大迫力の天狗みこし!沼田まつりの伝統と熱気 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

沼田城跡散策、祭りの前に歴史を体感
<JR沼田駅。沼田まつりや真田の歴史を訪ねる旅の起点>
沼田まつり取材のため、筆者は予定より早く沼田駅に到着。時間があったので、祭り会場に向かう前に沼田城跡を散策しました。
<沼田城址公園の入り口>
<沼田城址公園に立つ真田信之と小松姫(稲姫)の石像。真田氏の歴史と沼田まつりの伝統を今に伝えるシンボル>
沼田城は、戦国時代に真田氏が治めた歴史ある城で、現在は石垣が残っています。緑豊かな公園として整備され、静かな雰囲気のなか、かつての城下町の面影を感じました。城跡から見える沼田の街並みは、祭りの賑わいを予感させる活気に満ちています。
<沼田城跡の西櫓台石垣>
歩きながら、江戸時代から続く祇園祭のルーツや、地域の誇りが息づく沼田の歴史に思いを馳せました。石垣の間を歩くたびに、戦国時代の武将たちの足音が聞こえてくるようでした。
<沼田城址から望む美しい北側の山並み>
この散策で、祭りの背景にある深い文化に触れ、取材への期待がさらに高まりました。祭りの熱気を味わう前に、沼田の歴史を体感できたのは貴重なひとときでした。次は、祭りの全体像を知るため、沼田まつりの歴史と概要を振り返ります。
沼田まつりとは?
<街全体がみこしとまんど(山車)の熱気で大盛り上がり>
沼田城跡を散策した後、時間が迫ってきたので祭り会場に移動しました。観客も沢山集まり、街はすでに熱気に包まれています。
沼田まつりは、江戸時代に始まった須賀神社の祇園祭を起源とし、疫病退散を願う神事として親しまれてきました。本町と称する上之町、中町、下之町の3か町の氏子が中心となり、農家の夏の仕事が一段落した時期に開催。
「蚕すんだら沼田のまつり、つれていくから辛抱おしよ」と唄われ、厳しい農作業の慰めとして利根一円の生活暦に刻まれました。1970年に祇園祭と商工祭が統合され、市民総参加の祭りに進化します。
<まんど(山車)を力強く引っ張る氏子たち>
<絢爛豪華なまんど(山車)を間近で見られます>
現在の沼田まつりは、須賀・榛名両神社の神輿渡御、優美なまんど(山車)、千人おどり、約150人の女性が交代で担ぐ天狗みこしなどを中心に、例年8月3日から5日に行われます。20万人以上が集まり、街全体が活気付く人気のお祭りです。祭りの概要を知った後は、開幕を飾る天狗みこしの出発式へと向かいます。
天狗みこし出発式、祈願祭で厳かに開幕
<荘厳な祈願祭が始まりました>
祭りの幕開けを飾る天狗みこしの出発式がメイン会場(沼田市中央公民館跡地)で行われました。多くの観客が集まる中、巨大な天狗面を載せたみこしを担ぐ準備を進めます。出発前には、無事と安全を祈る「大天狗祈願祭」が厳かに執り行われました。
<天狗みこしの祈願祭で、迦葉山弥勒寺山主が祭りの安全を祈祷>
その後、天狗みこしの渡御を前に、揃いの法被と帯で彩られた女性たちが華やかな姿で士気を高め、沼田まつりを盛り上げます。
<先導する山車に乗り太鼓で盛り上げるたたき手たち>
<天狗みこしの渡御を前に、踊り手「舞華」が気合を入れて準備!>
<揃いの法被と帯で彩られた「舞華」が、華やかなパフォーマンスで沼田まつりを輝かせます>
<華やかな踊りで会場を盛り上げる>
天狗みこしを囲む女性たちが、お囃子とリズミカルな掛け声「ワッショイ!ワッショイ!」「ソレソレソレソレ」を高らかに響かせ、会場を熱気で包みました。筆者は今まで男性の「わっしょい!」しか聞いたことがなかったので、女性の力強い声に新鮮な感動を覚えました。
<先導車の後から、天狗みこし1基が動き出しました>
<いよいよ天狗みこしのスタートです!>
会場は活気に満ち溢れていて、筆者もワクワク感が収まりません。さあ、本格的なお祭りの開始です!
まんど共演、伝統の山車が夜を彩る
天狗みこし出発式の熱気が残る中、メイン会場(沼田市中央公民館跡地)で「各町まんど共演」が開催されました。
<まんど共演、夜空に輝く伝統の山車>
沼田まつりの「まんど」は、氏神様の御霊を奉納する神聖な山車で、一般的には「山車(だし)」や「屋台」と呼ばれ、関西では「山」「だんじり」「山ぼこ」とも称されます。祭礼で練り歩く飾り車は「ねりもの」と呼ばれますが、沼田では古くから「まんど」の愛称で親しまれています。
かつて神事中心の時代、みこしの先導を務めた「まんど」は、ある時期に従来の形式から山車形式に変化したと考えられ、現在は10カ町10台が祭りに華を添えます。人形を飾り、お囃子で盛り上がるその姿は圧巻です。
<夜空の下、ライトアップされた、まんど(山車)が幻想的に輝く>
<に組のまんど(山車)は、歌舞伎の演目「暫」に登場する主人公、鎌倉権五郎景政(かまくらごんごろうかげまさ)を模した人形が輝いていました>
筆者は観客の合間をぬって移動し、光り輝くまんど(山車)を撮影しました。その荘厳な姿に目を奪われ、各町の個性が競演する美しさに感動しました。この光景は祭りのハイライトで、次は千人おどりの賑わいが待っています。
千人おどり、百鬼夜行で新たな風!
まんど共演の余韻が残る中、千人おどりが本町通りで始まりました。昭和34年(1959年)頃より、町内の婦人会や商工業者の婦人が、沼田小学校校庭や沼田公園で「沼田音頭」「沼田天狗ばやし」を輪おどりとして披露していたのが始まりです。
<沼田音頭を踊る参加者たちの様子>
昭和47年(1972年)頃から沼田まつりに参加し、昭和63年(1988年)以降は歩行者天国内で「流しおどり」として親しまれています。事前申し込み不要で、浴衣姿でなくても誰でも自由に参加できるのが魅力です。子供から大人までが参加し、にぎやかな列がゆっくり進みます。
また、今年は新たな試みとして、千人おどりに妖怪や個性的な衣装で参加する「百鬼夜行」が登場。筆者が撮影中、ユニークな装いの集団に目を奪われました。
<百鬼夜行で踊る!千人おどりの新たな魅力>
終了後にお話を伺うと、沼田市にある「天狗のお店 こぐれや」の店主が企画したもので、市外の方や若い世代にも楽しんでもらおうと考えたそうです。
<撮影中に「こぐれや」の天狗様を発見!思わずシャッターを切りました>
<カメラ目線もいただきました>
「天狗のお店 こぐれや」の店主の感想では、「伝統ある祭りで、市外の人や若者に参加してほしいと思い、浴衣ではなく思い思いの姿で、沿道の子供たちに楽しんでもらう企画を実行しました。急な募集でも30人ほどが参加し、声援やカメラを向ける人々の反応が嬉しかったです。来年は平日開催ですが、地元高校生にも協力を呼びかけ、人数を増やして恒例の企画にしたい」とのこと。
伝統と革新が融合したこの企画は、沼田まつりに新たな風を吹き込みました。次はいよいよ、天狗みこしの勇壮な巡行が祭りを締めくくります。
天狗みこし渡御
千人おどりの賑わいを経て、天狗みこしは沼田市街を練り歩きます。天狗みこしは、1972年に沼田まつりに登場し、迦葉山弥勒寺に奉納された張子の大天狗面をみこしに仕立てたのが始まりです。
現在は、1983年に沼田青年会議所が奉納した張子の天狗面と、1999年に沼田商工会議所青年部が観光PR用に作製したFRP製の天狗面の2基を使用しています。
顔の長さ4.3m、幅2.3m、鼻の高さ2.9mの巨大なみこしを、約150人の女性が交代で力強く担ぎます。オレンジ色の法被をまとった女性担ぎ手たちが、威勢の良いかけ声を響かせながら、約3時間にわたり市内を巡行します。
筆者は祈願祭で天狗みこしの迫力に圧倒されながらも、沼田市役所横に先回りをして撮影することにしました。
<市役所前でワクワク待機!「舞華」と太鼓の山車が祭りを盛り上げます>
<ド迫力の天狗みこしが市役所前に! その大きさにみんな目を奪われました>
<天狗みこしの迫力に観客熱狂! 沼田まつりのスターに大興奮>
巨大な天狗面が近づく光景は大迫力で、そのあまりの大きさに口をあんぐり。
<間近で感じる天狗みこしの圧倒的なスケール! >
筆者は、カメラのシャッターを切り続け、汗だくになりながらその勇壮な姿を激写。撮影中、外国人の方に天狗みこしの記念撮影を頼まれる場面もあり、皆が祭りを楽しむ様子に心が温まりました。
また、最終日には2基の天狗みこしがメイン会場に戻ると、参加者と観客の「ラッセラー、ラッセラー」の力強い掛け声が夜空に響きます。
<天狗みこしの勇壮なフィナーレ!>
写真提供:沼田市役所広報
<天狗みこしがメイン会場に戻る一体感あふれるシーン>
写真提供:沼田市役所広報
担ぎ手たちのリズミカルな動きと一体感が会場を一つにし、祭りは最高潮の盛り上がりで幕を閉じました。この熱気は祭りの余韻として心に残ります。
沼田まつりは、群馬の夏を熱く彩る伝統の祭りです。天狗みこしの勇壮な巡行、千人おどりの一体感、まんど共演の華やかさが、筆者の心に響きました。是非、皆さんも来年の8月に地域の絆を体感してください。筆者も今から来年の開催が待ち遠しいです!
インフォメーション
沼田まつり
住所:群馬県沼田市中心市街地
電話:0278-23-2111(沼田まつり実行委員会)
開催日時:例年8月に開催
HP:https://www.city.numata.gunma.jp/kanko/numatamatsuri/
SNS:https://x.com/NumatacityPR

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