感じながら歩を進めました。

 

庭と庭を移動する道すがらにも、この時期ならではの魅力があります。周囲の田んぼではちょうど田植えの準備が始まっており、なみなみと水が引き入れられた水田や、青々とした稲の苗が用意されている光景が目に留まりました。

 

また、榛東村は全体的に緩やかな坂道が多いのが特徴です。この傾斜がある地形のせいか、頭上に広がる空がとても広く感じられます。足を止めると、遠くの眼下に前橋の街並みが見渡せるなど、車での移動では見落としてしまいがちな美しい景色に出会えるのも、徒歩ならではの醍醐味です 。

2軒目に訪れたお庭では、丁寧に手入れされたバラに囲まれた空間に佇んでいると、お宅の中から微かにピアノの演奏が聞こえてきました。まだ他の見学客もそれほど訪れていない、朝の静かで贅沢な時間を心地よく楽しむことができました。

 

<散策も楽しい村の道>

約100種類が咲き乱れる「愛好会会長の庭」活気溢れるフォトスポット

約100種類が咲き乱れる「愛好会会長の庭」

しばらく歩いていると、前方に賑やかな人だかりが見えてきました。「榛東バラ愛好会」の会長を務める岩崎さんのお庭です。ここは多くの見学客が訪れており、これまでの静かな空間から一転して活気ある雰囲気に包まれていました。

 

敷地内には約100種類ものバラが咲き乱れており、その圧倒的なスケールと見事な手入れの行き届き方に驚かされます。これまでに培われた高い技術により、過去には「群馬県内のコンテスト」で優秀賞を獲得した実績もあるそうです。他の地域のバラ愛好会とも広く交流を持ち、日々研究を重ねておられます。

 

 

庭では、会長自らが見学客の案内や応対に大忙しで動かれていました。今日の最も美しく写る「フォトスポット」を教えてくれるだけでなく、見学客のカメラを預かってバラと一緒に撮影をしてあげるなど、非常に気さくで熱心な姿が印象的でした。お話を伺うと、海外でのスキーやバラの写真撮影など、多彩な趣味を持つ非常にアクティブな人柄であり、その溢れる行動力と熱量が日々のバラ栽培の大きなエネルギーになっているようでした。

 

<榛東バラ愛好会会長・たくさんのお話を聞かせていただきました>

猫のいる風景から「花より団子」の庭へ。徒歩で巡る最終行程

「花より団子」の庭へ

<バラの向こうで、お饅頭も販売していました>

 

愛好会会長の見事な庭を後にし、次のお庭を目指して再び村の細道を歩き始めます。車がほとんど通らないのどかな民家の軒先を通りかかったとき、一匹の猫が気持ちよさそうに日向ぼっこをしている微笑ましい光景に出会いました。地域の日常風景や動物との偶然の出会いに心を和ませられるのも、歩いて移動しているからこその風景でした。

 

少しずづ気温が上がり、汗ばむ陽気のなか10分ほど歩き、目的のお庭に到着しました。こちらのお庭では、見学客に向けて「花より団子」で、地元の和菓子店によるお饅頭の出張販売が行われていました。

 

手入れされた色鮮やかなバラの香りに包まれながら木陰で美味しいお饅頭をいただく時間は、散策のご褒美とも言える贅沢なひとときです。五感を使って地域を味わうようなこの体験は、このお庭ならではの特別な思い出となりました。こうして、午前中の徒歩によるお庭巡りは大満足のうちに一区切りとなりました。

 

エリアを車で移動。10軒を巡り終えて感じた「歩く旅」の魅力

「歩く旅」の魅力

ここで一旦、スタート地点であり車を停めてある公共機関「しんとぴあ」へと戻ります。ここからは、歩くには少し離れたエリアに点在する残りのお庭を訪ねるため、拠点を移動します。目的のエリアにある公園の駐車場に車を停め、ここを拠点に周囲の2軒のお庭を徒歩で訪問。それぞれの庭主のこだわりが詰まった空間をじっくりと見学させていただきました。

 

その後、今回の旅の最終目的地となる10軒目のお庭を目指し、さらに車を走らせて移動します。

 

 

最後に訪れた10軒目のお庭も魅力に溢れていました 。庭の随所に木製のベンチや小物がセンスよく配置され、庭主の思いが詰め込まれた空間が広がっています 10年の歳月をかけて育てられたという約60種類のバラが見事に咲き誇り、今回の10軒を巡る旅を締めくくるにふさわしい場所でした。

 

 

一斉公開された10軒の庭園はどれも庭主の方々の個性と深い愛情が光る、素晴らしいものばかりでした。各庭園の近くには若干の駐車スペースが用意されている場所もありますが、実際にすべてのエリアを体験して感じたことは、やはり公共機関に車を停め、地図を片手に散策しながら巡る「歩く旅」をぜひ体験していただきたいということです。

 

地図を見ながら次のチェックポイントを宝探しのように探すワクワク感、車では一瞬で通り過ぎてしまう田植え前の美しい水面、眼下に広がる街並み。それらはすべて、歩くスピードだからこそ出会えた貴重な景色でした 。

行く先々で庭主の方が温かく迎えてくれ、気さくにお庭やバラのストーリーを語ってくださった時間は、何物にも代えがたい体験でした。美しいバラとともに、榛東村の人々の温かな心に触れられるこの散策旅を、ぜひ多くの人にゆっくりと歩いて体感していただきたいです。

インフォメーション

榛東村役場 産業振興課

 

TEL:0279-26-2559

 村岡 正章様

村岡 正章

本業は写真撮影で、幅広いジャンルの現場に携わっています。ライターとしては駆け出しですが、 専門である撮影の視点を活かし、地域の小さな出来事を丁寧に記事にしていきます。群馬の魅力 を一歩ずつ探求中です。