「ジャングルデリバリー」耕作放棄地から世界銀賞へ〜群馬が紡ぐオリーブの未来〜
更新日: 2025年11月19日
群馬県館林市で、資源循環型の自然農業に取り組む「ジャングルデリバリー」は“千年続く大地を育む”という理念のもと、完全無農薬でオリーブの栽培から製品づくりまで一貫して行っている農業ベンチャーです。耕作放棄地を蘇らせつつ“オリーブのすべてを活かす”という信念で作られるオリーブオイルやスキンケア製品は、世界からも高く評価されています。
今回は、取材を通して見えた「ジャングルデリバリー」の挑戦や、地域とともに作る循環型農業の現場、そしてこだわり抜かれた製品の魅力もご紹介します。
農業と環境への思いが詰まった事業と挑戦
かつての耕作放棄地で飼育されるヤギたち
館林市内に本社を構える「ジャングルデリバリー」は、オリーブを中心に資源循環型の農業を展開しながら、地域の耕作放棄地問題に向き合っています。
手入れをされなくなった農地は年々増え続けており、この現状を見過ごすわけにはいかないと、地域と深く関わりながら、オリーブやシークワーサーの栽培、そして環境汚染にもなる蓮の葉の商品化に取り組んでいます。
三田英彦社長にお話を伺うと、
「SDGsのその先にある“地域と人の未来を育んでいきたい!」という思いと、「農産物の価格は市場が決めるため利益が出にくく、畑が放置されてしまうこともある。このような仕組みを変え、農業でもきちんと利益を生み出していきたい」
と農業などの現状についても語ってくださいました。
耕作放棄地を地域資源として活かすとともに、地域全体が潤う仕組みもつくるという視点で、地域の方々とともに常にチャレンジし続けています。
文具屋さんから農業ベンチャーへのあゆみ
ヤギと戯れる三田社長
ジャングルデリバリーの社長を務める三田英彦社長は、『マツコの知らない世界』にも登場した老舗文具店「三田三昭堂」の三代目社長を務める傍ら、群馬イノベーションスクールに参加し、2017年7月に二足のわらじで、農業ベンチャーである「ジャングルデリバリー」を立ち上げました。
・2018年春:耕作放棄地で多品種樹木を栽培、街路樹の緑化事業も開始
・2019年:「オリーブの森」でヤギの飼育をスタート
・2021年:オリーブ有機JAS認証を取得
・2022年:群馬をオリーブ産地にするためクラウドファンディング実施
・2024年:蓮の葉を使ったお茶作りを開始、新聞でも紹介
・2025年:ペットボトル500mlタイプのオリーブティーを発売
一つひとつの挑戦を糧にしながら、ジャングルデリバリーは少しずつ根を広げ、いまの姿へと成長してきたのです。
安心・安全にこだわる「有機JAS栽培」
有機JAS規格で作られた安心安全の食品
収穫したオリーブは、鮮度を保つためにできるだけ早く搾油。これが、最高品質のオリーブオイルを生み出す秘訣です。
エキスラバージョンオイルの定義は酸化度 0.8%以下ですが、日本にはその定義はなく、品質に関係なく、オリーブオイルと総称されています。ジャングルデリバリーではきちんとエビデンスを取り、酸化度を重視し、収穫から搾油までを短時間に行うことが要となります。
国内には価格の安い製品も多く出回っており、安全性が確かでないものも少なくありません。だからこそ、丁寧に作り上げた“本物”の良さを伝えたい!その信念こそが、ジャングルデリバリーの品質に込められています。
有機JAS栽培が生んだロンドン国際品評会での銀賞受賞
ロンドンで受賞したYuzuフレーバーオリ―ブオイル 写真提供:ジャングルデリバリー
「人の体は食べたものでできている。だからこそ、本当に良いものを届けたい」
三田社長のこの思いが、農薬や化学肥料を使わず土づくりから徹底管理するオリーブ栽培につながっています。収穫後すぐに搾油することで酸化度管理を徹底。本物の品質を届ける姿勢が、認められ、日本のオリーブ農家として初めて「有機JAS認定」を取得しました。

ロンドン国際品評会での受賞の証 写真提供:ジャングルデリバリー
こうした日々の取り組みと努力が実を結び、2025年6月の世界的に権威のあるオリーブオイルの品評会「LondonInternationalOliveOilCompetition2025(ロンドン国際品評会)」で、ジャングルデリバリーの「YUZUオリーブオイル」がインフューズドオリーブオイル部門で「シルバープライズ(銀賞)」を獲得。世界33カ国から約1,000点が出品される中、日本のオリーブとして初めての受賞という快挙を成し遂げたのです。
オリーブで資源循環型の自然農業を地域と展開
コーヒー豆カスと籾殻で作るエコロジーな肥料
オリーブを選んだのは育てやすく、実や葉、枝まで無駄なく活用できること。館林の気候は寒暖差と日射量が適しており、加工することで食品や化粧品として私たちの暮らしを豊かにしてくれるという理由から。
また、加工後もゴミにならないのも大きな魅力で、搾りカスは動物の飼料として使われます。前橋市で内閣総理大臣賞を受賞した須藤牧場でも、この飼料で牛を大切に育てられ、その乳からとれたチーズは、前橋市のイタリアンレストラン「ペスカ」でピザなどに使われています。
地域のスターバックスと連携し、コーヒー豆カスと籾殻とミックスし時間をかけて飼料へ転換。これをオリーブの肥料や家畜の飼料として再利用しています。
街路樹として植えられたオリーブは景観美化にも繋がり、地域と共存する持続可能な農業の実例にもなっています。
オリーブとその健康
ツヤツヤとしたオリーブの実
オリーブが健康にいいことはご存じの方も多いと思いますが、どのような植物でどんな健康効果があるのか、簡単にご説明したいと思います。
モクセイ科オリーブ属の常緑木で、世界におよそ1,600種類あり、5月下旬や6月初旬に米粒ぐらいの白い花を咲かせます。自家受粉が難しく、同じ DNAの花粉には反応を示さないという気難しい側面もありますが、10月に2cmほどの実をつけ、紅葉の頃に熟成し10月後半から11月にかけて収穫されます。
果実にはカルシウム、カリウム、ビタミンA・E、ポリフェノール、オレイン酸などが含まれ、動脈硬化予防や血糖値調整、美容、老化防止に効果的。葉にも抗菌・抗酸化作用があり、スーパーフードとして注目されています。
蓮の葉で環境にやさしい製品づくり
乾燥させお茶になる蓮の葉 写真提供:ジャングルデリバリー
館林の蓮沼では、枯れた花や葉がヘドロとなり環境汚染につながります。そこで生まれたのが「蓮ほうじ茶」。収穫後の葉をすぐに蒸して揉み、乾燥させることで、食物繊維やカルシウム、ポリフェノールが豊富な健康茶へと生まれ変わります。
シークワーサー栽培で育む地域とのつながり
たわわに実るシークワーサー
館林市と沖縄県名護市の友好都市提携をきっかけに植樹されたシークワーサーですが植樹に携わった方々が世話を続けられなくなったために三田社長が畑を引き継ぎ、現在は50本中20本にオーナー制度(収穫権)を取り入れ、地元企業や団体と協力しながら管理されています。
ジャングルデリバリーの現場を訪ねる
ジャングルデリバリー誕生の地
館林市内に点在する「ジャングルデリバリー」の拠点を、実際に案内していただきました。
まず訪れたのは、7年前に耕作放棄地を掘り起こし、オリーブの有機栽培をスタートした場所。敷地内にはツリーハウスがあり、除草のためにヤギたちがのんびりと草を食む姿もみられます。

搾油用に栽培されているオリーブの木
こちらは植樹から6年が経過したオリーブ畑。規則正しく並んだオリーブの木々が美しく、畑の中では一番景色の良い場所とのこと。訪れた日は地域の農家さんが草刈りをしてくれていました。

整然と並ぶ茶畑のオリーブ
低木仕立てのオリーブが並ぶ「オリーブ茶畑」。緑茶畑のような風景は、自然のリズムと人の手が調和した美しい景観を織りなします。

観葉植物にもピッタリな苗木
ビニールハウスでは、販売用のオリーブ苗木が栽培されていました。日当たりがよければ、家の中でも観葉植物として育てることができるそうです。鉢の大きさによって木の大きさが決まるため、盆栽のように小さく育てることも、時間をかけて大木に育てることもできます。

館林駅前の風景
館林市内各地にはオリーブの街路樹が植えられています。正田醤油本社正面や館林駅の西口、スターバックスのテラス前にもみられ、街の景観づくりに一役買っています。

スターバックスコーヒー館林店朝日店のテラス席
短めにカットされたオリーブは垣根にもピッタリ!

おしゃれな佇まいの搾油所
イタリアンレストランの跡地を活用したこちらが搾油所。イタリア製のマシンは香川や九州などオリーブ栽培の盛んな地域でも使われているのだそうです。

イタリア制の搾油機
収穫したてのオリーブをエキストラバージンオイルに加工し、高品質な製品づくりを支えています。

街の一角にあるシークワーサー畑
黄緑色の実が枝いっぱいに実るシークワーサー畑。収穫期は10月中旬ごろで、太陽の光を浴びて輝く果実の姿がとても印象的でした。
現場に立つと、循環型農業の仕組みと地域との関わりを肌で感じることができました。
商品ラインナップと販売場所
最高品質のクラフトオリーブオイル
ここからは、ジャングルデリバリーの商品ラインナップをご紹介。世界に誇れる品質を、わかる人に届けたい!その思いが一つひとつに込められています。
ゆずやシークワーサー、レモン、梅など、10種類の風味があるエキストラバージンクラフトオリーブオイルは、サラダから炒め物まで様々な用途に使えます。

オリーブオイル美容液
オリーブオイルとビタミンEだけを配合した美容液は、ベタつかず付け心地や伸びも抜群。お肌にすっと馴染んでいきます。

ペットボトルのオリーブティー
ペットボトルなので、いつでもどこでも飲める!スッキリした味わいのオリーブティー。

オリーブほうじ茶
香ばしい香りと深い味わいをティーパックなので、一杯ごとに味わえる。

オリーブ抹茶
お湯に溶かしてお茶や、パウンドケーキなどに加えても楽しめる、鉄分やビタミンEも豊富なオリーブ抹茶。

蓮ほうじ茶
コクがありスモーキーな味わいがクセになる蓮ほうじ茶は、食物繊維やカルシウム、ポリフェノールがたっぷりと含まれています。
〜販売場所〜
群馬県、東京都内の下記ショップで購入できます。(店舗によって取り扱い商品が異なります。)
【館林市】
・三田三昭堂 [オリーブオイル10種・オリーブティー・抹茶・緑茶・オリーブ美容液]
・とりせん富士見町店 [オリーブオイル1種]
・農産物直売所ぽんぽこ [オリーブオイル10種・オリーブティー・抹茶・緑茶]
・発酵レストラン自販機 [オリーブオイル1種]
【邑楽郡】
・農産物直売所でんえんマルシェ [オリーブオイル10種・オリーブティー・抹茶・緑茶]
【高崎市】
・JAファーマーズ高崎棟高 [オリーブオイル7種・抹茶・緑茶]
・群馬いろは(JR高崎駅2F) [オリーブオイル7種・抹茶・緑茶]
・まるおか [オリーブティー]
【伊勢崎市】
・なちゅらるふぁーむSUN-TABLE [オリーブオイル8種・抹茶・緑茶]
【甘楽町】
・道の駅甘楽 [オリーブ抹茶・オリーブティー]
【桐生市】
・梅田ふるさとセンター [オリーブオイル9種・オリーブティー・抹茶・緑茶・美容液]
・(有)須藤商店 [オリーブティー]
東京都中央区
・遠忠食品 [オリーブオイル2種]
また公式サイトからもネット通販ができるので、本物のオリーブをぜひ堪能してみてくださいね!
ジャングルデリバリー公式通販サイト:https://jungledelivery.co.jp/shop.html
おわりに
三田社長が掲げる「千年続く大地を育む」という理念は、単なる言葉ではなく、日々の取り組みの中で着実に実現されています。また、品質を追求し、正当に評価される農産物を生み出すことで、持続可能な農業モデルを築き、未来を変えようとする強い意志が込められています。
地域の未来への願いと、人への温かな思いが込められているジャングルデリバリーの製品をぜひ手に取り、その想いを感じてみてください。
館林の大地にまかれた小さな種は、今、大きな実りとなって世界へと羽ばたいています。この挑戦は、まだ始まったばかりです。
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