六合の七不思議【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
六合(くに)の由来
6つの地区が合わさった (2025/08撮影) photo by Yasushi Ishikawa
六合を「くに」と読める人は、実はそれほど多くありません。群馬県内でも読めない人がいるほどです。たとえ読めたとしても、その由来まで知っている人は、六合エリアに住んでいる人やゆかりのある人ではないでしょうか。「六合」の地名の由来は「古事記」や「日本書紀」に因んだものといわれています。明治22年3月に施行された町村制に伴い、「小雨」「生須」「入山」「太子」「日影」「赤岩」「草津」「前口」を合わせて草津村が誕生しました。その後、明治33年7月に草津村が分村し「草津」「前口」が合併し草津町と、「小雨」「生須」「入山」「太子」「日影」「赤岩」6つの大字からなる六合村に分かれました。この時、名実ともに「六合村」となったといいます。
カッパ伝説
晩秋の白砂川 (2025/11撮影) photo by Yasushi Ishikawa
カッパ伝説の話に出会ったのは、毎年9月に開催される「赤岩ふれあい感謝祭」でした。六合赤岩重要伝統的建造物群保存地区を歩いている時、「話を聞いていくかい」と昔語りの方に声をかけられました。椅子に腰かけ、お茶をいただきながら語られたのが、こんな話です。「むかしむかし、赤岩に湯本という医者がいたんだと、往診は馬で行き武芸にも長けた人だったんだと。日影村に行く途中、須川(すかわ)(現・白砂川)でカッパのいたずらに遭い、刀で応戦すると、カッパの腕が馬の尻尾にくっついていた。『これは珍しい』と思い、家宝にすべく帰宅した。すると深夜、門をたたく音がした。急患かと思い門を開けると、片腕がないカッパが立っていた。『わたしの腕を返してください、もういたずらはしませんから』と。医者が『腕がくっつく訳がないだろう』と言うと『どんな傷でもたちまち治す妙薬の作り方を教えるので返して欲しい』と。『それなら、よかろう』といい、カッパに腕を返すと、その薬を塗ったとたん腕が付いたという話」。今でも語り継がれる、六合ならではの不思議な昔話です。
なぞの三角形の物体は?
「なぞの赤い三角形の物体」 (2025/11撮影) photo by Yasushi Ishikawa
六合エリアに入ると沿道でよく目にする赤い三角形の物体。「これは何だろう?」と不思議に思い、共通点を探してみると、消火栓プレートの近くに設置されていることに気づきました。消防関係だから赤いのかなと推測し、地元の人に訪ねると「防火水槽関係のもんだよ」「雪が降るとね、防火水槽が見えなくなるから、場所を示すためだよ」「それと防火水槽の蓋の溝に雨水が入って凍結するのを防ぐ役割もある。いざ、水を使いたい時、水槽の蓋が開けられないと困るからね」と教えてくれた。謎だった三角形の正体が解け、思わず納得しました。なるほどなあと思った。

六合赤岩重要伝統的建造物群保存地区 景観に配慮した色 (2025/09撮影)
photo by Yasushi Ishikawa
天狗の足跡
天狗の足跡(2025/11撮影) photo by Yasushi Ishikawa
白砂川支流の八石沢川沿いの岩肌に残る「天狗の足跡」。世立八滝のひとつ「大仙の滝」近くにあり、国道292号線からも見ることができます。縦約10m、横約5mの大きな足跡は、大昔、天狗が岩に飛び移った際、裸足で着地したことでできた足の跡だと伝えられています。右足は長野原町与喜屋地区まで届いたともいわれています。天狗の話を地元の方に伺うと「世立のしだれ栗は天狗に踏まれて今の大きさになった。炭火焼の人が山小屋に泊まっていた時、夜になるとビシビシって木の倒れるような音やキッコキッコと木を切るような音がして、人間が『ワッハッハ』と笑うと山の中から『ワッハッハ』と笑い声が返ってくることがあった。これらは、天狗のいたずらとして語られているよ」と教えてくれました。

世立八滝の大仙の滝近くにある案内板(2025/12撮影) photo by Yasushi Ishikawa
え?アメリカの橋
若葉の頃 旧吾嬬橋(あづまばし) (2023/04撮影) photo by Yasushi Ishikawa
旧吾嬬橋は、群馬県内最古の道路鉄橋。1901(明治34)年に、渋川市と旧北橘村を結ぶ利根川の旧坂東橋として竣工されました。1959(昭和34)年3月に六合へ移設され、現在もその姿を残しています。米国製の輸入鋼材を用いた「ペンシルバニア型トラス鉄橋」国内唯一のピン結合タイプともいわれる土木遺産です。この橋の完成により、中之条町暮坂峠から草津温泉まで自動車道路がつながりました。それにしても、このアメリカ製の鋼材は、どうように内陸の群馬県に運ばれてきたのでしょうか。現在は老朽化のため、立ち入り禁止ですが外観見学は可能です。

「ペンシルバニア型トラス鉄橋」(2023/04撮影) photo by Yasushi Ishikawa

秋の旧吾嬬橋(あづまばし) (2025/11撮影) photo by Yasushi Ishikawa
道祖神の宝庫
荷付場の道祖神 仲睦まじい姿 (2025/12撮影) photo by Yasushi Ishikawa
六合エリアには、双体道祖神がたくさんあります。子孫繁栄・五穀豊穣・悪霊退散・夫婦円満・豊作祈願・旅の安全など、さまざまな願いが込められてきました。他の地域では見られないユニークな双体道祖神も多くみられます。地元の郷土史家によると「双体道祖神の中には、ある種の戒めの意味が込められているのではないかと」教えてくれました。作られたのは、江戸時代から明治初期に最盛期を迎えたといいます。中之条町立博物館「ミュゼ」などで『六合村の道祖神』と題した書籍が販売中です。興味がある方は、ぜひ手に取ってから訪ねてみてください。

引沼の道祖神 ほっこりする姿 (2025/10撮影) photo by Yasushi Ishikawa

出立の道祖神 1787年造立 (2025/10撮影) photo by Yasushi Ishikawa

世立西の道祖神 1832年造立 (2025/09撮影) photo by Yasushi Ishikawa
色が変わる川と湖
秋の青空が映し出されたのかブルーの白砂川(2022/10撮影)
photo by Yasushi Ishikawa
訪ねるごとに川や湖の色が違うのが面白い。晴れの日、雨の日、雪の日など天候に影響されることもあるかもしれません。自然と人の営みが重なり合い、生まれた景観もまた「六合の不思議」のひとつです。

紅葉に染まる白砂渓谷 (2022/10撮影) 白砂川はグリーン:眼下に見える竜宮橋の下に竜宮渕がある~膳椀の貸し借りの話が伝わる
photo by Yasushi Ishikawa

まるで南の島の海のような白砂ダム(2025/08撮影) photo by Yasushi Ishikawa

錦秋の上州湯ノ湖(品木ダム)抹茶ラテ色 (2022/10撮影) photo by Yasushi Ishikawa
食事処&オススメ立ち寄りスポット
よってがねえ館:本わらび粉配合の冷やしうどん¥600 安い ツルツル モチモチ 地元野菜の天ぷら (2025/09撮影)
photo by Yasushi Ishikawa
「よってがねえ館」は、天気のいい日は窓から浅間山や白根山を望める展望レストランです。おすすめの本わらび粉が配合された冷やしうどんは4月から10月までの期間限定で提供されています。他にもわらび餅ドリンクやわらび餅プリンなどのスイーツが人気です。また、季節ごとの地元の採れたて新鮮野菜が販売されています。季節によっては営業時間が異なるため、来訪前の問い合わせがおすすめです。

よってがねえ館から見た浅間山(2025/12/撮影) photo by Yasushi Ishikawa

国道292号線沿いの太子ポケットパークの公衆トイレ(2025/10撮影)
photo by Yasushi Ishikawa
「太子ポケットパーク」は国道292号線沿いにある公衆トイレ。便座に座ると野鳥や清流の音が聞こえてくる...かもしれません。これも「六合の不思議」ということで。配管の音でしたらごめんなさい。旅の休憩に利用してみましょう。
六合エリアは「不思議のくに」。訪ねるたびに発見があり、面白く、飽きることがありません。何気ない風景や標識の文字にも、物語が隠れています。日本遺産、近代化遺産、産業遺産、土木遺産、ラムサール条約湿地、温泉や湖…。周辺温泉地からのアクセスも良く、何度訪れても飽きることがありません。この機会に、少しミステリアスな旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
インフォメーション
中之条町観光協会
電話:0279-75-8814
住所:群馬県中之条町大字中之条町938(ふるさと交流センターつむじ内)
HP: https://www.nakanojo-kanko.jp/
中之条町六合振興課(中之条町六合支所内)
電話:0279-95-3111(代表)
中之条町ふるさと活性化センター「よってがねえ館」
電話:0279-95-5383
住所:群馬県吾妻郡中之条町入山乙2694-2
開館日:金・土・日 (1月から3月はわらび粉の精製作業を行うため不定期営業)
時間:10:30~15:00
えんとつちゃん