〜玉村町〜後世に伝えたい!麦わら船に願いを託した「水神祭(すいじんまつり)」

水神祭

更新日: 2025年09月03日

みなさんは水神様をお祭りする「水神祭」をご存知でしょうか?群馬県内でも珍しい、舟を川に流して無病息災などを祈願するというお祭りです。子どもと大人が手作りのわら舟を引き、町の中を練り歩きます。例年玉村町の五料地区で7月の後半に行われる、伝統の「水神祭」に参加してきましたので、歴史的背景なども踏まえて、その魅力をお伝えしましょう。

水難除けからはじまった玉村町五料区の無形民俗文化財

利根川

今回ご紹介する「水神祭」は、玉村町の利根川沿いに位置する五料地区の、飯玉神社に合祀された水神様のお祭りです。江戸時代に日光例弊使街道の宿場町「五料宿(ごりょうしゅく)」が置かれ、利根川右岸の渡船場には厳しい関所も設けられていたこの地区は当時、「船頭のむら」として栄え、利根川と烏川の合流点に位置し、二つの河岸がありました。しかし一方で、水害に悩まされる地域でもあり、近年では2019年の台風で大きな被害を受けたことでも知られています。

こうした背景から、水難除けを祈願する「水神祭」が生まれました。麦わらや青竹で作った舟を町内で巡行し、招福・厄除けを祈願するお祭りで、夕方には大人たちが舟を担ぎ、利根川へ流します。この伝統は現在でも受け継がれており、2002年(平成14年)に、国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」にも指定されました。かつては毎年7月25日に行われていましたが、現在は時代の流れに合わせ、7月の最終日曜日に開催されています。

応仁の昔から続く信仰「飯玉神社と水神祭」

飯玉神社

飯玉神社神社拝殿へ続く鳥居

 

お祭りのメイン会場となる「飯玉神社」はこの一帯の領主だった那波氏が伊勢崎市堀口の飯玉神社から分霊勧請し、1468年(応仁2年)に創建された由緒ある神社です。度重なる改築を経て、1907年(明治40年)に石神神社や白山神社、養蚕神社が合祀され現在に至ります。

 

お祭りの祈願が行われる拝殿

 

水神祭は、この境内で麦わらや青竹を使った「水神丸」を、水難や厄除けを祈願して利根川に流すという、群馬県内でも珍しい舟のお祭り。今年はお祭りの前の週に地域の大人が集まり、水神丸を作るなどの準備が行われました。

お祭り当日は祈祷とお清めからスタート

飯玉神社(拝殿)と水神丸

拝殿の前にスタンバイする水神丸

 

当日、8時半ごろに飯玉神社へ向かうと、すでに飯玉神社には地域の方々が集まって、祈祷とお祭りへ向けての準備を行なっていました。水神丸もすでに拝殿の前でスタンバイ。

 

神主さんがご祈祷を行う

 

程なくして神主さんが訪れ、町議会議員さんを筆頭にお祭りに関わる方々と水神丸のご祈祷が始まり、御神酒のお清めで締めくくられました。

 

公民館内に飾られる過去に行われた水神祭の様子

 

ミニチュア水神丸も展示されている

 

地域の方々が、神社併設の五料公民館内を見せてくださったのですが、館内には過去の水神祭の写真や掛け軸、ポスターなどが飾られていて、地域で大切にされてきたことがわかります。

一通り見せていただき、夕方の巡行のためこれで一旦解散となりました。

響けわっしょい!町内を巡る水神丸

飯玉神社(境内)

飯玉神社に集まる町内の人々

 

15時半を過ぎた頃から飯玉神社の境内にみんなが集まりはじめ、お祭りの木札を首からかけ、法被を着て巡行の準備をします。

 

水難・厄除け、招福祈願の木札

 

先頭には大人が引く水神丸、後尾には子どもたちが引くリヤカーに太鼓と賽銭箱が積み込まれ、山車の巡行が始まりました。

 

お祭りの始まりです

 

夏の強い日差しが照りつける中、「わっしょい」という元気な掛け声とともに町内を巡り、街中に響きわたる声を聞いた住民の方が願いを込めて、お賽銭を入れていきます。

 

暑さの中、みんなでわっしょい!

 

休憩を数回挟みながら2時間ほど町内を巡り、一旦神社に戻った山車は、いよいよ利根川へと向かいます。

みんなの願いを叶えるために、いざ出航

水神丸、利根川へ向かう

 

リヤカーから外された水神丸は、五料橋下流のサイクリングロードから利根川へ向かう道を大人たちによって担がれていきます。河原に到着し、静かに水面に浮かべると、いよいよ出航の時です。

 

男性陣が水神丸を流すため利根川に入水

 

川の流れが速く、みんなの厄払いや招福祈願を背負った水神丸はみるみる小さくなっていき、やがてその願いをかなえるかの如く、利根川の下流へと姿を消して行きました。

 

流れゆく水神丸

 

藁ぶねの美しさと貴重さに魅了され参加した水神祭。巡行で使われる舟は、以前は全長7mもあり、現在の倍の大きさを誇っていたといいます。しかし製作者や担い手の減少が進む今、群馬を代表するこの貴重な伝統行事をより多くの人に知ってもらい、次世代へと受け継いでいってほしいと願わずにはいられません。

 

2025年開催水神祭の案内

 

※水神丸は藁や竹、紙などでできており、川に流された後は自然に還ります。

インフォメーション

五料 水神祭

日時:2025年7月27日(日)
・祈祷 9:00〜10:00 飯玉神社にて
・町内巡回、舟流し 16:00〜18:00
場所:飯玉神社、五料区町内
主催:五料区
協力:玉村町生涯学習課文化財係
お問合せ: 0270-30-6180

玉村町魅力発信機構観光情報サイト
https://www.tama-miryoku.com/news/post-3093.html

玉村町
https://www.town.tamamura.lg.jp/docs/2015033000055/

群馬地域文化財マップ
https://www2.gunmabunkazigyodan.or.jp/item.php?id=600

 

観光ぐんま編集室

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群馬県観光公式サイト「心にググっと 観光ぐんま」の情報発信を担当する、観光ぐんま編集室です。県内各地の観光やグルメ、イベントなどの情報をみなさまにお届けします。