東京から2時間、下仁田ねぎが教えてくれること。収穫・食・歴史、大地の旅
更新日: 2026年07月03日
雄大な山々に囲まれた群馬県下仁田町。この町には、訪れたくなる魅力があります。
それが「下仁田ねぎ」です。
生では驚くほど辛く、火を通せばとろけるように甘い。その味を生み出すのは、下仁田の風土と15か月に及ぶ栽培の歳月。そして、代々受け継がれてきた生産者の技です。
なぜ下仁田ねぎは、江戸時代の大名を魅了し、今なお人々を惹きつけ続けるのでしょうか。
収穫体験、ねぎ祭り、そして旬の味覚を通して、この土地でしか出会えない物語をたどります。
東京から約2時間、大地の記憶が刻まれた町
レトロな佇まいの上信電鉄下仁田駅
東京から新幹線で約50分のJR高崎駅へ。そこから上信電鉄に乗り換え、のどかな風景を眺めながら約1時間。終点の下仁田駅に降り立つと、どこか懐かしい時間が流れる町並みが迎えてくれます。
町の北部から西部には妙義荒船佐久高原国定公園が広がり、妙義山、荒船山、そして西上州の山々が連なります。
さらに、この町には日本列島を東西に分ける「中央構造線」が走り、関東でも有数の地質観察スポットとして知られています。こうした貴重な地質資源が評価され、2011年には日本ジオパークネットワークへの加盟が認定されました。
また、明治時代の養蚕業を支えた荒船風穴は2014年にユネスコ世界文化遺産へ登録されています。

世界文化遺産富岡製糸場と絹産業遺産群「荒船風穴」
豊かな自然と悠久の地球の営み。その大地の上で、下仁田ねぎは何世代にもわたって育まれてきました。
下仁田が歩んだ歴史
活気溢れる諏訪神社例大祭
下仁田町の魅力は、自然だけではありません。この町には、人々が紡いできた歴史があります。
江戸時代、下仁田は中山道の脇往還沿いの宿場町として栄えました。生糸や麻、煙草、漆などの物資が行き交い、多くの旅人で賑わったといいます。その面影は今も祭りの中に息づいています。
天保12年(1841年)頃から続く諏訪神社秋季例大祭では、神輿渡御と7台の山車が町内を巡行し、お囃子の競演が町を熱気で包みます。
明治時代に入ると養蚕業が発展し、人々は座繰りによって糸を紡ぎました。また、隣接する南牧村でこんにゃくの栽培が盛んであったことから、下仁田町でも行われるようになりました。その後、水資源を活かしたこんにゃく精粉加工業も盛んになり、こんにゃくの産地として、今に続いています。
宿場町としての記憶。養蚕とこんにゃくに支えられた暮らし。そうした土地の歴史とともに、下仁田ねぎもまた受け継がれてきたのです。
2025年開催の諏訪神社例大祭
殿様をも虜にした、究極の下仁田ねぎ物語
威風堂々とした装いの下仁田ねぎ
土の中で15か月、旨みを蓄える一本
11月から1月にかけて旬を迎える下仁田ねぎ。短く太い白根が特徴で、長さ20cm、太さ9cmほどになるものもあります。
その堂々とした姿は、土の中でじっくりと育まれてきた時間の証です。
生では涙が出るほどの辛さを持ちながら、火を通した瞬間、とろけるような甘さへと変わる。その濃厚な旨みと香りは、下仁田ジオパークの風土だからこそ生まれる味わいです。
9月に種をまき、4月と7月に二度の植え替えを行いながら育てられ、収穫までにかかる時間は約15か月。
晩秋から初冬にかけて店先に並ぶ一本一本には、一年以上の歳月と下仁田町の風土、そして生産者たちの愛情が込められています。
時代を超えて人々を魅了してきた、究極のねぎ
下仁田が育てた、冬の主役下仁田ねぎ
下仁田ねぎは、この土地の風土が育んだ特別な存在です。
同じ種を使い、同じように育てても、下仁田町と同じ味わいを生み出すことは容易ではありません。気候や土壌、水、そして生産者が受け継いできた技術。そのすべてが重なり合うことで、ここにしかない味が生まれます。
その価値は古くから認められてきました。江戸時代には大名が取り寄せを望み、皇室にも献上された記録が残されています。「殿様ねぎ」と呼ばれたのも、そのおいしさと希少性ゆえです。
さらに、本格的な旬を迎えるのは晩秋から冬にかけての限られた期間だけ。最高の味わいに出会える時間は決して長くありません。
下仁田の風土、生産者の技、そして一年以上の歳月が育むここにしかない味。その一本は、まさに「究極のねぎ」と呼ぶにふさわしい存在です。
収穫の喜びを分かち合う、下仁田ねぎ祭り
こんにゃく手作り道場前で執り行われる下仁田ねぎ祭り開会式
例年11月23日、下仁田ねぎが旬を迎える時期に合わせて「下仁田ねぎ祭り」が開催されます。
旬を迎えた下仁田ねぎを「見て・買って・味わう」食の祭典として、生産者による直売や特製下仁田ねぎま串、鉄板焼き、下仁田汁の振る舞いなど、多彩な催しが行われます。
過去には、こんにゃく製品の試食・販売や神津牧場の乳製品、ご当地グルメを提供するキッチンカーなど、30を超える出店が並び、会場は旬の味覚を求める人々で賑わいました。

下仁田ねぎの販売も行われる
群馬住みます芸人「アンカンミンカン」によるステージ出演や、新潟発のネギをテーマにしたアイドルグループ「Negicco」によるミニライブ&トークショー、人力車で昭和レトロな街並みを巡る体験なども行われ、食だけでなく下仁田ならではの文化や町の魅力を楽しめる一日となりました。
収穫の喜びを分かち合い、旬の味覚を味わう下仁田ねぎ祭り。
生産者と来訪者、そして地域の人々が集い、下仁田ねぎを通してこの土地の魅力を分かち合う。それは「食材」が「物語」へと変わる瞬間でもあります。
名人に学び、その価値を知る収穫体験
道の駅しもにたの隣にある観光農園「モジョファーム下仁田」
下仁田ねぎが旬を迎える冬。この時期だけの特別な体験が始まります。
舞台は、道の駅しもにたの隣に広がる観光農園「モジョファーム下仁田」。

殿屋を営む山田さん
収穫方法を教えてくれるのは、収穫インストラクターの一人である山田さん。地域おこし協力隊として下仁田へ移住し、地元農家での研修を経て就農。現在は「殿屋」を立ち上げ、下仁田ねぎの栽培と販売を行っています。
大きなフォークをねぎの根元へ垂直に差し込み、てこの原理でゆっくりと土を持ち上げていき、根が見え始めたら、茎をそっとつかみ、丁寧に掘り出します。

フォークを使って下仁田ねぎを掘り出す
ようやく姿を現した一本のねぎが、15か月もの歳月をかけて育ったものだと知ったとき、その重みはまるで違って感じられます。

おいしさを蓄えるために葉を枯らすのだそう
収穫体験の所要時間は約60分。収穫した下仁田ねぎは持ち帰ることができます。
畑に立ち、自らの手で土を掘り起こす。その瞬間にはじめて、とろける味わいの理由と、その尊さを知ることができ、その瞬間「食材」から「物語」へと変わるのです。
下仁田町観光協会
※この体験は、下仁田町観光協会を通じて申し込み・問い合わせが可能です。
殿屋 下仁田ねぎ
収穫の先にある、本物の食と旅の体験
火を通すと本来の旨味を発揮する下仁田ねぎ
これまで見てきた下仁田ねぎは、この土地が育んだ特別な食材です。旬の味わいは、ぜひ現地で体験したいもの!
収穫の余韻のまま、下仁田町で味わえるねぎ料理をご紹介します。

手軽に食べられるしもにたキッチン まるも屋
道の駅しもにた内の「しもにたキッチン まるも屋」では、期間・数量限定で下仁田ねぎの唐揚げを楽しむことができます。

贅沢にもねぎ1本がまるまる唐揚げに!
シンプルな料理だからこそ、とろける甘さと濃厚な旨みが際立ちます。

歴史溢れる常磐館でも下仁田グルメを提供している
また、下仁田の冬を代表する味覚として「下仁田葱すき焼き」も欠かせません。町内の常磐館、下仁田館、鍋屋、安兵衛などで提供されており、火を通した下仁田ねぎは割下と溶け合いながら驚くほど甘く変化します。

下仁田ねぎをはじめ地元産の食材で味わう「下仁田葱すき焼き」
一口ごとに広がる深い旨みは、旬の時期だからこそ味わえる特別な体験です。
畑で収穫し、生産者の話を聞き、町の歴史を知り、そして現地で味わう。
それは単なる食事ではありません。
食を通して土地を知り、人を知り、文化を知る旅。
それこそが、本物のガストロノミー体験なのです。
しもにたキッチン まるも屋
おわりに
下仁田では、冬が近づくとこんな会話が聞こえてきます。
「今年は、もう出たかい?」
それは単なる旬の知らせではなく、長い歳月をかけて育てられた下仁田ねぎとの再会を待ちわびる、人々の季節の挨拶です。
その背景には、この土地の風土、生産者の技、そして幾世代にもわたって受け継がれてきた歴史があります。
収穫し、味わい、人と出会う。
下仁田ねぎをめぐる旅はこの土地の歴史や文化、人々の暮らしに触れ、その価値を五感で感じる時間です。
東京から約2時間。
その先に、ここでしか出会えない時間が待っています。
「究極のねぎ」が待つ下仁田へ、足を運んでみませんか。
インフォメーション
<下仁田ねぎ収穫体験申し込み・お問い合わせ先>
一般社団法人下仁田町観光協会
住所:群馬県甘楽郡下仁田町大字馬山3766-11
電話:0274-67-7500
FAX:0274-67-7501
受付時間:9:00〜16:00
MAIL:dmoshimonita@icloud.com
詳細:https://www.shimonita.jp/event/jp/832
観光ぐんま編集室