涼を求めて観光タクシーで行く 荒船風穴の旅 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
下仁田町で近代化遺産に出会う
下仁田町中心部の町営観光駐車場に車を止めると立派なレンガ塀が目にとまった。こんにゃく製粉業の会社のものだったとか。下仁田駅近くのタクシー乗り場に向かって歩いて行くとレンガ蔵が見えた。大正10年(1921)と大正15年(1926)に建てられた二棟のレンガ倉庫(旧上野鉄道関連施設の下仁田倉庫、繭の保管などで使用)関東大震災にも耐え、ぐんま絹遺産に登録されている。ここでレンガ蔵を店舗として活用した「古道具 熊川」に立ち寄り、店主に話を伺うと「日本の原風景を大切にしたい」と話していた。店内の展示品を見ていると、当時の人間の営みと時代背景、香り、道具そのものの息づかいも感じられた気がした。
荒船風穴へ行くなら、下仁田町歴史館で予習しよう
いざ、観光タクシーで周遊ツアーへ。出発して5分で、荒船風穴のガイダンス施設の下仁田町歴史館に到着。荒船風穴の関連資料や展示は凄い。風穴のメカニズム、ジオラマ、蚕の卵(蚕種)、種紙(無毒印、検査済の会社印)、蚕の一生、春秋館関連資料、風穴上部の岩陰遺跡から出土した縄文式土器など。特に15分間の映像は必見。「養蚕とは蚕の一生に寄り添う仕事」と語っていた。日本一の冷蔵施設、電気のない時代、風穴の植生、冷風が見えるなどを紹介。その他、町内の遺跡、縄文時代の石器の流通、下仁田戦争、蚕民具、旧上野鉄道のレンガ、鬼ヶ沢橋梁のレンガ・レール、養蚕信仰の興味深い展示もある。入館料は200円ですが、これから行く荒船風穴の入場料(通常500円)が300円になる割引
特典もあり、お得です。ガイドブックや風穴手拭いも販売されていているので、ぜひ購入してから向かいましょう。
冷風体験しよう 世界文化遺産の荒船風穴へ
下仁田町歴史館で予習をして荒船風穴へと向かう。車窓は清流の鏑川、旧中小坂鉄山、ネギ畑、ジオパークの山並みを見ながら、この日は屋敷集落を通る道を行く。くねくねした山道を行く、ドライバーさんの腕の見せどころ、風穴受付案内所にタクシーを横付け。(自家用車なら駐車場から徒歩約20分、土日祝日は風穴駐車場から無料のシャトルバスが運行される。)受付で割引入場料300円を払い、ガイドさんの解説に耳を傾ける。下仁田町歴史館で予習したから解説も理解できて質問もできちゃう。この日は30℃近くあったが、3号風穴、2号風穴と近づくと、「あれ?」と思った。風穴の石積みを見ながら通ると、「わあー涼しい、気持ちいい」と感じた。各所に温度計が設置されているので、つい見てしまう。ガイドさんが「特定の条件(外気との温度差、湿度、風、太陽光)が揃えば、冷気が目で見える(地元では白雲という)、見られたらラッキー」と言った。短時間ではあったが、白雲が見えた。
風穴冷風体験館横に面白い自動販売機があった。御朱印、荒船冷風飴、下仁田ねぎタオル、ねぎ茶、風穴缶バッチ、招福開運おみくじ、風穴冷風だるま、下仁田ねぎボ-ルペンなどの地域限定グッズの数々、また、シャトルバス待機場所には「世界遺産眺望窓」が設置されていた。春秋館、富岡製糸場、高山社、田島弥平旧宅の方角がわかった。
1号風穴から冷気が流れて、白雲が出ていた
2号風穴冷風体験ベンチの温度計は14℃、風穴内3℃
風穴冷風体験館の横にある 地域限定のお土産が買える自動販売機
さあ、小銭を準備して買ってみよう
神津牧場で一休み、そこでかっぱに出会った
荒船風穴を後にして、神津牧場へ。5分で乳製品の売店や食事処に横付け。(自家用車なら専用駐車場から徒歩)下車すると、ここも涼しさを感じた。高原の牧場。神津牧場は、明治20年に開設された日本最古の西洋式山岳牧場でバター、チーズ、牛乳、飲むヨーグルト、レトルト製品を販売している。その中でイチ押しはソフトクリーム。ここで食べるのが一番だと思う。そのソフトクリームを片手に散策していると「カッパにエサをあげないで」とのプレートが、「えっ?カッパがいるの?」と、近くのスロープを下りて行くと小さな池の畔にカッパがいた。夜な夜な牧場内を歩いているという噂も。
牧場スタッフより「毎日13:00からの牛の行列を是非、見て欲しい」と教えてもらったので拝見した。予定時刻になると場内放送があり、行列が通る場所を知らせてくれる。こんなに人が居たのかと思った。大人気である。「来た」と誰かが叫んだ。スタッフが連れてくるかと思いきや牛が先頭でやってきた。ゾロゾロと一頭のジャージー牛が迫って来た。びっくりしたが、思わず挨拶をした。これは一見の価値がある。
高原の霧の中に迫り来る大迫力のジャージー牛の行列
楽しい思い出を語りながらの帰り道
風穴脇の路傍にある馬頭観音 旅人や蚕種を運ぶ人馬を見守っていたのだろうか
神津牧場を後にして、風穴に後ろ髪を引かれているのを察してくれて、ドライバーさんが風穴に戻る道を選んだ。つづら折りの道を下る。沿道には、歩く人を楽しませる仕掛けがあった。植物の名前のプレート、冷風体験窓、森の小径など。徐行して、鹿の通り道や鹿が樹木を食べた跡、炭焼き窯跡などを見た。冷風体験窓に停車して穴の中に手を入れて冷気を体験した。国道254号線に戻って、西光寺を通過した際、崖の中腹にあった養蚕の神様(石像)を撮影したことを思い出した。その養蚕神は下仁田町歴史館に移されていた。残して欲しい絹遺産である。また、世界遺産登録直後のエピソードなど、そんな話もしながらタクシー乗り場に到着した。2時間30分はあっという間に終了した。タクシー内は冷房も効いて、清潔感があり、とても快適だった。疲れないから、この後、もう一箇所観光できるかもしれないと思った。
下仁田町から観光タクシーで周遊ツアーに参加した。世界文化遺産の荒船風穴を中心に、内容の濃い楽しい旅ができた。車社会に慣れた群馬県人には「なんで車で行かないの」と思う向きがあるかもしれないが、荒船風穴に続く細く曲がりくねった道の運転は心臓がドキドキしそうだ。冷や汗は勘弁願いたい。観光タクシーならよそ見ができるし、地元情報も聞ける。風穴受付案内所や神津牧場の売店にタクシーが横付けできることも魅力的。コースの時間内であれば、各所滞在時間の調整は可能とのこと。ねぎとこんにゃくで有名な下仁田町ですが、町内には他にも魅力あるグルメがたくさんあるので訪ねてはいかがでしょうか。
インフォメーション
公益財団法人 神津牧場
住所:群馬県甘楽郡下仁田町南野牧250
電話:0274-84-2363
HP:http://www.kouzubokujyo.or.jp/
下仁田町歴史館
住所:群馬県甘楽郡下仁田町下小坂71-1
電話:0274-82-5345 ※荒船風穴の問い合わせ先もこちらへ
開館時間9:00~16:30
観覧料:大人200円、高校生以下無料(団体20名以上2割引)
休館日:4月~11月(無休)12月~3月(月曜日、ただし祝日の場合は翌日)
古道具・熊川
住所:甘楽郡下仁田町下仁田430-1
お問い合わせ:DMまたはkumagawa899@gmail.com
観光タクシーで巡る!荒船風穴・ジオパーク周遊ツアー
http://www.town.shimonita.lg.jp/kanko/m03/m06/08.html
取材協力:上信ハイヤー株式会社(下仁田営業所)

えんとつちゃん