100年の伝統が実る、世界に愛される梅。──ゆあさ農園──

高崎の地で、百年熟す梅づくり
高崎市榛名地区のゆあさ農園
梅というと酸っぱい梅干しを思い浮かべますが、カリウムやクエン酸の疲労回復効果や、ポリフェノールやビタミンEが豊富で抗酸化作用が高く、殺菌や食中毒防止の効果もあることから、梅干しは古くから伝統的な健康食品として食卓に並んできました。近年では海外でもお弁当や薬味などにも使われ、注目を浴びつつあるヘルシーフードのひとつです。
梅の名産地として知られる群馬県高崎市榛名地区で「ゆあさ農園」は古くから梅の生産を行ってきました。有機JAS認証を取得し、自然環境と人にやさしい栽培方法で、安心・安全な梅づくりに取り組んでいます。
この地域で梅の栽培が始まったのは明治時代。日露戦争で梅干しが兵士の軍用食として提供されたことがきっかけでした。その後、大正時代には梅の産地化が進み、榛名地区一帯で梅の栽培が盛んに行われるようになりました。
梅を収穫する5代目の湯浅さん
その歴史とともに歩んできたゆあさ農園は、初代がこの地で梅栽培を始め、現在は5代目がその志を受け継ぎ、伝統を守りながら現代に合った持続可能な農業に取り組んでいる、創業100年以上の歴史をもつ老舗の梅農家なのです。
自然のリズムとともに育つ、300本の梅の恵み
榛名山麓にある梅林
約1.5ヘクタールの広々とした畑では、織姫・南紅梅・白加賀梅の3品種、約300本の梅の木が大切に育てられており、植え付けから実をつけるまでに5年から10年、その寿命は30から50年にも及びます。長い年月をかけて、毎年実りをもたらしてくれる梅の木は、まさに農園にとってかけがえのない存在です。
毎年5トンから8トンの梅が収穫され、そのうち約10%は生梅として出荷、残りの90%は梅干しなどの加工品へと生まれ変わります。梅の実は保存性に優れており、収穫後もじっくりと時間をかけて熟成され、味わい深い製品となります。
収穫したばかりの生梅
梅は自然のリズムに大きく左右される果実であるため、不作と豊作を繰り返し、年ごとの気候や樹木の状態によっても収穫量が変動します。そうした自然のサイクルに寄り添いながら育てられた梅は、芳醇な香りと深みのある味わいを持ち、ひと粒ひと粒に季節の記憶が刻まれていきます。
環境と人に配慮した優しい梅づくり
梅の枝からできたバイオ炭
ゆあさ農園では、化石燃料に頼らず環境にやさしい方法で梅を育てています。剪定で出た梅の枝は、給湯や暖房のエネルギー源として再利用し、さらに炭化して「バイオ炭」となり土づくりにも活用されます。梅の種も肥料として無駄なく使い、微生物の働きを促すことで、栄養豊かな腐葉土が生まれます。
栽培方法にもこだわり、草をあえて一部残す「草生栽培」を取り入れることで、化学合成農薬や化学肥料、動物性堆肥、除草剤は一切不使用。手間と時間をかけながら、自然の力で丁寧に梅を育てています。
梅を天日干しするエコなガラスハウス
収穫後の加工時にも環境へ配慮し、直売所の裏にあるガラスハウスで梅を天日干しし、ビニールハウスを使わない方法を選択。さらに、太陽光発電で農機具を動かすなど、農園内でのエネルギー循環も徹底しています。
こうした持続可能な取り組みが評価され、ゆあさ農園は群馬県内で唯一、全国でも4例目となる「梅に関するGAP(農業生産工程管理)認証」を取得しました。環境への配慮と健康へのやさしさから、その製品はビーガンの方にも安心して選ばれています。
群馬県内でわずか1%という希少なシェアを持つゆあさ農園の有機梅は、まさに自然と人に寄り添い、丁寧に育まれ、国内から海外にまで多くのファンに愛されているのです。
塩にもとことんこだわる
こだわりの塩でつけ込まれていく梅
ゆあさ農園公式Instagram @yuasa.noen より
梅干し作りに欠かせない塩にも、とことんこだわっています。安心・安全を大切に、なるべく手を加えない、自然に近い製造方法の塩を厳選。国内はもちろん、世界各地から選び抜かれた10種類以上の個性豊かな塩ばかりです。
国内産では、伊豆大島の海水から作られた「海の精」、佐賀県加唐島の「一の塩」、八重山諸島の「石垣の塩」、沖縄・糸満沖の海水を使った「青い海」、北谷(ちゃんたん)町沖の「ちゃんたんの塩」、秋田・男鹿半島沖の「男鹿半島の塩」など、地域ごとの風土が感じられる味わい深い塩を採用しています。
海外産では、太平洋に浮かぶキリバス共和国の「クリスマス島の塩」や、南米ボリビアの「ウユニ湖の塩」、フランスは「ケランドの塩」など、自然の恵みがたっぷり詰まったこだわりの塩を使っています。
これらの塩は先代が実際に産地へ足を運び、生産者と顔を合わせて関係を築きながら出会った、思い入れのあるものばかりです。一つひとつの塩への思いが梅にも込められています。
自然の恵みをぎゅっと。心と体にやさしい梅シリーズ
ゆあさ農園自慢の梅干し
ゆあさ農園の梅製品をご紹介していきましょう。まず、シンプルに梅と塩だけで漬け込んだ有機JAS梅干しをはじめ、申年の梅干しや二十年熟成梅干しなど種類豊富な梅干しがあります。いずれも栽培期間中に化学合成農薬・化学肥料を使わず、こだわりの塩で漬け込まれており、塩分は約13%に調整されています。
バリエーション豊富な「かける梅」シリーズ
また「かける梅」シリーズは調味料感覚で料理に使えるので大変便利、かけるウメスコやかける梅胡椒といったスパイシーなアイテムも人気です。
梅と塩の美味しさが詰まった梅塩
梅干しを漬ける際に出る梅酢を乾燥させて作った梅塩は、一袋を作るのに約50個もの梅が必要になるという、手間ひまかけた逸品です。
種類豊富な梅アイテムに驚きを隠せない
このほかにも、練り梅や梅の種、梅はちみつしょうが湯、梅の塊など、ユニークなものも揃っています。梅干しギフトセットなども充実しており、用途やシーン応じて選べるのも魅力的です。
収穫したばかりの生梅
さらに、例年6月上旬から中旬まで有機栽培の生梅も販売しています。
バリエーション豊富な製品で使い方のアイデアも広がりますね。
※2025年の販売は終了しました。
こだわり梅に出会える場所
併設の売店に並ぶ商品
農園併設の直売所や公式ネットショップ、高崎オーパ内の高崎じまん、無印良品前橋中央通り商店街店、吉井物産センターふれあいの里、スーパーまるおかなど群馬県内のスーパーや直売所をはじめ、県内外の高速道路サービスエリアなどでも販売されています。
春先には梅林を観賞してから梅商品を求め、直売所に足を運ぶ人も多いのだそう。群馬県内を中心にマルシェなどのイベントにも登場するので、見逃せません。公式HPの新着情報は要チェックです。
※詳しい情報はゆあさ農園公式HPをご覧ください。
収穫の瞬間から箱詰めまで、梅づくりの現場を訪ねて
梅の選定に使われるホッパーと昇降機
2025年6月上旬に収穫、選別、袋詰めの作業を取材させていただくため、ゆあさ農園さんを訪れました。
梅は大きさによって自動で分けられていく
スタッフの皆さんが総出で、梅干しなどに加工される梅の選別を行っていました。手作業で丁寧に収穫された梅は、ホッパーから昇降機を経由してローラーへと流れていきます。そこで傷などのある梅が取り除かれ、選別機によって大きさごとに仕分けられていきます。大きさごとに選別された梅は、それぞれのサイズや用途に応じて加工・出荷されていきます。
収穫も全て手作業
次は白加賀梅の収穫作業の見学です。出荷用の生梅は、まだ青梅のうちに収穫されるそうで、一つひとつ丁寧に、手でもぎ取り、カゴに入れていきます。
かご1つで20kgもの重さになるのだそう
注文の入った分だけ梅を収穫し、先ほどと同様に選別機でサイズごとに分けられ、袋詰めし出荷となります。
袋詰めも手作業で行われる
6月中旬には全ての梅を収穫し、出荷や梅製品へと加工され、注文者の元へと旅立っていきます。現在13か国にも輸出されており、海外のバイヤーが直売所を訪れることもあるのだそう。
自然と寄り添う農法、長い歴史、そして確かな品質を誇るゆあさ農園の梅は、国内はもとより世界にも愛される「群馬の宝」です。
インフォメーション
ゆあさ農園
住所:群馬県高崎市上里見町2130-3
電話:027-374-2792
営業時間:9:00〜17:00
アクセス:車 関越自動車道前橋ICより約30分
公式HP:https://www.yuasanoen.com/
Instagram:https://www.instagram.com/yuasa.noen

観光ぐんま編集室