群馬生まれのウイスキーを「倉渕蒸留所」に訪ねる【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

倉渕蒸留所

更新日: 2025年11月14日

「倉渕蒸留所」は、榛名山の西麓にある群馬県で数少ないウイスキーの蒸留所です。ここでは豊かな水を使い独自の製法でクラフトウイスキーを作っています。今日はウイスキーへの思いを伺ってきました。

ウイスキー作りは老舗18代目の挑戦

倉渕蒸留所

<群馬県で最初の酒蔵である「牧野酒造」>

 

「倉渕蒸留所」は、1690年創業の群馬県最古の日本酒の酒蔵である「牧野酒造」のウイスキー蒸留所です。ウイスキーの製造は「牧野酒造」の18代目である牧野 顕二郎 さんの興味がきっかけだったと言います。牧野さんは、大学卒業後に2年間の他の酒蔵の勤務を経て、「牧野酒造」に入社したそうです。当時からウイスキー作りに関心がありましたが、本業である日本酒作りに専念してきました。しかし、2019年末からのコロナ禍により、時間と設備に余裕ができたために、本格的にウイスキー作りをスタートさせたとのことです。

 

<自慢の「倉渕 -MALT & SAKE LESS- 」を手にする 牧野 顕二郎さん >

日本酒の製法を取り入れたウイスキー作り

ウイスキー作り

<「無濾過製法」を取り入れた蒸留釜>

 

「倉渕蒸留所」では、従来のウイスキー製造方法に「牧野酒造」が日本酒の酒造りで今までに培ってきた独自の「無濾過製法」を組み合わせて、ウイスキーを作っています。オリジナルである「無濾過製法」では、麦汁を濾過することなく、酵母を加え発酵させます。

 

「当蒸留所で使っている水は軟水であり、この水で作ったウイスキーは味気ないと感じていましたが、『無濾過製法』を取り入れることによりウイスキーにしっかりとした味わいを出せるようになりました」と牧野さんは説明してくれました。

 

麦汁作りに使う麦芽はウイスキーの発祥の地である英国産のものを使っていますが、麦芽の安定供給を求め、品質を確認した上で英国産以外の麦芽の使用も検討しているそうです。

 

<倉庫に並ぶ本場英国産の麦芽>

ウイスキーのゆりかごであるバーボン樽とシェリー樽

ウイスキーの熟成に使うバーボン樽とシェリー樽

<ウイスキーの熟成に使うバーボン樽(左)とシェリー樽(右)写真提供:牧野酒造 >

 

「倉渕蒸留所」では、ウイスキーを熟成させるために、バーボンウイスキーやシェリー酒を貯蔵していた樽を使っています。無色透明なウイスキーの原酒をバーボン樽で熟成させると、黄色くバニラのような風味となり、シェリー樽で熟成させると、フルーティで赤みを帯びるようになるのだそうです。

 

ウイスキー作りは、麦芽や、酵母、樽の種類、蒸留法、熟成条件など多くの要素からなり、これらの組み合わせの探究といえます。牧野さんは、樽の違いによるウイスキーの変化にも注目していきたいそうです。

 

<使い込まれたバーボン樽では200Lのモルトウイスキーが眠る>

「倉渕 −NEW MAKE−」と「倉渕 −MALT & SAKE LESS−」

「倉渕 − NEW MAKE −」と「倉渕 − MALT & SAKE LESS −」

<樽の影響を受けていない「倉渕 –NEW MAKE− 」写真提供:牧野酒造>

 

「倉渕蒸留所」のウイスキーは性格が全く異なる2つ。

 

「倉渕 –NEW MAKE−」はウイスキーの原酒とも言えるもので、樽による熟成の影響を受けていないことから、無色透明で原料の風味を感じることができます。一方、「倉渕 –MALT & SAKE LESS− 」は、当蒸留所のシングルモルトウイスキーと、日本酒の酒蔵である「牧野酒造」の酒粕スピリッツを55対45の割合でブレンドしたウイスキーです。日本酒の酒蔵としてのオリジナリティを持ち、その味はモルトと酒粕の絶妙なハーモニーとなっています。

 

202312月の販売当初には店舗の前に行列ができ、問い合わせの電話が鳴り止まなかったそうですが、現在はやっと落ち着いてきたとのことです。

 

<推しである「倉渕 −MALT & SAKE LESS− 」写真提供:牧野酒造>

 

群馬県の老舗酒蔵の18代目が作るウイスキーは彼の挑戦の結果です。今後も、彼の手から多くのウイスキーが世に出てくるに違いありません。群馬県にお越しの際には、ぜひ榛名山の山間にある倉渕蒸留所を訪ね、そんな彼のウイスキーを手に取ってください。そして、その風味や香りをじっくり楽しんでみてください。

インフォメーション

牧野酒造株式会社

 

住所:群馬県高崎市倉渕町権田2625-1
電話:027-378-2011
FAX:027-378-3954
営業時間:8:30~18:00(土日祝は10:00~18:00)
定休日:水曜日

 

牧野酒造株式会社HP:https://www.makino-sake.co.jp

 

倉渕蒸留所HP:https://kurabuchi-distillery.jp

 

SNS: @osakazuki_sake

 

ぐん記者

福田 靖

沼田市の観光ぶどう園「福田ぶどうマルシェ」にいます。子供の時には洋酒の匂いが好きで、洋酒のミニチュアを集めていました。それから40年以上が経ち、現在も実家の飾り棚に置かれています・・・が、飲めるのだろうか?