「7,000体の雛人形と108mの大蛇!老神温泉の驚き探訪」前編 【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

老神温泉(大蛇みこし)

更新日: 2025年04月17日

老神温泉の魅力を前編後編でたっぷりお届け!前編では、利根観光会館に約7,000体の雛人形が並ぶ「びっくりひな飾り」を現地レポート。ひな壇や手作りつるし雛を紹介します。そして、今年の干支・蛇にちなんで、全長108mのギネス記録を持つ「大蛇みこし」にも注目!5月の「大蛇まつり」など、ユニークなイベントと伝統文化を多角的に紹介していきます。

老神温泉ってどんなところ?

老神温泉

群馬県沼田市利根町に位置する「老神温泉(おいがみおんせん)」は、片品川沿いの美しい渓谷に抱かれた静かな温泉地です。赤城山の北側に広がるこのエリアは、自然豊かで穏やかな空気が漂い、訪れる人を優しく迎え入れます。

 

片品渓谷は片品川が作り出した深い谷。切り立った岩壁や清流、そして季節ごとに変わる自然が魅力です。

 

目印となる「老神温泉郷」の看板が立つこの場所には、13軒の旅館やホテルが点在し、温泉街を形成しています。古くから皮膚病や神経痛に効く湯治場として知られ、「美人の湯」や「傷治の湯」とも呼ばれる良質な温泉が自慢。泉質は単純温泉やアルカリ性単純硫黄温泉など店舗によって様々ですが、肌に優しく、湯上がりにはしっとりとした感触が楽しめます。世代を問わず楽しめるのがとても良いですね!

 

老神温泉が「美人の湯」と呼ばれる理由は、肌への優しさと美肌効果にあります。

硫黄泉は血行を良くし、新陳代謝を促す働きがあるので、お湯に浸かると肌がしっとりスベスベに感じられることが多いそうです。

 

また、老神温泉は自然と歴史が織りなす魅力的なスポットに囲まれています。車で約10分ほどの距離には「東洋のナイアガラ」と称される「吹割の滝」があり、迫力ある水流と周辺の自然美が観光客を惹きつけます。

春は新緑、夏は涼やかな渓谷、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季折々の風景が楽しめるのもポイント。自然に囲まれた穏やかな環境と、素朴で温かい地域の雰囲気が、老神温泉の大きな魅力なんです。

ギネス認定!干支の「大蛇」がシンボル

大蛇みこし

老神温泉の名を全国に知らしめたのが、干支にちなんだ巨大な「大蛇みこし」です。アオダイショウがモデルで、緑がかった色合いが格好良く、迫力満点!全長108.22メートル(頭8メートル、胴体100メートル)で、普段は利根観光会館に飾られており、見学することもできます。

 

訪れた家族連れは大蛇の長さと迫力に驚いていた様子でした

 

2013年に「世界一長いお祭り用の蛇」として、世界記録に認定されている「大蛇」。老神温泉観光協会の会長、小林さんに当時のことを聞くと、認定の際は地域が大盛り上がりで、蛇を実際に測る様子をビデオに撮るなど、大騒ぎになった様子が今でも語り継がれているようです。この模様は沼田市の広報やメディアでも取り上げられました。

 

ギネス認定書「世界一長いお祭り用の蛇」 写真提供:老神温泉観光協会

 

観光案内所付近にある「赤城神社」

境内のお賽銭箱の奥に「複写したギネス認定書」があります。こちらはご参拝される方どなたでもご覧いただけます。

 

さらに「この大蛇みこしを作るアイデアは、どうやって生まれたのか?」と尋ねると、こんな話が出てきます。昔、老神温泉の旅館は今のような安定した地形の上ではなく、片品川沿いにありました。その川沿いにある旅館に行くには、人がすれ違うのもやっとの細い道を通るしかなかったそうです。それでも、地元の人たちは「年に一度のお祭りなんだから、みこしを担いで来てほしい」と願っていました。

 

昭和時代の老神温泉。当時の貴重な写真。 写真提供:老神温泉観光協会

 

その後、昭和22年・23年に起きた災害で、旅館が大きな被害を受けたことがありました。でも、旅館の人たちは「それでも頑張って旅館を続けよう!」と決めたんです。その時に「頑張る旅館を応援するために、神様の蛇をみこしにして持っていこう」というアイデアが出て、そこで生まれたのが「蛇みこし」だったんですね。

 

片品川沿いに旅館があるのがわかりますね。 写真提供:老神温泉観光協会

 

そして、興味深いお話も聞けました。大蛇みこしの長さが108メートルに決まった背景には、ちょっとしたライバル心があったようです。当時、新潟県関川村にあった蛇の神輿がギネス記録を持っており、それを超えたいという思いがきっかけとなったそうです。「せっかく作るなら世界一にしよう」と考え、頭部分を8メートル、胴体を100メートルに設計し、合計108メートルの巨大なみこしが完成しました。

5月の風物詩「大蛇まつり」の賑わい

大蛇まつり

2013年に開催された「大蛇まつり」の様子 写真提供:老神温泉観光協会

 

毎年5月の第2金曜と土曜に開催される「大蛇まつり」は、老神温泉最大のイベントです。赤城神社での神事を皮切りに、およそ300人で担がれる大蛇のみこしが温泉街を駆け巡ります。威勢の良い掛け声とともに温泉街を巡る様子は非常にインパクトがあります。

この大蛇みこしは、12年に一度、巳年(蛇の年)にだけ登場する特別なみこしです。奇遇なことに、2025年がちょうどその巳年にあたり、長さ108メートルで迫力満点の大蛇みこしを見ることができます。

重さは2トンもあり、約300人が力を合わせて担ぎます。このみこしは、地域を守ってくれる神様への感謝を込めたもので、ただ大きいだけでなく、みんなの想いがぎゅっと詰まったシンボルなんです。

 

白い大蛇みこし(子供みこし)を担ぐ様子 小学生・中学生の皆さんが昼間に担ぎます。 写真提供:老神温泉観光協会

 

大蛇みこしを担いだ参加者の声も聞いてみると、宿泊客の飛び入り参加もOKなので大好評のようです。アメリカやオーストラリアからの参加者もいるようで、最初から最後まで楽しそうに参加する姿が見られます。祭りの盛り上がりが伝わってくるエピソードですね。

 

威勢が良い!若衆みこしの様子 夕方から各旅館などを巡って祈願をします 写真提供:老神温泉観光協会

第12回「老神温泉びっくりひな飾り」で春の訪れを

老神温泉びっくりひな飾り

今まさに注目を集めているのが、2月から3月にかけて開催中の「老神温泉びっくりひな飾り」です。毎年恒例のこのイベントは、寄付などで県内外から集まった約7,000体以上の雛人形が展示され、訪れる人を驚かせます。

 

フィクションの雛飾り。ユニークで楽しいですね!

 

メイン会場である利根観光会館では、華やかなひな飾りで彩られ、春の訪れを感じさせる風物詩となっています。ギネス認定された大蛇と同様に、老神温泉ならではのユニークな魅力を堪能するチャンスです。

 

筆者が気に入ったのが「木目込み人形」江戸時代中期に柳の木で作ったのが起源のようです

 

老神温泉の「びっくりひな飾り」が始まった背景には、歴史的なつながりと地域間の絆がありました。きっかけは、沼田城主・真田信之の妻である小松姫。彼女は鴻巣市で亡くなり、その遺骨が鴻巣市、沼田市、上田市の3つの場所に分けて納められました。この縁から、鴻巣市と沼田市は友好協定を結ぶことに。

鴻巣市は人形作りが有名で、特に「鴻巣びっくりひな祭り」という大きなひな人形のイベントで知られています。その鴻巣市から、老神温泉観光協会に500体のひな人形が贈られたのが始まりです。これをもとに、老神温泉で「老神温泉ひな祭り」がスタートしました。最初は小さなイベントでしたが、年々人形の数が増え、規模も大きくなり、平成30年(2018年)には「老神温泉びっくりひな飾り」と正式に名前が変更され、今では定着したお祭りになっています。

利根観光会館で7,000体の雛人形をレポート

老神温泉びっくりひな飾り(会場)

実際に筆者が利根観光会館の大ホールに入ると、その光景に息をのみました。幅18メートル、高さ3.8メートルの特設ひな壇に約7,000体以上の人形が並び、15段のひな壇や手作りのつるし雛が展示されています。

 

 

こちらの準備には開催2ヶ月前からスタートし、全体で約300人が関わり、特に地元の中学生がボランティアで並べるお手伝いをしてくれています。ただ、最近は携わる人が年々減少傾向にあり、人集めに苦労しているそうです。この記事を見て興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ参加していただけると嬉しいです。

「びっくりひな飾り」で筆者が『すごい!』と感じたのは、寄付されたひな人形への対応です。このイベントで新たに50体ほどの新しいひな人形が加わりますが、寄付した人たちが会場に来たとき、「うちの人形はどこにあるのかな?」と尋ねてくることがあるそうです。そんな時、受付に行けば「あなたが寄付した人形はここですよ」と、ちゃんと教えてくれる仕組みになっているんです。寄付した人の人形がすぐ分かるように管理されていて、その細やかな気遣いが感動的でした。

 

小松姫の人形

今年の見どころは新たに寄贈された50体の人形を並べた展示と小松姫の歴史を知ってほしいそうです。

 

お内裏様と三人官女が豪華絢爛に飾られています

 

地元の人は2つの保育園の子どもたちが作ったひな飾りが毎年楽しみだそうでほっこり温かいエピソードが聞けました。

 

入口には明治・大正時代の裃雛(かみしもびな)や御殿雛(ごてんびな)が縦横に並び古い人形を見て懐かしがる人も多いそう。

 

約7,000体のひな人形が並ぶ迫力、細やかな心遣い、地域の愛情。これらは、実際に見に行かないとわからない特別なものです。そして、そんな中でも一番印象に残ったのは老神温泉観光協会の会長、小林さんの「実際に足を運んでびっくりしてほしい!」という熱い思いに触れたことでした。

 

全長108メートルの大蛇みこしは、そのスケールの大きさにただただ驚くばかり。地域の人々が守り神に捧げる敬意と団結力が生み出した迫力に心打たれました。5月の大蛇まつりは活気に満ち、参加者の笑顔や外国人観光客の楽しむ姿から、伝統が今も生きていることを実感。一方、約7,000体を超える雛人形の展示は色鮮やかで豪華絢爛、その数に圧倒されました。最後に、小松姫の想いに触れることができ、老神温泉の驚き探訪は感動と学びの連続でした。

 

インフォメーション

「赤城神社例祭 老神温泉 大蛇まつり」

2025年は12年に1度の巳年!

日程:2025年5月9日(金)10日(土)

108mの大蛇みこし:5月9日(金)16:00〜登場

 

「老神温泉 びっくりひな飾り」

施設名:利根観光会館
住所:群馬県沼田市利根町老神607-1
営業時間:9時30分から16時まで
最終日は2025年年3月23日(日曜日) 午前9時30分から正午まで
定休日:火曜日
料金:開催協力金100円〜(任意)
開催期間:2025年2月15日(土)から2025年3月23日(日)まで

 

※2つの問い合わせ先

老神温泉観光協会

所在地 〒378-0322  群馬県沼田市利根町老神607-1 
営業時間  9:00~17:00
定休日  火曜日
電話番号 0278-20-5050

HP:https://www.oigami.net/

SNS:https://oigamionsen.gunmablog.net/

 

ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)

タマル

「タマルのぐん旅」という個人ブログを運営。群馬県内のお気に入りスポットやお店を旅行記として紹介しています。筆者は群馬県の豊かな自然や温泉をこよなく愛し、特に伊香保温泉の情緒あふれる石段街の散策が趣味です。スポーツでは、ロードバイクを使って「榛名山ヒルクライムin高崎」や「まえばし赤城山ヒルクライム大会」に参加しています。