交通費は往復1万円以下 お手頃で楽ちんな バスと列車でめぐる 伊香保・四万への温泉旅 ―伊香保編―

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更新日: 2024年04月11日

  群馬は日本でも指折りの温泉県。県内には96の温泉地が点在していますが、一極集中ではなく、「草津」「伊香保」「水上」「四万」など全国区の温泉が多いのも特徴の一つ。それぞれの温泉地の個性がくっきりと際立っているのも魅力です。

 

今回、紹介するのは、街づくり第一号の温泉地「伊香保温泉」と、“ブルーリバー”で知られる「四万温泉」。高速バスや鉄道を使い2泊3日で訪ねます。どうしてクルマじゃないの?と思われるかもしれませんが、温泉に浸かると、気持ちよくカラダがくたびれるので、特に帰路、居眠りしながら帰れるという良さもあるんですよ。

 

それでは旅のはじまりー。

 

1日目 

まずは関東から伊香保温泉へJRバスで一直線!  東京から2時間半で石段街へ。取材協力/ジェイアールバス関東

 

今回は9時10分東京駅八重洲南口発の「上州ゆめぐり号」に乗車。途中、上里SAでの休憩をはさみ、伊香保石段街へ11時40分に到着。バス停は石段街の一番下。温泉街まで一直線で行ける高速バス、お手頃な上に楽ちんで言うことなし!

 

高速バスでのアクセスはこちらへ

https://www.ikaho-kankou.com/access/

 

●石段街を散策

石段街はたくさんの店や宿が並ぶ伊香保のメインルート。400年以上前に設計された日本最古級の計画温泉街。ですが、そんな歴史にあぐらをかかず、1980年から5年間かけて石段を大改修、2010年には石段下を延長し全365段になりました。新しい魅力もそなわった伊香保は、キラキラとした楽しさあふれる温泉地です。 石段の上り口あたりは新店舗が多いのも特徴。クレープやサツマイのお店など、小店が並び、石段マーケットのような雰囲気です。

  地元にUターンした若者が開いた焼きたてのおいしいクレープ店。取材協力/伊香保クレープCREAM

 

 もう少し石段をあがっていくと香ばしい匂いが漂ってきます。94段目にある玉こんにゃくのお店です。群馬県昭和村のコンニャク芋から作られている特注品。醤油味がしみていて、さっくり歯切れが良くてプリプリ。伊香保の名物になっています。   こちらは生産量日本一の群馬産こんにゃく芋から作る玉こんにゃく。取材協力/石段玉こんにゃく

 

今日のお宿は石段中ほどにある老舗宿。チェックインには早いので荷物だけ預かってもらい、石段の上をめざします。ここから後半戦!

  室町時代から続く伊香保屈指の老舗。取材協力/千明仁泉亭

 

●ランチ&伊香保神社におまいり

伊香保は群馬でも指折り人気の温泉地。日帰り客も含めて多くの観光客がやって来ます。飲食店の数も多いのですが、土・日曜のお昼どきには混み合うことも。なので何軒かランチスポットを押さえておくと便利です。混んでいる時には、まず先に、伊香保神社にご挨拶してから、お昼をいただくと良さそうです。

 

伊香保で出会えるこんな味!

   歯応えを残した野菜も種類ごとに丁寧に調理した石焼きカレー。取材協力/大正浪漫 黒船屋

  うどん店が多い伊香保界隈、幅広のひもかわうどんのお店も! 取材協力/五代目 花山うどん 伊香保石段店

 

石段の最上段には「伊香保神社」が鎮座しています。こちらは平安時代に編纂された延喜式神名帳(1100年ほど前、朝廷により作られた神社リスト)にも名前が記されている由緒正しきお社です。温泉の神様として有名な大己貴命(おおむなちのみこと)と小彦名命(すくなひこなのみこと)が祭神で、健康はもちろん縁結びや子宝などにもご利益が。伊香保に行ったら一度はご挨拶をしておきたいところ。参拝は自由です。

  伊香保神社。おみくじもありますよ 

 

⚫️飲泉&露天風呂 石段街の奥へ

 

神社にお参りした後は、本殿の左脇を通って、“奥伊香保”へも足を伸ばしてみてください。樹林の中をしばらく歩くと、右手に赤い河鹿橋が見えてきます。このあたりから川をのぞくと、岩や水が赤く染まっています。この一帯が源泉地。自然に包まれ、空気が一段と澄んでいるように感じられます。   緩やかな坂道を歩きながら奥伊香保の自然の中へ。写真提供/渋川伊香保観光協会

 

さらに進むと飲泉所があり、自由にお湯を飲むことができます。伊香保は2種類の泉質がありますが、昔からのお湯は「黄金の湯」。鉄分を含んでいるので、空気に触れると茶色っぽくにごります。でも飲泉所のお湯は湧き立てすぐなので透明です。飲んでみると、鉄の味はするけれども意外に飲みやすいような‥(感じ方には個人差あり)。体内に直接、温泉を取り入れる飲泉は、人によっては刺激が大きいので、がぶ飲みせず、少しだけ試してみてくださいね。

  飲泉所のお湯は黄金の湯5号源泉。泉質は単純温泉で宿や露天の混合泉とは若干異なる

 

さらに2分ほど樹林の小道を進むと右手に露天風呂があり、加水も加温も循環もしていない源泉100%のかけ流しのお湯に入れます。洗い場もなく、脱衣場も狭めで、設備が良いとは言えませんが、野趣に富み、自然と一体になったお風呂です。管理がたいへんなこの露天に、高くもない料金で誰でも入浴ができるのは本当にありがたいこと。ここに来るといつも、「伊香保の皆さんありがとう」と感謝の気持ちがわいてきます。自然とお湯を大事に守っている伊香保のハートが感じられる場所です。

  熱めとぬるめの2浴槽あり。写真提供/渋川伊香保観光協会

 

⚫️宿へ、そして夜の伊香保温泉

石段を下から上まで、さらに奥まで満喫したら、今夜のお宿へ。でもその前にちょっと寄り道して糖分補給。伊香保は温泉まんじゅう発祥の地ともいわれています。10軒近いおまんじゅうのお店があるので、食べ比べてみるのも楽しそうです。   人気店のおまんじゅうは早々に売り切れてしまうことも。取材協力/勝月堂 

 

伊香保神社から石段を下りて行き、本日のお宿へ。こちらは石段が築かれるよりも前、500年以上前から伊香保の温泉に関わってきた老舗です。伊香保には長い歴史を伝えるお宿が何軒かありますが、いずれも今の時代に合うように常に手を入れ快適に過ごせる工夫がされています。

  利用者に人気の貸切り風呂も4カ所。取材協力/千明仁泉亭 

 

そして温泉のすばらしいこと!ざざっとお湯がかけ流されいます。客室は、山の眺めのいい部屋や、庭のある1階、ベッド仕様、源泉かけ流しのお風呂のついた部屋など様々なタイプがあるので、予算や好みに合わせて宿やお部屋を選んでくださいね。

 今回、ご協力いただいたお宿は、全浴槽「黄金の湯」かけ流し。温泉好きにはたまりません。写真は女性露天。客室も様々なタイプがあり眺めのいい部屋も。取材協力/千明仁泉亭 

 

夕食後は石段街へ。ライトアップされた伊香保の石段、とてもロマンティクですよ。   石段は24時までライトアップ 写真提供/渋川伊香保観光協会

 

⚫️伊香保みやげ

伊香保は現在アヒルブーム。射的の景品のアヒルが、とある石段スポットに多数まつられ、まるでアヒル神社のようになっています。土産物店でも伊香保アヒルやマグネットを発見!若い作家さんたちが創作するニュータイプのこけしも愛らしい!

  アヒル入浴中の人形やマグネット 取材協力/民芸山白屋

  個展でしか目にすることのない作家によるこけし。どのこけしも日本に一つだけ 取材協力/民芸山白屋

 

2日目 

伊香保温泉→バスで渋川駅→JRで中之条駅→バスで四万へ

 

翌日はお宿でゆっくり朝湯&朝ごはん。チェックアウト後は、伊香保ロープウェイ乗り場近くにある、渋川駅行きのバス停へ向かいます。高速バスのバス停とは違う場所なのでご注意を。

 

バスの発車は10時32分。30分で渋川駅に到着し、9分の待合せで吾妻線万座・鹿沢口行きのローカル列車へ。この路線、のどかな田園風景や渓流近くを走りながらゆっくりとのぼっていきます。気持ちよくて、ついウトウトしてしまう“眠くなるローカル線”の一つです。中之条駅到着は11時37分。駅前にバス停があり、四万温泉や沢渡温泉へのバスが発着します。温泉好きにはワクワクする地名が多くて脳内温泉旅も楽しめます。

 

渋川伊香保温泉観光協会℡0279-72-3151  https://www.ikaho-kankou.com

*料金や営業時間などは取材執筆時(2024年3月)のものとなります

 

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温泉ライター 西村理恵

長年、テレビや雑誌、ラジオ、ネットなどで温泉を紹介してきました。大のねこ好きで温泉ねこ活動にも参加。(公財)中央温泉研究所理事、日本温泉地域学会常任理事。著書に「ねこ温泉」