江戸時代中期頃から続く医家の住宅 重田家住宅を訪ねる 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

重田家住宅(診療室)

更新日: 2024年10月18日

「小泉重田の門をくぐるだけで病気が治る」。地域の人々からそう親しまれた医院が、玉村町小泉地区にありました。家伝薬はよく効くといわれ、「群馬の医師の三家」の一つに数えられていたほど。そんな医家の暮らしを知ることができる歴史的建造物群、重田家住宅を訪ねました。

広い敷地に歴史的な建物 美しい庭園も見どころ

重田家住宅(外観)

重田家住宅の主屋

 

重田家住宅は利根川からほど近い、のどかな住宅街にあります。重厚感ある表門をくぐると木々が生い茂る庭園が広がり、その先に二階建ての大きな主屋が見えます。重田家は江戸時代中期頃から代々医師を家業としており、この場所では昭和25年3月まで開業していました。主屋は明治16年に住宅兼医院として建てられたもので、広い敷地内にはほかにも、穀藏や井戸屋形があり、7棟が国の登録有形文化財に登録されています。令和3年に重田家より建造物と敷地一帯が玉村町に寄贈され、開館日に無料で見学できるようになりました。

地域の人々の憩いの場にも 気軽に立ち寄って交流を

地域おこし協力隊

「気軽に立ち寄ってほしい」と話す冨沢さん

 

表門に続き、主屋中央の玄関も風格があります。少しどきどきしながらガラス戸を開けると、玉村町地域おこし協力隊の冨沢のぞみさんが笑顔で出迎えてくれました。この日は冨沢さんが来場者にコーヒーなどを無料で振る舞う「フリーコーヒー営業日」でした。靴を脱いで上がり、先客と共にダイニングテーブルでコーヒーをいただきます。来場者の交流の場になるようにと冨沢さんが始めたもので、地域の人たちでにぎわっていました。会話をしているうちに、ちょっとした緊張感もほぐれ、いよいよ室内の見学に向かいます。

説明を聞きながら見学 所々に医院の面影

重田家住宅(客間)

説明を聞きながら見学

 

開館日は玉村町の職員が滞在し、室内外を案内してくれます。まずは客間で、意匠の凝った欄間や床の間を、説明を聞きながらじっくりと拝見。建築当初は1階に診察室や薬局がありましたが、平成になり台所や洋室に変えており、広々とした生活空間が広がります。続いて、渡り廊下でつながる西の蔵へ。薬品用のレトロな瓶や薬袋が保管してあり、医院の面影を感じます。興味深かったのは、結核退治絵解というポスター。医学者の北里柴三郎の監修によって大正初期に発行されたもので、今でも通じる感染予防の大切さを紹介しています。

 

結核の予防、治療を啓発するためのポスター

診察室を再現 昔の医療器具もずらり

重田家住宅(診療室)

かつての診察室を復元

 

2階には、かつて1階にあった診察室を復元した展示スペースがあります。聴診器や注射器、貴重な医学書が並ぶほか、芝根村 で初めて開通した電話機などもあり、過去が蘇ったような場所となっています。診察室に身を置き、「地域の医療を支える重要なこの場で、様々な出来事があったのだろうな」としみじみと感じました。

また、子供と学生向けのコーナーもありました。白衣を着て聴診器で心臓の音を聞くお医者さん体験や、人体模型パズルを楽しむことができます。

多種多様なイベントを開催

重田家住宅(お月見会)

お月見会での尺八の演奏

 

重田家住宅ではさまざまなイベントも開催しています。年間を通して、 マルシェ、演奏会、健康講座などがあり、誰でも気軽に参加することができます。毎月第4土曜日とイベント開催時には、着物と袴の着付け体験(予約制、500円)もできるので、風情な建物を背景に記念撮影するのもおすすめです。

 

歴史的な建物はもちろんですが、そこに並ぶ昔の医療器具や生活道具も見応えがありました。照明のスイッチひとつも面白く、「ほぉー」と感心しきりです。また、重田家住宅では新しい企画が続々登場しています。歴史を学ぶ場として、人々の交流の場として、今後の展開に期待したいです。

 

インフォメーション

重田家住宅

住所:群馬県佐波郡玉村町大字小泉42
電話:0270-30-6180(玉村町教育委員会生涯学習課文化財係)
営業時間:10:00~16:00
開館日:水曜・木曜・金曜、第4土曜、イベント開催時
定休日:土曜・日曜・月曜・火曜、祝日、年末年始
料金:無料
※フリーコーヒーは金曜日10:00~12:00(開催日は要確認)

 

ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)

関口美智子

群馬で生まれ育ち、ずっと群馬在住。群馬の山並みを毎日眺めて癒されています。趣味は温泉めぐりと、筋トレ、スイミング、ランニングなど体を動かすこと。二児の母で、子供たちと山登りに行くことが楽しみ!