山城とむかし町を巡る~金山ハイク&伊勢崎さんぽ
更新日: 2023年02月14日
今回は、太田市で中世の遺構が眠る山城を、伊勢崎市で明治~大正期の面影残る町を巡る散策をご紹介。自然の中を歩いてリフレッシュできるだけでなく、古代から近代までの壮大な歴史ロマンにどっぷり浸れる充実した小旅行が楽しめますよ!
復元された名城、史跡金山城跡を目指して
まずは、群馬県南東部に位置する太田市へ。市街北部に鎮座する標高239mの金山を目指します。こんもりと緑に覆われた山は、現在は古刹やレジャースポットが点在する市民憩いの場所ですが、古には万葉集に詠まれ、中世には難攻不落の名城として知られた山城がありました。鎌倉幕府を倒したのち、南朝を率いた活躍ぶりが『太平記』に記されている名将、新田義貞。その新田一族により1469年に築かれた金山城が山内に復元されており、往時の様子を偲ぶことができます。
太田駅から2kmほど北に位置するのが、徳川家康が、祖とする新田義重の菩提寺として建立した「大光院」。初代住職の呑龍上人に由来する「呑龍様」として、地元で親しまれる寺の境内からハイキングはスタート。なだらかな山麓を歩き、新田義貞の菩提寺である金龍寺を過ぎると、10分程度で「史跡金山城跡ガイダンス施設」へ。建築家・隈研吾氏による、山城の石垣をイメージした外観が特徴の建物が目を引きます。ここで、金山の歴史や金山城の構造について学び、史跡の概要をおさえておきましょう。
敵を悩ませた堅守の城とは
ガイダンス施設で概要を学んだ後は、傾斜のある登山道を約15分で西城へ。西城は、金山城本丸を守る支城群の一つで、城の西側を守っていたところ。この山城の西端から緩やかな見学ルートを約30分歩いて本丸を目指します。戦国の有力大名から幾度攻められても陥落することのなかった金山城には、山中でとれる金山石がふんだんに使われ、石垣をはじめ城を守る仕掛けが各所に施されていました。
物見台下基壇は、通路の正面に石積みを配置して行き止まりのように見せかけて敵を惑わせたもの。また、尾根伝いに攻めてくる敵を阻む堀切は山中の要所にあり、ぱっと見には細長い窪地のようにも見えるのですが、物見台下堀切は固い岩盤を削って造成した大規模なもの。ちなみに、この上にある物見台は、晴れた日には赤城山、榛名山、妙義山の群馬の名山から日光連山、浅間山までが見渡せる眺望スポットになっています。
金山城には池が2つあり、籠城の際も水には困らなかったそう。そのうちのひとつ月ノ池を過ぎると金山ハイクのハイライト、大手虎口に到着。ここは実城(みじょう)へ向かう通路を守る重要な防御拠点で、何層にも積まれた重厚な石垣群が山中に突如出現するので、中世にタイムスリップした気分になること請け合い!現在のものは復元ですが、高度な技術によって堅固な造りを実現した山城の建造物に誰もが圧倒され、難攻不落であったことを確信するのは間違いありません。
石垣を上っていくといよいよ本丸へ。ここには1873(明治6)年に創建された「新田神社」があります。かつては茶店が並び、賑やかだったという参道の神社手前で枝を広げる樹齢800年の大ケヤキが見事。本丸裏に回ると、築城当時の石垣(本丸裏残存石垣)が残っているのでこちらもお見逃しなく。
途中で立ち寄りたいスポット
金山下山後は、安政年間創業の老舗餅菓子店で休憩を。地元客がひっきりなしに訪れる「万徳」では、人気のみたらし団子や甘すぎない酢飯でいくらでも食べられるいなりとかんぴょう巻きのセットなどがおすすめ。ゴールの太田駅前には、ガラス張りの外観がスタイリッシュな「太田市美術館・図書館」があります。開架図書のスペースと美術館の展示が混在するユニークな造りの館内は必見。地産地消メニューを提供する併設カフェでひと休みするのもいいかも。
太田駅から金山までは公共交通機関がありません。健脚派なら歩いて往復することもできますが、2021年5月1日にリニューアルオープンした駅前の観光案内所ではレンタサイクルを無料で借りることもできますよ。
絹織物の町、伊勢崎で駅近歴史スポット巡り
続いて、太田駅から東武伊勢崎線で約25分の伊勢崎駅へ。駅周辺に点在するみどころを歩いて巡りましょう。駅の南口から徒歩5分、武家門通りにあるのは「同聚院の武家門」。総門は伊勢崎藩初代藩主稲垣長茂の屋敷門であったとされ、一般的な寺院の山門とは異なる薬医門の形式で、左側に潜戸がある点が注目ポイントです。
そこから徒歩5分ほどで、レンガとドーム状の屋根が特徴の「旧時報鐘楼」に到着。横浜で薬種商を営んでいた三光町出身の小林桂助氏の寄付により、1915(大正4)年に竣工したハイカラな洋風建築は県内最古の鉄筋コンクリート構造の建築物です。小学校の一角に立ち、昔と変わらぬ愛らしい姿で市民に親しまれています。
レトロかわいい伊勢崎銘仙とイケメン埴輪男子に胸キュン!
次に訪ねたのは、1912(明治45)年に建てられた洋館を活用した「いせさき明治館」。ここでは、明治から昭和にかけて女性のおしゃれ着として一世を風靡した絹織物、伊勢崎銘仙の着物を展示。医院として使われていた建物は、外観は洋風建築の様式ながら内部は和風。和洋折衷の館内はレトロな色模様の着物で華やかに彩られ、思わず見とれてしまいます。展示する着物は季節によって替えられ、2021年5月現在は休止中ですが、スタッフの手が空いている時は銘仙着物の着付け体験も行っているそう。
続いて、江戸時代町役人を務めた相川家旧宅を活用した博物館「相川考古館」へ。相川家は江戸時代後期には金物を商いし、明治期には醤油製造・販売、その他養蚕なども手掛けていました。ここでは、郷土の考古遺物を収集した相川之賀の貴重な考古コレクションを見ることができます。なかでも、国の重要文化財に指定されている人物埴輪4体は必見!群馬県は人物埴輪が多数出土していることで全国的に有名で、琴を弾いたり、盛装や武装でびしっと決めたりしている、こちらの端整な男子像の埴輪たちも近隣から出土したものです。6世紀のものとは思えない精巧さと状態のよさには驚くばかり。群馬県内における重要文化財の埴輪は県立博物館とここでしか見られません。城下町ならではの奥行きのある敷地には、1837(天保8)年造の巡検使が休憩された母屋やこだわりの茶室(県指定重要文化財)、1882(明治15)年造の土蔵造りの稲荷社などがあり、みどころいっぱいです。
伊勢崎銘仙をお持ち帰り
散策の最後は、鎌倉時代創建の「伊勢崎神社」へ。1848(嘉永元)年造営の本殿は繊細な彫刻が美しいので、社殿横のほうにも回って見学を。また、人気の伊勢崎銘仙柄の御朱印やお守り袋は好みの柄をぜひ手に入れて。市内和菓子店で購入できる、銘仙をモチーフにした和菓子もおみやげにおすすめ。羊羹に定評がある「舟定屋」の伊勢崎銘菓、絹織物の反物を表現した羊羹の絹のながれや、繊細な絹糸を表現した和洋菓子の繭ごころはパッケージも魅力的です。
【インフォメーション】
太田市立史跡金山城跡ガイダンス施設(史跡金山城跡)
住所:〒373-0027 群馬県太田市金山町40-30
TEL:0276-25-1067
営業時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(休日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~翌年1月3日まで)
料金:入館無料
アクセス:東武線太田駅から車で約10分
万徳
住所:〒373-0057 群馬県太田市本町33-29
TEL:0276-22-7921
営業時間:8:00~17:00
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)
アクセス:東武線太田駅から徒歩約14分
太田市美術館・図書館
住所:〒373-0026 群馬県太田市東本町16-30
TEL:0276-55-3036
営業時間:カフェ10:00~20:00、美術館・図書館 10:00~18:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
料金:図書館は入館無料、美術館は展示により異なる
アクセス:東武線太田駅から徒歩すぐ
https://www.artmuseumlibraryota.jp/
同聚院の武家門
住所:〒372-0055 群馬県伊勢崎市曲輪町14-15
TEL:0270-75-6672(伊勢崎市文化財保護課)
営業時間:見学自由
アクセス:東武伊勢崎線・JR両毛線伊勢崎駅から徒歩約5分
旧時報鐘楼
住所:〒372-0055 群馬県伊勢崎市曲輪町28-23
TEL:0270-75-6672(伊勢崎市文化財保護課)
営業時間:見学自由
アクセス:東武伊勢崎線・JR両毛線伊勢崎駅から徒歩約8分
いせさき明治館
住所:〒372-0055 群馬県伊勢崎市曲輪町31-4
TEL:0270-40-6885
営業時間:10:00~17:00
休館日:月・火曜日(祝日の場合は水曜日)
料金:入館無料
アクセス:東武伊勢崎線・JR両毛線伊勢崎駅から徒歩約10分
https://isesaki-kankou.com/meijikan/
相川考古館
住所:〒372-0046 群馬県伊勢崎市三光町6-10
TEL:0270-25-0082
営業時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日:月曜日(祝祭日を除く)、年末年始
料金:入館500円(小中学生は200円)
アクセス:東武伊勢崎線・JR両毛線伊勢崎駅から徒歩約12分
伊勢崎神社
住所:〒372-0047 群馬県伊勢崎市本町21-1
TEL:0270-25-0542
営業時間:社務所受付9:00~17:00(10~3月は16:30まで)、
アクセス:東武伊勢崎線・JR両毛線伊勢崎駅から徒歩約10分
舟定屋
住所:〒372-0047 群馬県伊勢崎市本町23-2
TEL:0270-25-1024
営業時間:9:30~19:00
定休日:月曜日
アクセス:東武伊勢崎線・JR両毛線伊勢崎駅から徒歩約10分
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。お越しの際は事前にご確認いただくことをおすすめします。
※2023年1月時点の情報です。