誰もが一度は見たことのある、赤と青のカスタネット 実はみなかみ生まれ!?【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

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更新日: 2024年04月10日

「群馬県の魅力をぐんま観光県民ライター(ぐん記者)がお伝えします!」

ほとんどの皆様が一度は目にしたことのある、あの赤と青のカスタネット。実は、みなかみ町にある自家製工房で、すべて手作りだったのを知っていますか?カスタネットがどのように作られているかそのルーツに触れ、話を伺いながら世界に一つだけのカスタネット作りをしてみませんか。

みなかみから全国シェア約8割へ普及していったカスタネット

「昭和22年頃だったかな、最初はこのカスタネットがこんなにも必要とされるなんて思ってもなかったよ」と語り始める冨澤 健一(とみざわ けんいち)さん。お父様の冨澤 捷(とみざわ すぐる)さんが創業した株式会社プラス白桜社にて、輪島塗と同じ技法でろくろのように木を削ってカスタネットを1つ1つ作っていたそうです。冨澤さんが小学6年生の頃までお父様が主導でカスタネットの作成をしており、同時に新聞広告を打ってカスタネットを宣伝していたといいます。すると、学研やヤマハといった教育サービスを手掛ける企業6社より、学用品「教育用カスタネット」として採用され、全国の小売店へと普及していったそうです。

自身の目と力具合、指先の感覚を頼りに木を削る冨澤さん

急激に増えたカスタネット需要 ピーク時は230万個を手作り

「教育用カスタネット」の需要が高まり、当時みなかみ町の製材所であった場所を急遽いただくことになったそうです。これには冨澤さんも「カスタネット工場なんてないんだもん。木と場所とそれが作れそうな機械があれば…」と笑いながら語ってくれました。最盛期には、倉渕村、足利市等、同業の知人にお願いし、4軒6人で教育用カスタネットの制作に当たったそうです。ピーク時は230万個のカスタネットを手作りしていたというお話には、私もさすがに「そんなにですか!?」と驚きを隠せず伺うと、「だってカスタネット工場なんてないんだもん」と笑顔でカスタネットの秘密を教えてくれました。

赤と青に塗られた教育用カスタネット。どのように1つ1つ手作りで作られていたのでしょうか。(写真提供元:一般社団法人みなかみ町観光協会)

 

あのカスタネットはどのように作られているのか

本格的にカスタネット作りに携わり始めた冨澤さんは、材料となるヤマザクラ、カエデ、ブナの木によって音や出来上がりの質感が違うことに気付いたそうです。そこで私は「カスタネットは何で赤と青の色なんですか?」と聞くと、「特に深い意味はないんだけど、学用品として子供の男女の振り分けがその都度計算できないから、男女共用で赤と青に塗ったんだよ」と教えてくれました。更に「このくぼみも特に深い意味はなくて持ちやすいでしょ。音には関係ないんだ」というネタのようなお話に、こちらも笑いをこらえられずに思わず笑ってしまいました。

 

木の1枚板からカスタネットの形へと削り上げる

削り上げたカスタネットを写真のように手作り塗装棒へ設置する

塗装棒に設置したカスタネットを筒状のオリジナル塗装管に入った赤と青の塗料へ漬け込む

塗装後、持ち上げ、高速回転させることで不必要な塗料を飛ばし、写真のように吊るし3時間乾燥させ、クリアな塗料を上塗りして完成する

世界に一つだけのカスタネット作り

当時の産業革命を感じさせる戦後の製材所は、冨澤さんのアイデアと発明が詰まったオリジナルの機械が並ぶ、手作り感満載な「カスタネット工房」へと姿を変えました。現在は大衆向けではなく、個人旅行や家族旅行単位での体験が可能で、体験には事前の問い合わせが必要となります。カスタネットがどのように作られているかのルーツに触れ、木の板から削る作業、形づくり、やすり掛け、絵付け、紐通しと一通りのカスタネット作りを体験できます。楽しいお話を伺いながら、世界に一つだけのカスタネット作りをしてみませんか。

カスタネット作り体験を終えて記念撮影

カスタネット作りを通して、木に触れる楽しさを感じて欲しい

今回、カスタネット作り体験を通じて私が感じたことは、創業当時、性能のいい機械がない時代からすべて手作りでカスタネット作りを行い、どうやったら効率良くたくさんのカスタネットを作ることが出来るかを考えて、製材所の機械を部品集めから調整まで、冨澤さんがその都度アレンジしてオリジナルで作り上げていったことを知りました。話しているときの富澤さんの穏やかな表情から、機械にも深い愛着があることが分かりました。私もたくさんのお話を聞けてとても楽しかったです。また「木から作ることに携わって初めて音の違いがあると知ることが出来た」という言葉に、私たちがつい忘れてしまいそうな、「自ら考える力」「物への愛着」「ものづくりの楽しさ」をカスタネット作りを通して感じることが出来ました。

木を削る部品も自ら作り上げたという冨澤さん

まとめ

旅は教養。新しいことや普段味わえない時間や体験をすることも旅の醍醐味であると私は思います。カスタネット作りを通じて、冨澤さんの人間味あふれる職人技に触れ、カスタネットがどのように作られているかのルーツを知り、ものづくりの楽しさを感じることができました。冨澤さんの楽しいお話を伺いながら、世界に一つだけのカスタネット作りを皆さんもぜひ、体験してみてください。

インフォメーション

「カスタネット工房」

住所:群馬県利根郡みなかみ町

電話:0278-64-0338 090-3318-4587

営業時間:要お問い合わせ

定休日:不定休

料金:無料

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岡村竜輝

株式会社旅館たにがわ 別邸仙寿庵 人事管理・営業・フロントリーダー ぐんま観光リーダー塾5期生 みなかみ町まちづくり協議会 月夜野支部 生まれ育ちもみなかみで過ごし、現在では温泉旅館のフロントとして従事 仕事柄、ゴールデンルートよりもお客様が群馬・みなかみを旅し特別なお時間を過ごせるような情報をお届けいたします。