ホームは地下約70m!「日本一のモグラ駅」土合駅を探索 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

土合駅

更新日: 2025年09月12日

群馬県みなかみ町にある土合駅は、「日本一のモグラ駅」として多くの人に愛されているちょっと特別な駅。地下約70mにあるホームまで階段を降りる体験は、まるで地底探検のようです。

2020年にはかつての駅務室をリノベーションした「喫茶モグラ」がオープンし、新たな楽しみが生まれました。駅という身近な場所が、冒険への入口に変わる。そんな不思議な時間を体験してみませんか?

地下約70mにホームがあるJR上越線の土合駅は「日本一のモグラ駅」

土合駅

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

JR上越線の土合駅に到着すると、まず目に飛び込んでくるのが「ようこそ日本一のモグラえき土合へ」と描かれた看板です。文字の一部がモグラになっていることに、遊び心を感じます。この駅が特別なのは、連絡通路24段+ホームまでの階段462段を下りた地下約70mに下りホームがあるから。谷川岳をイメージした三角屋根の駅舎も印象的です。

 

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

<三角屋根から陽の光が差し込む明るい駅舎 Photo by Masaaki Muraoka>

 

現在は無人駅で電車の本数は上り・下り方面それぞれで1日5本程度 と少ないのですが、だからこそ、この駅でしか味わえない静寂と非日常感を楽しめます。

※土日・祝日や夏休みシーズンなど、利用者が多い時期は臨時列車も運転しているそうです。

公募による「関東の駅百選」にも選ばれるなど、長年鉄道ファンだけでなく多くの観光客が訪れる人気スポットとなっています。

上りホームと下りホームの高低差は約70m!一つの駅に二つの世界

土合駅(下りホーム)

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

上りホームと下りホームの高低差が約70mという、土合駅独特の構造が生まれたのは1960年代のこと。それまで単線だった上越線を複線化するため、新たにできた新清水トンネル内に設置したホームを下りホームとしました。

 

<下りホームと比較するとあまり注目されませんが、上りホームも趣きがあります Photo by Masaaki Muraoka>

 

地下ホームへ向かうには、改札を出て左手の「越後湯沢・小出・長岡・新潟方面」の表示の方向に進んでください。

 

<この先には何があるのか…?冒険心を掻き立てられる雰囲気です Photo by Masaaki Muraoka>

 

土合駅では階段部分が注目されることが多いですが、この地下への階段へと向かう連絡通路も惹かれるものがあります。通路の奥の闇と外から差し込む光のコントラストが美しく、どこか幻想的です。

 

<階段までもうすぐです!人だかりができています。 Photo by Masaaki Muraoka>

 

<私はどこにいるでしょう? Photo by Masaaki Muraoka>

 

長い連絡通路を通ってようやくたどり着いたのが、この地下ホームに続く462段の階段。先ほどの連絡通路にある24段と合わせて、地上から合計486段です。約10分かけて降りていくにつれて、地上の暖かな空気から地下のひんやりとした空気へと変わっていくのを肌で感じられます。

まるでゲームの世界でダンジョンを探検しているような気分で、子どもの頃の冒険心がよみがえってくるように感じました。

酷暑が続く夏でも涼しい地下ホーム

地下ホーム

<ホームと階段が交差するエリア Photo by Masaaki Muraoka>

 

階段を降りた先には、薄暗いトンネルが続く、秘密基地のような空間が広がっています。ここまで降りてくると、涼しいというよりは寒いくらいです。

この日のみなかみ町の気温は30℃。おそらくですが、体感で10℃以上差があるでしょうか。陽の差さない地下深くで電車を待つ時間は、これまで経験のない貴重な体験でした。

 

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

また、電車の利用だけでなく、観光を目的に訪れる方も多いのが土合駅の特徴です。ここが現役の駅のホームであることを一瞬忘れてしまうような、不思議な光景でした。

ちなみに、土合駅は上越線を使って群馬県から新潟方面に向かう際の群馬県最後の駅。下り列車に乗って進んだ先、お隣りの土樽(つちたる)駅は新潟県南魚沼郡にあります。「この線路の向こうは新潟か…」なんて考えると、さらに冒険気分が高まりますね。

 

<この線路の向こうは、もう新潟です Photo by Masaaki Muraoka>

改札口までの道のりは約10分!地上への長い旅路

土合駅

<今回ご同行いただいた、JR東日本高崎支社で広報を担当されている栗原さん(右)と Photo by Masaaki Muraoka>

 

一度来た道ではありますが、地下ホームから改札口まで戻る道のりは下りとはまた違った楽しみが。階段を登り始めると、だんだんと額に汗がにじんで、地上に近づくにつれて気温が上がっていくのを肌で感じることができます。

 

<階段を上り始めたタイミングで、増発電車がホームにやってきました! Photo by Masaaki Muraoka>

 

階段に番号が記されているので、少しずつ達成感を味わいながら登っていけるのも良いですね。

 

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

階段を登り切ったと思ったら、まだ連絡通路に24段の階段が待っています。「がんばって下さい」という励ましの文字が書かれているのも、この駅ならではです。

再び連絡通路に入ると夏の日差しと暑さが一気に戻ってきて、日常に戻ってきた感覚がありました。

 

<みなかみ町の豊かな緑と日差しがまぶしい Photo by Masaaki Muraoka>

探索後は駅務室を改装した「喫茶モグラ」でひと息

喫茶モグラ

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

長い階段を登り切った後は、駅舎内にある「喫茶モグラ」で一息つきましょう。駅務室として使われていた場所をリノベーションしていて、かつての駅の雰囲気を残した空間になっています。

 

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

当時の伝言板がそのまま保存されていたり、切符売り場がそのままカウンター席になっていたりと、懐かしさと新鮮さが同居する場所でした。

 

<Photo by Masaaki Muraoka>

 

こちらでいただけるのは、美味しいコーヒーと地元の飲食店が手がけるドリンクや焼き菓子など。私は喫茶モグラオリジナルブレンドの「水出しアイスコーヒー(600円)」と、沼田市の「自然恵みファームズ」の平飼い卵を使った「平飼い卵のシフォンケーキ(400円)」をいただきました。

 

<「水出しアイスコーヒー」と「平飼い卵のシフォンケーキ」 Photo by Masaaki Muraoka >

 

みなかみ町で醸造したクラフトビールも味わえるので、地下探検の余韻に浸りながらゆっくりとした時間を過ごせます。

 

<みなかみ町の飲食店でも販売されているりんごジュースとクラフトビール Photo by Masaaki Muraoka>

 

日常で使っている駅が、旅の通過点ではなく目的地になるJR上越線土合駅。486段もの階段の上り下りは少しだけ大変ですが、非日常を味わえる地底探検に心が踊ること間違いなし!

新しい魅力も加えながら多くの人に愛され続けている土合駅の魅力を、みなさんもぜひ体験してみてください。

 

インフォメーション

JR上越線土合駅

住所:群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽
料金:駅構内を見学する際は入場券(150円)の購入が必要です。水上駅でご購入ください。

 

喫茶モグラ

住所:群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽218-2(土合駅舎内)
電話:0278-25-8981
営業時間:10:00~15:00
定休日:不定休

HP:https://doaivillage.com/

 

喫茶モグラ

Instagram:@ doai_mogura

 

望月優衣

望月優衣

渋川市出身・高崎市在住のフリーライター。群馬県内の取材・インタビューを中心に、文章を仕事に楽しく生活しています。趣味は街歩きや美術館めぐり、ノープランの旅行です。