みなかみの夜を彩る「月夜野ホタルの里」で北関東一の幻想体験 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

月夜野ホタルの里

更新日: 2025年08月14日

みなかみ町の「月夜野ホタルの里」では、毎年6月中旬から7月中旬にかけてゲンジホタルとヘイケホタルの共演(源平合戦)を楽しめます。地域ぐるみの保護活動の成果で、その自然発生数はなんと北関東随一です。

都心から車で約2時間、JR上毛高原駅から徒歩でアクセスできる場所でありながら、数百匹のホタルが一斉に舞う、幻想的な光景を目にすることができます。

みなかみ町はホタルの自然発生数北関東随一の「いきものの里」

みなかみ町の風景

<「月夜野ホタルの里」から眺めるみなかみ町の風景 Photo by Masaaki Muraoka>

 

みなかみ町月夜野地区は、平成元年に環境庁「ふるさといきものの里100選」に認定されました。身近な自然と、そこに暮らす生き物を地域を挙げて大切に守っています。

中でもホタルは、水質の良い清流でなければ生息できない、環境の指標となる生き物。

みなかみ町では40年以上の長きにわたってホタルの保護活動を行い、現在ホタルの自然発生数は北関東一となっています。2025年シーズンのピークには、一晩に650匹ものホタルが観察されました。

※みなかみ町自然環境及び生物多様性を守り育てるため昆虫等の保護を推進する条例 平成23年4月1日施行

JR上毛高原駅からスタート!約 2 キロメートルの遊歩道へ

ホタル観賞エリアの入り口

<ホタル観賞エリアの入り口。月夜野ホタルを守る会の皆さんが案内してくださいます Photo by Masaaki Muraoka>

 

月夜野ホタルの里は東京駅から上越新幹線で最速62分、JR上毛高原駅から徒歩約3分の場所で、整備された遊歩道を歩きながらみなかみの自然を満喫できます。

毎年6月中旬〜7月中旬には「ホタル観賞会」が開催され、2025年の期間中には約9,300人もの方々が訪れました。

観賞エリアは最低限の明かりしかなく真っ暗。最初は足元が不安で少し怖いですが、ゆっくり歩くうちに暗闇に目が慣れてきます。これは強い光に弱いホタルを守るための取り組みです。ホタルは目の網膜をやられると飛べなくなり、最悪の場合命を落としてしまいます。

ホタルの成虫は1週間という短い命の中で、子孫を残すために懸命に光を発して相手を探しています。ホタルたちの大切な時間を邪魔しないよう、スマートフォンなどの明かりにも注意しながら静かに見守りましょう。

見どころはゲンジホタルとヘイケホタルの共演

ホタル

<ホタルは気温が高いほど高く舞い上がる性質があります Photo by Masaaki Muraoka>

 

ホタルが最もよく飛ぶのは、気温が20~25℃の蒸し暑い夜。20時を過ぎるとぽつぽつとほのかな光が現れはじめ、21時頃まで懸命に飛び続けます。

 

月夜野ホタルの里で鑑賞できるホタルは、主にゲンジホタルとヘイケホタルの2種類。ゲンジホタルはピカー・ピカーと約4秒間隔でゆっくりと点滅する優雅な光が特徴です。一方のヘイケホタルは発光がゲンジホタルより弱く、チカチカと早いタイミングで光ります。

光り方の違いを知っていると、暗闇の中でもどちらのホタルが飛んでいるのかが分かって、観賞がより楽しくなりそうです。

また通常、ヘイケホタルはゲンジホタルよりも後に飛び始めるので、このような源平合戦が観られるのは貴重な環境と言えます。

水辺の草むらからホタルが舞い上がる様子は、まさに天然のイルミネーション。都会では決して見ることのできない光のアートに、思わず息をのむはずです。

観賞ルートに点在するスポットで、お気に入りの場所を見つけて

美しい星空

<人工的な明かりがほとんどない観賞エリアでは、美しい星空にも注目してみてくださいPhoto by Masaaki Muraoka>

 

約2キロの遊歩道は、大人が歩いて約30分の道のり。観賞ポイントそれぞれに異なる魅力があるので、時間をかけてゆっくりと巡ってみるのがおすすめです。私も取材・撮影をしながら1時間ほど観賞を楽しみました。

私のお気に入りの場所は、夜の闇に乱舞するホタルと豊かな緑、深い青が印象的な星空を一度に鑑賞できるこの場所。遊歩道沿いの、「沢入(さわいり)」というエリアにあります。

 

<私のお気に入りの場所はこちら Photo by Masaaki Muraoka>

 

自分だけのお気に入りの場所を見つけたら、静寂の中に聞こえる自然の音にも耳を傾けてみてください。水のせせらぎや、風で揺れる葉音を近くに感じられる贅沢な時間が流れています。

ホタルと里山の環境を守るみなかみ町の活動

配布されるうちわ

<観賞会で配布されるうちわには、町内の小中学生が応募したポスターコンクールで金賞に選ばれた作品が原画になっています Photo by Masaaki Muraoka>

 

現在のホタルの里の環境は、一朝一夕にできたものではありません。昭和58年に「月夜野ホタルを守る会」が結成されてから40年以上、発生分布調査、地元の小学生を対象にしたホタル教室の開催、保護育成・啓蒙活動を地域ぐるみで続けてきました。

エリア内を流れる水路も、国や県の補助金・みなかみ町の独自事業などを活用し、平成元年から平成20年まで20年の月日をかけて完成したもの。コンクリートを使わず、町内の工事で出た転石を利用した「生き物に優しい」石積みで整備されています。

それでも、ゲンジホタル一匹が産む500個ほどの卵から成虫になるのはわずか5~10匹ほど。改めて命の尊さを感じさせられます。

 

1週間という短い命を精一杯輝かせるホタルたち、そして40年以上にわたってその命を守り続けてきた地域の人々。月夜野ホタルの里の「ホタル観賞会」は、きっと忘れられない特別な体験になるはずです。

みなかみ町の豊かな自然が育む光の芸術を、次は皆さんの目で確かめてみてください。

 

インフォメーション

月夜野ホタルの里

住所:群馬県利根郡みなかみ町月夜野
アクセス:JR上毛高原駅から徒歩約3分(遊歩道は1周約2キロ、徒歩約30分)
見頃:6月中旬~7月中旬
観賞時間:20:00~21:00頃
料金:無料(月夜野ホタルを守る会の「ホタル募金」にぜひご協力ください)

HP:https://www.enjoy-minakami.jp/hotaru

 

望月優衣

望月 優衣

渋川市出身・高崎市在住のフリーライター。群馬県内の取材・インタビューを中心に、文章を仕事に楽しく生活しています。趣味は街歩きや美術館めぐり、ノープランの旅行です。