老神の魂が響き合う蛇の祭典 後編 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

大蛇まつり

更新日: 2025年06月27日

群馬県沼田市の夏を彩る「大蛇まつり」は、歴史と若者のエネルギーが融合した一大イベント。後編では、108枚限定の特別御朱印や大蛇みこし担ぎ手の限定グッズ、山口県の白蛇、ほたかやの焼きまんじゅう無料振る舞い、そして若衆みこしの勇壮な姿と振る舞い酒のエピソードをお届けします。伝統と新しい試みが交錯する祭りの魅力に迫ります。

 

108枚限定の特別御朱印と大蛇みこし参加記念グッズ

大蛇まつり(御朱印)

大蛇まつりの二日間、巳年にちなんで特別な御朱印が108枚限定で頒布されました。この御朱印は、今年初登場した全長108mの大蛇みこしの版画をデザインに取り入れ、神輿の長さにちなんで108枚のみ頒布。通常の大蛇まつり御朱印には若衆みこしのイラストが描かれ、一年を通じて頒布されていますが、限定版は特別感たっぷり。参拝者にとっては、祭りの思い出を刻む貴重な一枚となりました。

さらに、大蛇みこしを担いだ人限定で、参加記念としてTシャツ、手ぬぐい、木札が贈られました。特にTシャツは蛇をモチーフにしたスタイリッシュなデザインで、担ぎ手の士気を高める一因に。祭りの熱気を家に持ち帰るファンも多く、グッズは大好評でした。

 

<大蛇みこし参加記念。Tシャツ背面のデザインは担ぐ意欲を掻き立てる!>

 

<担ぎ手限定で配布された手ぬぐい、木札>

岩国から来た白蛇

岩国のシロヘビ

山口県岩国市から特別ゲストとして、国指定天然記念物の「岩国のシロヘビ」が大蛇まつりに登場しました。岩国の白蛇は、アオダイショウの白色変種(アルビノ)で、昔から「神様の使い」として崇められ、開運や金運のご利益があるとして地域の人々から愛され大切にされてきました。その性質はおとなしく、穏やかで人に危害を加えることはなく、神秘的な存在として親しまれています。

岩国には白蛇を祀る白蛇神社があり、商売繁盛や金運の守護神として多くの参拝者が訪れます。大蛇まつりでは、老神温泉の「大蛇信仰」と共鳴する存在として、訪れた人々に幸運の気配とスピリチュアルな魅力を放っていました。ご厚意で写真撮影させていただきましたが、赤い目と真っ白な体が織りなす神聖な姿に心奪われました。

 

<日本白蛇三大聖地巡礼スタンプラリー。御湯守の儀と大蛇みこしのデザインが秀逸>

 

また、会場では「日本白蛇三大聖地巡礼スタンプラリー」のスタンプが配布され、老神温泉、岩国市、東京の蛇窪神社を巡る旅の記念として人気を集めました。老神温泉はこの三大聖地のひとつとして、白蛇信仰の絆を深める役割を担い、スタンプの白蛇デザインは集める楽しさを倍増させてくれました。岩国の白蛇の登場は、祭りに地域を超えた繋がりと神聖な彩りを加えました。

焼きまんじゅう2000本振る舞い企画

バヤシ&ほたかや

沼田グルメの代表格、ほたかやの焼きまんじゅうが大蛇まつりで大盤振る舞い! なんと2000本もの焼きまんじゅうが無料で配られ、訪れた人々の心と胃袋を掴みました。この振る舞いに参加したのは、YouTube登録者数3220万人超の人気クリエイター、バヤシさん。食をテーマにした動画で世界的に知られ、群馬県沼田市出身の彼が地元のソウルフードを盛り上げるべく、焼きまんじゅうの無料配布に一役買いました。

 

<バヤシさんとじゃおうくん> 写真提供:老神観光協会

 

ほたかやの焼きまんじゅうは、小麦粉と米糀で作られた素まんじゅうに甘味噌だれを塗って焼き上げた群馬の名物。香ばしい焼目と甘じょっぱいふわふわな食感が特徴で、筆者も無料でいただき、その美味しさに感動しました!

 

<こちらが当日振る舞われた焼きまんじゅう。甘じょっぱいふわふわな食感で大満足!>

 

さらに、祭りの興奮冷めやらぬ中、筆者はほたかやで餡入り・餡なしの焼きまんじゅうを自ら購入。餡入りの甘さと、餡無しの味噌の風味が絶妙で、食べ比べが止まらない幸せなひとときでした。バヤシさんの地元愛が感じられる振る舞いは、祭りの温かさとグルメの魅力を倍増させました。

 

<上が餡入り焼きまんじゅう。下が餡なし。>

若衆みこし渡御が温泉街を駆ける

大蛇みこし

老神温泉の名前にも由来する「大蛇」を象徴する「若衆みこし渡御」は、全長25mの巨大な蛇を模したみこしを数十名の若者が担ぎ、温泉街を威勢良く駆け巡る大蛇まつりの核心です。この若衆みこしは、スタートすると老神温泉街の旅館を一軒一軒巡り、商売繁盛を祈ってお清めを行い、振る舞い酒をみんなで回し飲みします。そして、盃を飲み干すと、次の宿へ力強く練り歩く、ユニークで楽しいイベントです。

祭りのハイライトは、スタートの赤城神社から若衆みこしが「セイヤ! セイヤ!」の力強い掛け声とともに元気よく降りてくる瞬間。その迫力は圧巻で、蛇のうねるような動きと若者たちの汗と笑顔が一体となり、沿道の観客を熱狂の渦に巻き込みます。写真を撮ろうとした筆者も、その勢いに圧倒され手ブレ連発でした!

 

<急な階段も、ものともせずに大蛇を担いで降りてきました>

振る舞い酒と商売繁盛の祈念

大蛇まつり

若衆みこしの最大の見どころは、担ぎ手たちが一升瓶や巨大な盃を回し飲みする豪快な振る舞い酒! 商売繁盛を祈って旅館やお店の玄関に勢いよく入ってきたみこしは、一旦旅館前に戻り、そこで蛇の「とぐろ」のようにくるっと丸めて止めます。太鼓のドンドンという音頭や観客の手拍子にのせて、担ぎ手たちが蛇の真ん中で次々と一升瓶や盃を回して一気飲み。皆で振舞い酒を分け合う姿が祭りの熱気をぐんと盛り上げます。

 

<楽善荘:旅館前に威勢よく担ぎ手と大蛇が入ってきました>

 

<旅館の玄関先まで大蛇を入れます>

 

<宿泊客は中で迫力ある大蛇の写真を間近で撮影ができます>

 

<一升瓶の振る舞い酒! 太鼓の音頭と手拍子に乗せられ回し飲み!>

 

<金龍園:旅館前で一升瓶を回しのみ>

 

<東秀館:宿泊客も参加。楽しそうに振舞い酒を一気飲み>

 

旅館によっては、みこしが館内を通過してラウンジまで進み、間近でその迫力を体感できるのも魅力。老神観光協会によると、この振る舞い酒は最近の名物で、昔はコップで配っていたのが、担ぎ手が一升瓶や巨大盃を回し飲みし始めたことで大盛り上がりになったそう。 

一般の宿泊客や外国人参加者も盃を手に楽しそうに加わり、笑顔で歓声を上げ、太鼓の響きと一体となった熱気が温泉街を包みます。ホロ酔い気分で大蛇は次の旅館へ向かい、この一体感こそ老神温泉の心意気そのものです。

また、今年は東京・品川区の蛇窪神社から「江戸みこし渡御」が参加していました。蛇窪神社は、蛇を神使とする古社で、白蛇信仰や厄除け、商売繁盛のご祈祷で知られ、江戸時代から地域の守護神として親しまれています。

 

<蛇窪神社の江戸みこし渡御。威勢の良さで橋が揺れた>

 

大蛇まつりとの縁は、蛇信仰の共通点から生まれ、今回の参加は両地域の伝統を結ぶ特別な瞬間となりました。蛇窪神社の担ぎ手たちの掛け声が老神温泉の若衆と響き合い、橋が揺れるほどの盛り上がり。蛇窪神社の勇壮なみこしをパチリと撮影し、老神温泉と江戸の伝統が交錯する瞬間は、祭りのスケールをさらに大きく感じさせました。

大蛇まつりの前編・後編で、若衆みこしの迫力と振る舞い酒の豪快さに大興奮! 地元の人や観光客、外国人も一緒に盛り上がる祭りの一体感が最高でした。太鼓の音や掛け声が老神温泉をさらに熱くしていたので、今年参加できなかった方も、ぜひ来年はこの熱狂を体感してみてください!

 

※この記事は2025年5月9・10日に開催された「大蛇まつり」を取材したものです。イベント内容、スケジュールは開催年により変わりますので、老神温泉観光協会のHP・SNSでご確認の上、お出かけください。

 

インフォメーション

老神温泉観光協会

所在地:群馬県沼田市利根町老神607-1 
営業時間:9:00~17:00
定休日:火曜
電話番号:0278-56-3013

HP:https://www.oigami.net/

SNS:https://oigamionsen.gunmablog.net/

 

ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)

タマル

群馬の魅力を発信する「タマルのぐん旅」ブログを運営。旅形式で県内の秘境や温泉、隠れた名店などを綴っています。趣味は、県内の温泉巡りと地元グルメの食べ歩き。ロードバイクで挑む「榛名山ヒルクライム」や「まえばし赤城山ヒルクライム」で群馬の魅力ある自然を体感しています。