製糸業で栄えた街、前橋で生糸の座繰り体験【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

生糸の座繰り体験

更新日: 2026年03月13日

生糸で栄えた街、前橋。上毛かるたでも「県都前橋生糸(いと)のまち」と謳われています。

 

今回は、202511月に前橋市に開設されたばかりの体験施設「前橋糸づくり体験センター・八幡山製糸」での糸づくり体験と、遺伝子組換え蚕がつくった繭「GFPぐんま200」をご紹介します。

繭から糸をたぐり寄せる、座繰り体験

繭から糸をたぐり寄せる

<これが座繰り 複数の繭から糸を繰っていきます>

 

お話を聞かせてくださったのは、前橋糸づくり体験センター・八幡山製糸の枦勝(はしまさる)さん。「最近では座繰りという言葉を知らない人も多くなりました」という枦さん。小学生の社会科見学などを積極的に受け入れ、生糸の歴史を、そして前橋の歴史を伝えることにも前向きです。

 

「糸をとりやすくするために、繭を長い時間煮てしまうと独特のにおいが出るときがあります。しかし、この施設では、その匂いが発生しないように工夫しています」ということでしたが、実際に匂いがまったくありませんでした。「どんな匂いかわからないから、匂いがしない工夫がどれだけすごいことか伝わらない」ほどに、養蚕・製糸農家が減少しているそうです。最近では養蚕のみを実施し、製糸をしない農家がほとんどです。さらに、平成元年に全国で57,000戸あった養蚕農家は、令和5年には146戸まで減少しているとのこと。繭を煮る匂いを知らない人が増えているのも頷けます。

 

<これが座繰り機裏側 歯車がうまくかみ合い、糸を巻き取ります>

繭は蚕の家。繭の中でさなぎに成長します

これが繭

<これが繭 繭1個で1500メートルの糸がとれることも> 

 

繭の実物を見たことがない方も多いのではないでしょうか。繭の周りにある毛羽は、蚕が繭を作る際に最初に吐き出す糸で、工事現場でいうところの足場のようなもの。この毛羽を処理することで、糸がとれやすくなり、糸口も探しやすくなります。また、繭が入っているお湯には、化粧水にも使われる「セシリン」という美容成分が溶け出すため、美肌効果があると人気だとか。体験者の中には、このお湯の持ち帰りを希望される方も。「ぜひお持ち帰り下さい」と、枦さん。

 

鍋の中に繭が10個。この繭から取り出した糸10本をぎゅっとまとめて1本の糸にします。この糸が細いのに意外と強くてびっくり。1個の繭から取れる糸は最大で1,500メートルほどにもなるそうです。

 

<これが糸を巻き取った繭 黒く見えるのがさなぎ>

繭から巻き取った糸は、100%シルクです。

繰りだした生糸

<これが繰りだした生糸 目の前は八幡山古墳> 

 

繰りだした生糸を取り出し木枠を外すと、木枠そのままの形が残りました。パジャマのズボンを脱ぎっぱなしにした、足をすぽっと入れるだけの形で残っているような感じ。思いがけずしっかりとした硬い手触りです。枦さんのお勧めは、向かいの八幡山古墳を背に写真を撮ること。天気の良い日には、白い生糸がとても映えるそうです。

 

しかもこの生糸、持ち帰りいただくことができます。使い道として人気があるのは、ランチョンマットやランプシェード。シルク100%の、しかも自分が繰りだした生糸のランプシェードなんて、素敵じゃないですか。

 

<これが出来上がった生糸 ランプシェードに最適>

蛍光繭「GPFぐんま200」。生糸の未来を切り開けるか?

右がGFPぐんま200の生糸

<これがGFPぐんま200の生糸 左は通常の生糸 >

 

こちらの写真は、蛍光繭「GFPぐんま200」から繰り出した生糸です。青色発光ダイオード(LED)の光を当てると発光する、遺伝子組換え繭から繰糸した生糸です。平成29年、世界で初めて前橋市の農家での遺伝子組換え蚕の飼育が実施されました。現代アートで使用され、デザイナーがウエディングドレスに使用したことで広く知られましたが、染色不要のカラーシルクとして期待されています。一般的に流通するまでにはまだ時間がかかりそうですが、ワンピースやストール、インテリア用品などの試作品が作られていますので、近い将来、手にしているかもしれません。新しい素材として期待されている蛍光シルクを、自分の手で繰りだしてみませんか?

 

GFPぐんま200 光を当てない状態>

子どもでも座繰りを楽しめるよう、歯ブラシ・たわしなどを使用しています

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<これが糸口 歯ブラシでひっかけて糸口を探します>

 

生糸づくり体験には、3つのコースがあります。

 

①通常の繭から生糸を作る体験

②蛍光繭から生糸を作る体験

③蚕を生かしたまま生糸を作る体験

 

特に3の蚕を生かしたまま生糸を作るというのは、蚕の命を守るために特殊な処理を施した繭を使って糸を巻き取っていくそうです。5月から11月までであれば、希望者は蚕がさなぎへ、蛾へと成長していく姿も見ることができるとのこと。

 

「夏休みの自由研究のためとか、子どもの頃の懐かしさを思い出したいとか、創作活動をやってみたいとか、少しでも興味を持ったら店舗に寄ってほしい」と枦さんは話します。

 

こちらの施設では、子どもでも手軽に楽しめるようにいろいろな工夫がされていました。糸口を探すのに歯ブラシを使う、余分な糸を絡めとるのにたわしを使うなど、どの家庭にも置いてあるものを使うことで、座繰りが身近なものに感じられます。

 

<これが店舗外観 八幡山古墳の目の前です>

 

「前橋の養蚕と生糸を守り、大事な文化を次世代につなぎたい」そんな思いから、こちらの施設を開設したという枦さん。店内には近所の方から譲っていただいたという絹の着物や座繰り機が展示されていました。

 

遺伝子組換え蚕など時代に合わせて変化していくと同時に、文化を継承していくという蚕糸業。いくつかのコースがありますが、60分程度でできる体験が多いので気軽に来てほしいとのこと。向かいには八幡山古墳もありますし、古の気分に浸るのもいいかもしれません。

インフォメーション

前橋糸づくり体験センター・八幡山製糸

 

住所:群馬県前橋市朝倉町四丁目7-18

電話:027-888-8853

営業時間:木・金 13:00~19:00

        土・日 10:30~12:00、13:00~19:00 

料金:金額は税込

【繭から糸をつくる】基本コース 1700円/本格コース 3800円 

【蚕を守って糸をつくる】(期間限定)基本コース 3500円 /本格コース 7700円

【蛍光繭から光る糸をつくる】基本コース 3500円 /本格コース 7700円

 

HPhttps://itozukuri-hachimanyama.jimdosite.com

ぐんま観光県民ライター ぐん記者

内藤由美

雪国から引っ越してきて2年。天気のよさに感動しています。