世界遺産・富岡製糸場とともに育まれた富岡市の中のフランスを知って、体験しよう!【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】
富岡製糸場から始まった富岡市とフランスの交流について
富岡市とフランスの関係は、富岡製糸場の設立に遡る。明治5年(1872年)に創業した、日本で最初の官営模範器械製糸工場の建設地として選ばれた富岡の地に、建設の指導者として明治政府に抜擢されたお雇い外国人、ポール・ブリュナ率いるフランス人技師団が住み込み、片田舎の富岡にフランスの風を吹かせた。そして富岡製糸場の世界遺産登録運動を機に、フランスとの歴史的な関係が脚光を浴び、2015年にポール・ブリュナの故郷であるブール・ド・ペアージュ市と富岡市が友好都市として結ばれることになるなど、富岡製糸場を中心に富岡市とフランスの交流が盛んに行われるようになった。実際、歴代の駐日フランス大使が任期中には必ず一度、日仏交流の1つのシンボルである富岡製糸場を訪れている。(富岡製糸場における日仏交流事業についてはこちら)
ダミアン・ロブション
富岡製糸場の中のフランスに触れる
「富岡製糸場と絹産業遺産群」の1つの構成資産として、2014年に世界遺産に登録された富岡製糸場の建設には、フランスから器械だけでなく建設技術や資材、それから寄宿舎生活を含む工場システムそのものが導入された。フランス人の手によって設計された建物には、「フランス積み」と呼ばれる特徴的なレンガの積み方、また生産の中心だった繰糸所には、フランスから大量に輸入された窓ガラスが使われた。繰糸所の中には創業当初、金属製の繰糸器300釜がずらりと並んでいた。その繰糸鍋を製造したのは、フランス東部の小さな村にある、セルドン銅工場である。廃墟になりかけたセルドン銅工場は、富岡製糸場との歴史的なつながりが地元の当局に注目され、2022年にリニューアルオープンした。こうして、富岡製糸場に行けば、富岡市とフランスの知られざる交流に触れることができる。
いつでもどこでも誰とでも楽しめる、南フランス発祥のゲーム「ペタンク」
東京2020パラリンピック競技大会で一気に有名になった競技「ボッチャ」。富岡市ではボッチャの原型、フランスの国民的スポーツ「ペタンク」を体験することができる。布製の球を使ったボッチャと違って、ペタンクは屋外で行われる、直径3cmの目標球に向かって鉄製の球を投げ合うスポーツ。フランスでは、家族や友人と一緒にピクニックなどにでかけたときに大活躍する、とてもポピュラーなレジャーとなっている。富岡製糸場近くのまちなか観光物産館「お富ちゃん家」内の観光案内所では、すぐにプレーするのに必要な用具を揃えた「ペタンクセット」をレンタルできる。ルールはペタンクセットと一緒に渡されるチラシに書いてあり、富岡市内でプレーできる場所もホームページから確認できるので、誰でも気軽に楽しむことができる。(ペタンクの詳細はこちら)
画像提供:(一社)富岡市観光協会・工女風着物でペタンクを体験
フランス生まれ、富岡育ちのご当地グルメ「富岡クレープ」
今、富岡では、「富岡クレープ」という新名物が注目を浴びている。富岡製糸場の技術者から伝わった「フランス文化」、群馬県各地で普及している豊かな「粉食文化」、クレープの語源やその滑らかな食感を連想させる「絹文化」をヒントに、もともと富岡市に多かったクレープ屋をはじめ、富岡市内の飲食店など14の事業者が、スイーツから食事系まで多種多様なバリエーションのクレープやガレットを開発し、提供している。「富岡クレープ」は、「高崎パスタ」や「水沢うどん」に代表される群馬県の粉食文化の新名物として、店舗販売はもちろん、様々なイベントに出店することにより、富岡市民の新しいソウルフードになっていく可能性もある。食べ歩きのイメージが根強いクレープだが、フランス流にお皿に乗ったクレープをフォークとナイフで食べてみたい。( 「富岡クレープ」の詳細はこちら)
豊富なバリエーションが楽しめる「富岡クレープ」
富岡製糸場が育んだ物語「富岡レトロマンス」の中のフランス
「富岡レトロマンス」とは、富岡の「レトロ」な街並みに秘められた「ロマン」に触れる旅のこと。富岡製糸場が育んだ物語「富岡レトロマンス」は、「工女さん」「フランス文化」「レトロ空間」「富岡シルク」という4つの要素を軸に構成され、これまで紹介してきた「ペタンク」や「富岡クレープ」も、こうした富岡とフランスを組み合わせた富岡ならではの世界観を表している。そして「富岡レトロマンス」の世界を体験コンテンツとしてまとめたのが「襷-たすき-」だ。「襷-たすき-」の専用ホームページでは、アクティビティ、クラフト、グルメやビューティーなど、富岡でしか味わえない様々なユニークな体験に申し込むことができる。「フランス文化」に因んだ体験コンテンツは今後も増えていくので、ぜひチェックしてみたい。
ビーフシチューの原型と言われるフランスの郷土料理「ブッフ・ブルギニョン」
私が思う富岡の中のフランス
明治時代初期、日本近代化のために、明治政府は富岡の地に高品質な生糸の大量生産を可能にした模範器械製糸工場「富岡製糸場」を建設した。富岡製糸場の建設には、ポール・ブリュナをはじめとするフランス人が多く関わっていた。富岡製糸場を中心に育まれてきた富岡とフランスの歴史的なつながりは、150年以上経った今も富岡ならではの新たな魅力づくりに活かされている。富岡製糸場は、解説なしに建物を見ただけではその本当の価値が伝わりづらい。富岡の中のフランスも、一見してすぐに見えてくるものではないが、富岡製糸場が育んだ物語「富岡レトロマンス」の世界に目を向けると、「ペタンク」や「富岡クレープ」など、フランスを五感で感じられる魅力的なコンテンツに出合える。富岡市を訪れたとき、日仏合作の富岡製糸場の歴史や価値に触れた後、富岡のレトロな街並みに秘められたフランスのロマンをぜひ、体験していただきたい。
(一社)富岡市観光協会・富岡ならではの体験をまとめた冊子「襷-たすき-」。ホームページからも検索できる。https://tomioka-tasuki.jp/
まとめ
富岡製糸場の歴史を紐解くと、フランスとの深くて広いつながりが見えてくる。富岡市では、過去と現在がつながり、富岡製糸場の設立とともに撒かれたフランス文化の種が、富岡ならではの日仏合作グルメや体験コンテンツとして、次から次へと今、花を咲かせている。
インフォメーション
富岡製糸場
住所:群馬県富岡市富岡1-1
電話:0274-67-0075
営業時間:9:00~17:00(最終入場16:30)
定休日: 12月29~31日
料金:大人1000円、高校・大学生250円(要学生証)、小・中学生150円
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