香りに誘われて、前橋中央通り商店街へ。群馬県唯一のお香専門店でとっておきに出会う【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
砂糖問屋からお香専門店へ
<かわいらしいまん丸のだるまさん>
引き戸を開けると、爽やかな香りがふわっと漂ってきました。気持ちがホッと落ち着くような歓迎に、安心感を覚えます。しばらくすると、中から奥様がやってきました。
香り処日野屋は、明治20年に砂糖問屋として始まり、平成16年にお香専門店に転換しました。お香の名店である京都の松栄堂の商品を群馬県でも販売したいと思ったそうで、本来なら松栄堂は新規取扱が難しい中で、「ここの奥さんなら」と認められて、取り扱っているのだそう。
奥様「(当時は)まだお香と線香の違いが分からなくて、お線香は仏壇に供えるものだと思われていました」
奥様はそう言って、あるお客様のエピソードを教えてくれました。その女性は亡くなった夫のためにお線香を焚きたかったのですが、一緒に暮らしている家族に、煙を理由に反対されていました。そんな女性のために、奥様は煙が出ないお線香をおすすめしたところ、喜ばれたそうです。すごくいい接客ですよね。

<店内はさまざまなお香で華やかです>
記憶と結びつく香り
<どんな香りがするのでしょうか?>
奥様「香りって五感の一つだから、記憶と結びつきますよね」
そう言って、今度は別のお客様のエピソードを教えてくれました。そのお客様は桜の香りを嗅いだら、「じいちゃんの葬式の時の香りだ」と懐かしがったそうです。香りは記憶と結びつきます。ふと嗅いだ香りで思い出す記憶もあります。しかし、お香の魅力はそれだけじゃありません。
私「お香は空気を改める感じがして好きなんです」
奥様「確かに、お香には邪気払いや死臭を消す役割もありますね」
私は仕事終わりにお香を焚いて、空気をリセットするのが好きなのですが、奥様も1日の終わりに焚くのが好きだそうです。お客様の中には掃除後にスッキリした状態で焚く方もいらっしゃるみたいです。

<かわいいうまのイラストを発見!>
奥様は一人一人、丁寧にお話を聞きながら、お香をおすすめしています。性別や年齢を元に、好きそうな香りを提案されているそうです。そのため、来店時にお香の知識がなくても、何も問題ありませんよ。
男性ならミントなどスッキリ系、女性はフローラルなど甘い系を好まれる傾向にあるそうです。同じ香りでも、メーカーによって香りに幅があります。好きな香り、好きなメーカーを探してみましょう。
一人一人、丁寧に
<渦巻のお香もありました>
奥様はどの質問をしても、「こういうお客様がいてね」と振り返っていて、私はどのエピソードにもほっこりしてしまい、すぐに奥様のファンになりました。
私「お客様は奥様に会いに来るんですね」
事情があり、「寂しい」と呟くお客様と1時間話すこともあるそう。このエピソードには納得してしまいました。なぜなら、私は香り処日野屋に取材前から訪れていたのですが、奥様の優しい接客が忘れられなくて、「ぜひ皆さんにご紹介したい!」と企画を立てたのです。私が思いの丈を伝えると、奥様は「ありがとうございます」と笑顔で仰っていました。

<どちらも素敵な香りです>
私「お店を長く続ける上で大切にしてることはありますか?」
そう聞いたのですが、それは愚問だったとすぐ気づきました。今までの質問のお答えに共通する、「一人一人と丁寧に接客したいです」を再度口にされました。しかし、少し後悔混じりで。
奥様「ゆっくり対応したいんですけど、できない時もあって、『申し訳なかったですね』と正直に言うことが大切ですね」
香り処日野屋は一度だけでなく、何度も通いたくなるお店です。ただの観光地でなく、まるで人付き合いしたくなるお店だなと感じました。実際に、お客様がお菓子を差し入れてくださるなど、人と人との交流があるそうです。私は胸を押さえながら、「いいですね…!」と染み入ってしまいました。
実際にお香を嗅いでみる
<三角のお香もありますよ>
奥様「香りは自分へのご褒美にもなります」
奥様は一番人気の「木蓮」を嗅がせてくださいました。火をつける前のお香からは、すっきり爽やかな香りがします。
私「お香って、火をつけると全く違う香りになりますよね」
奥様「お香は残り香を楽しむものだから」
私「やっぱり! 私もそう思っていました」
奥様「当たりじゃないですか!」

<試香品を嗅ぎ比べるのが楽しいです>
お香には「三種香」と言って、白檀(びゃくだん)・沈香(じんこう)・伽羅(きゃら)の3つの有名な香りがあります。その一つである「沈香」が奥様の好きな香りだそうで、お気に入りのメーカーのものを嗅がせていただきました。
火をつける前は爽やかなのに深みがあって、どこか静けさのある香りがします。実際に火をつけると、一般的なお香より煙臭さは少ない気がします。押し付けがましくなく、謙虚に空間を香り、まるで部屋をリセットしてくれるようです。
そして次は、松栄堂の「芳輪」です。火をつける前は、ツンと鼻腔をつく香りの中に、爽やかさがあります。実際に火をつけても、スンとした味わいに少し煙が混じったような、高級感ある空間に変わります。とても落ち着くので、簡単にリフレッシュすることができます。
香り処日野屋はどんなお店か。それは、まるでお香のように疲れをほぐしてくれる、とても温かい場所でした。取材で訪れたはずなのに、帰り道、なぜか元気になっている自分に気づきました。お香の香り、奥様の人柄。疲れた人を慰めてくれるような、愛おしいひと時。奥様がこれからもずっと、前橋中央通り商店街で待っていてくれますように。また必ず会いに行きますからね~!
インフォメーション
香り処日野屋
住所:群馬県前橋市千代田町2-12-1
電話:027-231-4088
営業時間:10:00~17:30
定休日:水曜(2026年4月から変更あり)
たかざわ