高崎で花の共演!「寒ボタンと西洋シャクヤク園」【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
高崎市乗附町の隠れた花の名園
高崎市乗附町にある「寒ボタンと西洋シャクヤク園」は、2020年4月にオープンした専門の観光農園です。静かな丘の上にあり、園内にはゆったりとした時間が流れています。
この園の最大の魅力は、季節ごとに違う珍しい花を楽しめる点です。早春にはボタンや西洋シャクヤク、初冬には寒ボタンが咲き誇り、定番のお花見とは一味違う景色が広がります。また、景色の良さも抜群で、園内からは高崎のシンボル・白衣大観音の後ろ姿が見えるほか、秋の澄んだ日には遠く茨城県の筑波山まで見渡せるそうです。
じっくり撮影を楽しみたい写真好きにもぴったりのスポットで、園主夫妻が丹精込めて育てた花々が優しく迎えてくれます。

<分かりやすい看板がお出迎えしてくれます>
「寒ぼたんと西洋シャクヤク園」への公式ルートは、少林山通りから「群馬県立高崎特別支援学校」へと上るルートです。学校へ向かう手前約200m付近に案内看板がありますので、そこを左に曲がります。位置関係としては、高崎市の有名スポット「鼻高展望花の丘」の手前にあると意識するとよいでしょう。時期が合えば、2つのスポットをあわせて巡る「花のハシゴ」を楽しむのもおすすめです。
山田さん夫妻の情熱と歩み
<美しい大輪を支える山田さん夫妻>
この園を夫婦で切り盛りしているのが山田さん夫妻です。もともと野菜農家だった園主の山田さんですが、東日本大震災による原発事故の風評被害に遭い、67歳で野菜作りを断念せざるを得なくなりました。
そんな失意の中、ふと思い出したのが、若い頃に夫婦で山形を旅行した際に出会った「雪の中でわらぼっちを被って咲く、真っ赤なボタン」の姿でした。「あの花は綺麗だったなぁ…」と時々思い出していた山田さんは、野菜作りを辞めた際、「そうだ、あの花を手に入れて自分で楽しもう」と考えたのです。
それが、すべての始まりでした。娘さんの協力でネット検索し、ボタンの生産量日本一を誇る島根県の生産者に辿り着いたものの、未経験かつ67歳という年齢から、当初は専門家に「始めるのが30年遅い」と諭されてしまいます。
しかし、山田さんの挑戦はそこから本格的に始まります。当時、正月用の促成栽培が主流になる一方で、伝統的な寒ボタンは生産者が枯らしてしまっている現状を知ると、「それなら自分が集めて、みんなに見てもらおう」と決意が膨らんでいったのです。
山田さんは島根だけでなく、生産量2位の新潟県へも自ら何度も足を運び、現地で粘り強く交渉を重ねながら、自分の足で希少な品種を一つひとつ集めて回りました。「30年遅い」と言われながらも、自ら産地を飛び回って集めた山田さんの並外れた行動力とその熱意は、やがて島根の専門家や周囲の人々にも認められるようになりました。
そうして苦労して集めた苗を育てる日々は、除草剤を一切使わず、夏場の過酷な草むしりもすべて手作業で行うなど、一株一株に愛情を注ぐ地道なものでした。
ようやく2020年にオープンを迎えた直後、今度はコロナ禍が襲います。当時は1ヶ月の来園者がわずか50人ほどという非常に苦しい状況が続き、美しく咲いた花を自分たちの手で摘み取る作業は「涙が出るほど辛かった」と振り返ります。それでも、いくつもの逆境を夫婦で支え合いながら乗り越え、今日まで花と真摯に向き合い続けています。
二季咲きのボタン
<早春の光を浴びて艶やかに咲き誇る「寒ボタン」。春と初冬に花開く珍しい二季咲き品種です。 写真提供:山田さん夫妻>
春の陽気の中で艶やかな大輪を咲かせるのは、実は「寒ボタン」です。ボタンの中には、早春と初冬の年2回花を咲かせる「二季咲き(にきざき)」という珍しい性質を持つ品種があります。こちらの園ではその性質を最大限に活かしており、同じ株の寒ボタンが紡ぎ出す美しい姿を、春と冬、年に2度も贅沢に楽しむことができるのです。
春の艶やかな姿もさることながら、冬の厳しい寒さの中で見せる凛とした表情こそが、この園の真骨頂です。非常に耐寒性が強い寒ボタンは、冬になると赤く焼けた葉の合間から健気に花を咲かせます。
雪や霜から花を守る「わらぼっち(わら囲い)」を被せられた姿は冬の風物詩であり、園主の山田さんがかつて山形で心を奪われた、まさにあの原風景そのもの。冬の静寂の中で力強く咲くその姿もまた、この園の大きな魅力です。

<わらぼっちに包まれている「寒ボタン」。葉の合間に咲く力強い大輪 写真提供:山田さん夫妻>
現在、園内には約40種類・2000株もの寒ボタンが栽培されています。これほどの規模と品種の多さは珍しく、まさに圧巻。その中でも、園主が強い思い入れを持つ「戸川寒(とがわかん)」の赤く力強い花の姿は必見です。

<厳しい寒さに耐えて咲く「戸川寒(とがわかん)」 写真提供:山田さん夫妻>
この圧倒的なスケールを支えているのが、栽培技術と丁寧な管理です。ボタン栽培では、頑丈な「芍薬(シャクヤク)の根」にボタンの枝をくっつける「接ぎ木(つぎき)」という技法が一般的によく使われています。
しかし、ここからの管理が一筋縄ではいきません。春先に土台の芍薬の芽が勢いよく出てしまうため、放置するとボタンが栄養を取られて枯れてしまいます。そのため、2000株のすべてから丁寧に芽を取り除く作業が欠かせないのです。
基本に忠実でありながら、これほど広大な園内すべてに細やかな手間暇をかけ続けるのは並大抵のことではありません。園主の長年の経験と惜しみない愛情があるからこそ、私たちはこの優雅な姿に出会うことができます。
色鮮やかな西洋シャクヤクの魅力
バラのような甘い香りと、ボリュームのある豪華な花姿が魅力の「西洋シャクヤク」。多年草で葉に光沢があり、切れ込みが少ないのが特徴です。木に咲くボタンに比べてどこか柔らかい印象があり、色や形のバリエーションが非常に豊富なため、訪れるたびに違う表情を見せてくれるのが大きな魅力です。

<バラのような甘い香りと豪華な花姿、可憐に彩る「西洋シャクヤク」>
こちらの園内には、現在約75種・1000株もの西洋シャクヤクが植えられており、取材時はちょうど見頃を迎えていました。赤、白、ピンクなど色とりどりの花が咲き誇る景色は、園内をパッと華やかに彩っています。

<気品あふれる純白の花びらが美しい「白のシャクヤク」>

<ちょうど見頃を迎えた、赤・白・ピンクのカラフルな全体風景>
中には、シャクヤクとボタンを交配した珍しい黄色いハイブリッド品種や、真っ赤な大輪が美しい「ヘンリーボックストーン」など、カメラを向けたくなる人気品種も目を楽しませてくれます。大きく開いた花びらの重なりがとても美しいので、マクロレンズでぐっと寄って、その繊細な質感を撮影してみるのもおすすめです。

<ひときわ目を引く、鮮やかで情熱的な「赤のシャクヤク」>
この西洋シャクヤクが持つ草本らしい可憐さは、園内のもう一つの主役である、寒ボタンの凛とした力強さとも見事に調和します。お互いの美しさを引き立て合う贅沢な空間を歩きながら、その華やかな香りと色彩をぜひ五感で楽しんでみてください。
園主・山田さんの想い
園主の山田さんは、来園者に向けて「約40種類の寒ボタンと75種類の西洋シャクヤクの中から、自分好みの花を見つけて楽しんでほしい」と温かいメッセージをくれました。
山田さんが特に嬉しいのは、作業中にふと聞こえてくる、来園者の自然な「綺麗」という声だそうです。その純粋な感動の声こそが、毎日の作業のやりがいであり、一番の励みになっていると話してくれました。
こうした言葉からは、ただ花を育てるだけでなく、訪れる一人ひとりが自分だけの特別な花に出会い、感動を持ち帰ってほしいという、山田さんの優しい想いがまっすぐに伝わってきました。
高崎市乗附町の「寒ボタンと西洋シャクヤク園」は、美しい花と園主夫妻の情熱が感じられる心温まる花園です。鼻高展望花の丘近くでアクセスも良く、春の特別なお花見にぴったり。ぜひ訪れて、自分だけのお気に入りの花を見つけてみてください。
インフォメーション
寒ボタンと西洋シャクヤク園
住所:高崎市乗附町3447-2
電話:090-2240-0090(山田さんの携帯)
定休日:雨天休園
料金:大人500円 / 子供300円
駐車場:無料(30台駐車可能)
<営業情報・開園スケジュール>
【春シーズン】
開園時間: 10:00~17:00
見頃の目安:
寒ボタン(早春):例年4月下旬〜5月中旬
西洋シャクヤク:例年5月上旬〜6月上旬
【冬シーズン】
開園時間: 10:00~16:00
見頃の目安:
寒ボタン(初冬):例年10月上旬〜12月上旬
※各シーズンとも「花のシーズンが終わるまで」の開園となります。
※気象条件により開花時期が前後することがあります。
タマル