ビギナーでも冬に登れる! 人知れぬ魅力に溢れた群馬の低山9選

水沢山からの眺め

更新日: 2024年03月22日

赤城山から反時計回りに皇海(すかい)山、日光白根山、武尊(ほたか)山、至仏山、平ヶ岳、巻機(まきはた)山、谷川岳、草津白根山、四阿(あずまや)山、浅間山と、実のところ県境に連なるように11座の日本百名山を擁する登山大国、群馬県。首都圏からのアクセスも良いため、ウィンタースポーツ含め、年間を通して多くの人がこれらの山の周辺に訪れます。そんな百名山に隠れて個性的な輝きを放つのが“低山”です。遠くに周囲を取り囲む名山、近くに里山の原風景を一望できるうえ、混雑に巻き込まれず穴場的にのどかな山を独占できるのが低山の魅力。ここでは春先まで雪が残ることも多い群馬県において、初心者が冬でも安全に山登りを楽しめる低山をピックアップしました。入門・初級・中級の3段階に分かれているので、ぜひチャレンジの参考にしてください。ビギナー〜エキスパートを問わず、登った者にしか分からない低山の奥深い魅力にハマることでしょう。


※群馬県内でも積雪の比較的少ない低山をピックアップしていますが、天候によっては積雪があることもあります。また、積雪のない場合でも、冬期の登山に適した装備、服装で山登りをお楽しみください。

※山名前の*マークは「ぐんま百名山」を示します。

 

LEVEL.01 入門編

* 桜山(さくらやま)/標高約591m(藤岡市)

晩秋に咲く桜山の冬桜

 

山頂付近は桜山公園として、開花シーズンには多くの人が訪れる群馬県南部の低山。個性豊かな複数のハイキングコースが整備されるほか、山頂まで手軽にアクセス可能な駐車場も備えています。桜山公園は、冬と春に2度咲く冬桜をはじめ、2万5000本を超える四季折々の花が楽しめ、「上毛かるた」に詠まれ、「さくら名所100選の地」にも選出されています。

 

【インフォメーション】

桜山
〒370-1405 群馬県藤岡市三波川2166−1
TEL:0274-52-2214(桜山公園)
アクセス:上信越自動車道藤岡ICもしくは関越自動車道本庄児玉ICから車で約40分

 

* 崇台山(そうだいさん)/標高約299m (安中市・富岡市)

崇台山の山容。写真提供:安中市観光課

 

山頂広場は周囲の展望に優れる「ぐんま百名山」の1座。ぐんま百名山の中では5番目に低い標高だとか。どの登山口から登ってもコースタイム10〜35分、標高差にして40〜120mほどで登頂可能です。各ルートは整備が行き届いていて、誰でも短時間の快適な山歩きが楽しめます。山頂からは妙義山や赤城山など、四方に群馬県の山々を眺められます。

 

【インフォメーション】

崇台山
〒370-2311 群馬県富岡市下高尾
アクセス:上信越自動車道甘楽スマートICから車で約20分、もしくは上信越自動車道富岡ICから車で約30分

LEVEL.02 初級編

* 鳴神山(なるかみやま)/標高約980m(桐生市) 

鳴神山の鳴神大滝

 

赤城山の東側、栃木県にも近い標高約980mの双耳峰。眺望の良い桐生岳と木々に囲まれる仁田山岳からなり、山頂直下には雷神岳神社が鎮座します。桐生市のみに自生する希少なカッコソウ(見頃は5月)をはじめ、季節ごとにさまざまな動植物を観察できます。大滝登山口と駒形登山口ともに気持ちのいい沢沿いルートを周回でき、大滝登山口からすぐの鳴神大滝も見所のひとつです。

 

【インフォメーション】

鳴神山
〒376-0601 群馬県桐生市梅田町3丁目、川内町5丁目
アクセス:北関東自動車道太田桐生ICから車で約1時間

 

* 父不見山(ててみえじやま)/標高約1047m(神流町)

父不見山山頂。写真提供:神流町観光案内所

 

埼玉県との境にまたがる、ぐんま百名山および関東百名山。読み方は、“ててみず”、“ててめえじ”などあり、その由来も地元の伝説や歴史に関わるいくつかの説が語られます。山頂の“三角天”と彫られた石など、この山が秘める謎に想像を巡らせるのもいいのでは。山中の植林は仕事道が行き交うため要注意。麓には「道の駅 万葉の里」があり、神流川が見下ろせます。

 

【インフォメーション】

父不見山
〒370-1505 群馬県多野郡神流町森戸
アクセス:関越自動車道本庄児玉ICから車で約1時間

 

* 御堂山(みどうやま)/標高約878m (下仁田町)

御堂山のジジ岩・ババ岩。写真提供:下仁田町

 

山腹に高々と立つジジ岩とババ岩と呼ばれる奇岩が有名な、標高約878mの山。山頂こそ木立の隙間から景色を覗くことになりますが、道中の展望岩からは間近にジジ岩・ババ岩を見ることができます。荒船山や鹿岳等の眺めも良好。下仁田ICから国道254号を佐久方面に20分ほど進んだ西牧関所跡の脇が登山口となっています。登山道は一部ロープの張られた急登あり。

 

【インフォメーション】

御堂山
〒370-2627 群馬県甘楽郡下仁田町西野牧
アクセス:上信越自動車道下仁田ICから車で約20分、上信越自動車道松井田妙義ICから車で約25分

 

* 物語山(ものがたりやま)/標高約1019m (下仁田町)

物語山の山容。写真提供:下仁田町

 

かつてこの地にあった山城の財宝が埋められているという物語が残ることからこの名がつけられました。登山口は、国道254号沿い、サンスポーツランド前バス停から少し入った所にあり、アクセスに優れます。ヤマビルの生息が確認されていますが、冬季はその心配がないのもおすすめできるポイント。ガレ場を通り、西峰からは妙義山の荒々しい山容が望めます。

 

【インフォメーション】

物語山
〒370-2626 群馬県甘楽郡下仁田町南野牧
アクセス:上信越自動車道下仁田ICから車で約20分、上信越自動車道松井田妙義ICから車で約25分

LEVEL.03 中級編

水沢山(みずさわやま)/標高約1194m (渋川市)

水沢山山頂からの眺め

 

榛名山の西側に位置する独立峰。別名、浅間山(せんげんやま)。尾根が東西に延び、水沢うどん街道の奥に佇む水澤観世音と、渋川松井田線経由で伊香保森林公園から登ることができます。整備が行き届いていて特別難所はなく、階段状の登りが続きます。細い切り立った稜線に上がってからは視界がひらけ、気持ちの良い稜線歩きとなります。言うまでもなく、頂上からの見晴らしも抜群。

 

【インフォメーション】

水沢山
〒377-0102 群馬県渋川市伊香保町水沢
アクセス:関越自動車道渋川伊香保ICから車で約20分(登山口「水沢観音」)

 

* 諏訪山(すわやま)/標高約1207m (神流町)

諏訪山からの見晴らし。写真提供:神流町観光案内所

 

県内の上野村にも同じ名前の山があるため、埼玉県との県境にあるこちらは志賀坂(しがさか)諏訪山と呼び分けられます。志賀坂トンネルから尾根上を歩くルート、谷間を歩くルート、冬に氷結する九十の滝から登るルート、すぐ南に屹立する両神山からの縦走ルートの4つのルートあり。豊かな森に覆われた山頂には長野県の諏訪大社の分社、諏訪神社が建ちます。

 

【インフォメーション】

諏訪山
〒370-1602 群馬県多野郡神流町神ケ原
アクセス:関越自動車道花園ICもしくは本庄児玉ICから車で約1時間20分(志賀坂駐車場)

 

* 十二ヶ岳(じゅうにがたけ)/標高約1201m (高山村・渋川市)

高山村と渋川市の境に位置する標高約1201mの低山。山頂は360度ひらけており、四方を取り囲む県内外の名だたる山々や周辺の里山風景、渋川市や前橋市方面の市街地も見渡せます。高山村側の小野子山林道からも登山可能。ステップアップして中ノ岳と小野子山を合わせた「三並山」の縦走もおすすめです。十二ヶ岳については次頁の登山レポートをチェック!

 

【インフォメーション】

十二ヶ岳
〒377-0701 群馬県吾妻郡高山村尻高
アクセス:上信自動車道箱島ICから車で約30分

 

360度の大展望が楽しめる十二ヶ岳登山レポート

 

ここからは、登山経験豊富な雑誌編集者が実際に冬季の十二ヶ岳に登った様子をお届けします(情報は2024年2月4日に取材したもの)。道中の写真やレポート等のリアルな情報を参考に、低山登山のイメージを膨らませてみてください。

 

 

今回は、十二ヶ岳の西側に位置する十二ヶ岳登山口駐車場(結婚の森登山口)から約500mの標高差を往復するルートを選択。国道353号線からJR吾妻線の小野上温泉駅手前で林道に入り、採石場を過ぎた終点に20台ほどの広々とした駐車場があります。取材日(2024年2月4日)時点では雪などによる通行への影響はなし。東屋と簡易トイレも備えるこの駐車場に車を止めて登山開始とします。午前7時頃、この日一番乗りで登山口を出発。出発時のコンディションは曇り、マイナス2度。

 

 

スタートはゆるい林道ハイク。本格的な山道に入る前のいいウォーミングアップになります。

 

 

コースタイム20分の登りを経て林道が終わり、いよいよ山道に入ります。トレッキングポール代わりにぴったりの枝が道標にいくつも立て掛けてあるので、1本借りていくことに。

 

 

登山道は概ね明瞭で、適度な間隔でピンクテープが取り付けられているので、道迷いの心配はありません。

 

 

しばらく登ると「見透し台」で南側の視界がひらけます。この日は吾妻川両岸に広がる集落や向かいの榛名山、伊香保の温泉街も肉眼で捉えられました。

 

 

こちらはさらに少し登った2番目の展望地。正面の小野子山には北面を中心に雪が残っているようです。飛び出した先端の岩は足元が切れ落ちているので要注意。

 

 

直前の降雪状況や時期にもよりますが、一部雪が残る箇所や地面が凍結している可能性があるので、様々な状況に対応できるチェーンスパイクの携行をおすすめします。

 

 

ロープのついたラストの坂を登りきると山頂に到着。ちなみに坂の手前に分岐があり、山頂を巻く迂回路となっているので、通り過ぎてしまわないように。

 

 

ベンチなどはありませんが、周囲の景色を眺めながら休憩のできる広めの山頂。山座同定盤があり、見えている山容と照らし合わせてどれが何の山かが判別できます。

 

 

西側には日本百名山に名を連ねる四阿山と草津白根山。

 

 

北側に同じく日本百名山の谷川岳。その他、北東方面に武尊山や至仏山、東に男体山や皇海山、南東方面には群馬県庁、さらには天候次第で東京スカイツリーも眺められます。

 

 

 

 

 

道中は大岩や動植物、森が生む不思議な形状など、登る者を飽きさせません。子連れやカメラ片手にも楽しめる山です。取材時は、県の鳥であるヤマドリに遭遇し、地鳴りのような羽音を立てて飛び立つ姿を観察することができました。

 

この日の登山ですれ違ったのは3グループ計8名。本来の静かな山の姿が味わえて、山頂の絶景をひとり占めできるのも冬の低山だからこそ。一方で登山道の木の幹などに一定間隔で緊急連絡表示があり、緊急時は付近の記載番号を伝えることで、こちらの大まかな位置情報を割り出せるので安心でした。

TOPIC.01 低山登山の行動食には地元の名物を選んでみては?

 

(写真左)田舎まんじゅう

群馬県の平野部で栽培される小麦を使った郷土料理のひとつです。「炭酸まんじゅう」や「ふかしまんじゅう」の呼び名があります。小麦粉を練った生地で餡を包み、蒸し器で熱を通して作ります。昔は甘いものが貴重だったため、このおまんじゅうが特別なごちそうでした。登頂後のご褒美にいかがでしょうか。

(写真右)やきもち

こちらも小麦を使った郷土料理。地域によって作り方は様々で、多くは味噌や醤油、山菜などとともに丸く焼き上げます。「おやき」や「じり焼き」と呼ばれることも。農作業や山仕事の携行食として親しまれてきただけあって持ち運びやすく腹持ちもよし。

 

登山口へ向かう途中で道の駅や直売所をのぞいてみると、地元ならではの登山のお供が見つかるかもしれません。他にも帰りの下山メシで地域の名物料理を味わうなど、登山と食を結びつけることで地域との繋がりが感じられ、山の楽しみが広がります。

TOPIC.02 下山後は天然温泉に浸かって疲れを癒す

 

十二ヶ岳登山口駐車場から約20分、渋川方面へ向かう帰り道の途中にある日帰り天然温泉。大人・中学生は、2時間400円という良心的な入浴料ながら趣ある露天風呂まで楽しめます。鉄分やマグネシウムを多く含む黄金色の湯は源泉掛け流しで、浴槽にヒノキを使用した内湯にも注目です。洗い場にはシャンプー、ボディソープが備え付けなのも登山後には嬉しいポイント。

 

【インフォメーション】

金島温泉・富貴の湯
〒377-0025 群馬県渋川市川島99-1
TEL:0279-23-0001
定休日:毎月15日(但し土、日、祝日は営業。翌日休み)
アクセス:JR吾妻線金鳥駅から徒歩約4分、関越自動車道渋川伊香保ICから車で約15分、関越自動車道赤城ICから車で約20分
http://fuukinoyu.jp/