自家用車がなくてもOK!高速バスで行ける群馬の名湯
東京と群馬の温泉地を結ぶ複数の高速バス
都心から群馬の温泉地へは、四万温泉へと向かう関越交通の「四万温泉号」や、草津や伊香保など人気の温泉地へ直通するJRバス関東の「上州ゆめぐり号」など、複数の会社が高速バスを走らせています。
なかでも上州ゆめぐり号は、伊香保温泉、川原湯温泉、草津温泉と3つの温泉郷と都心を結ぶ人気の高速バスです。
バスを利用して実際にどのような温泉地巡りができるのか詳しく紹介していきましょう。
※ページの末尾に都心と温泉地を結ぶおすすめの路線を紹介しています。
上州ゆめぐり号は東京駅や新宿駅、練馬駅の近くから出発します。高速バスは道路の混雑状況や天候により大幅に遅れが発生することがあるそうですが、上州ゆめぐり号にはトイレが設置されているので、移動が長時間になってもあまり心配する必要はなさそうです。
東京駅出発から2時間強、新宿から1時間30分ほど走ったところで関越自動車道・上里SAに到着。ここで20分ほどの休憩があります。トイレを利用できるほか、ちょっとした軽食を買うこともできます。
文化と湯気が香る温泉地、伊香保へ
順調に行けば、東京駅出発から3時間15分ほどで伊香保温泉に到着します。
伊香保温泉は日本の『温泉都市計画』第一号の街ともいわれ、全国の温泉地の形成の先駆けとなった地域です。歴史は古く、天正4年(1576年)に形成されたといわれています。以来、数多の著名人・文化人に愛されてきたことから、数々の文化的なスポットが残っています。
大正ロマンを体感できる見晴下エリア
伊香保温泉には2つのバス停があり、賑いのある温泉街に近いのが「伊香保石段街」、竹久夢二伊香保記念館や大規模な日帰り温泉があるのが「見晴下」です。
竹久夢二伊香保記念館では大正ロマンを体感することができます。竹久夢二の作品群はもちろん、美しい建築や100年もののアンティークに囲まれ至福のときを過ごすことができるでしょう。
また、近辺には日帰りで利用できる大規模な温浴施設もあります。
レトロな街歩きが楽しい石段街
石段街の入口には、記念撮影にぴったりなオブジェが誂えてありました。
まずはここで記念の1枚を撮ってから先へ進みましょう。
階段の中央部には温泉が流れており、もうもうと湯気をあげています。温泉に来た気分が高まりますね。
少しあがったところから階段のカウントがスタート。ここから石段街の一番上まで365段あります。
右手には公衆浴場の「石段の湯」もあります。
ユニークな歴史を感じられるエリア
石段街をややそれると、渋川市指定史跡「ハワイ王国公使別邸」や三国街道の裏往還の要所として設置された伊香保関所を自由に見学し、歴史に触れることができます。
さらに坂を下っていくと現れるのは徳冨蘆花記念文学館です。伊香保は徳冨蘆花(とくとみ・ろか)がベストセラー『不如帰(ほととぎす)』のなかで主人公が幸せな時を過ごす舞台として描いたことから一躍有名となり、人気の温泉地となりました。伊香保を気に入っていた徳冨蘆花は、何度もこの地を訪れており、腎臓を患った晩年も伊香保での療法を望みました。最期は老舗旅館・千明仁泉亭で息を引きとっています。
文芸の街・伊香保
伊香保は万葉集のなかの9首にその名が記され、また俳聖・松尾芭蕉も句を詠んでいることから、度々「文芸の街」としての魅力が語られます。
街中のいたるところに投句箱が設置されているほか、歌碑などをみつけることもできます。
大変かと思いきや、お土産屋さんなどを覗きながら歩いていくと365段はあっという間。寄り道をしながらゆっくりゆっくり登っても、20分もあれば頂上の伊香保神社にたどり着けます。
ここでお参りをして回れ右をしてもいいですが、伊香保ならではの面白い体験をしたい方はもう少し奥へと進んでみましょう。
温泉療法発祥の地で健康に近づく!?
神社の奥の道を抜けて、しばらく行くと飲泉所があります。
伊香保は明治時代に湯治の効能を説いたドイツ人医師ベルツ博士の重要な研究の場の一つであり、その功績は今でも語り継がれています。ベルツ博士は、温浴による健康増進だけでなく、温泉を飲むことによっても身体が丈夫になると「飲泉療法」を生み出し、広めました。
そこで整備されたのが「飲泉所」です。ここでは源泉「黄金の湯」を飲むことができます。誰でも口に含むことができるようになっているのでぜひ試してみましょう。
気になるお味は……、金属の味!? 訪れた方はお試しあれ。
さらに進むと源泉「黄金の湯」に浸かることができる露天風呂があります。
その名の通りミネラルを豊富に含んだ「黄金色」の湯で、健康によさそう。開放的な露天風呂で、気がつけば近くにいる人と仲良くなってしまうような不思議な空気感が漂うスポットです。
夜は優しい灯りが美しい石段街
伊香保は夕方以降も魅力的。街中に提灯や明かりが設置された石段街はまた美しく、フォトスポットとしても素晴らしい場所になります。
風光明媚なダムの街・川原湯温泉
伊香保や草津と比べると規模は小さいですが、上州ゆめぐり号で行けるおすすめの温泉地には川原湯温泉もあります。
川原湯温泉へは、東京駅から上州ゆめぐり号でおよそ3時間20分。温泉地へ近づいてくると、バスのなかでも硫黄の匂いをほのかに感じました。
まもなく到着というアナウンスが流れるころには、バスのなかから八ッ場(やんば)ダムを見ることができます。
八ッ場ダムは2020年に竣工したダムで、この下にはかつての川原湯村が沈んでいます。首都圏の治水のために建設された八ッ場ダムは、運用開始前の2019年にも活躍。発生した巨大台風19号の大雨を貯留し、注目を浴びました。
かつての川原湯温泉駅も現在はダム底にあたる場所にあったため、2014年には新たな駅舎が誕生しました。無人駅でありながら立派な造りです。
駅の近くには川原湯温泉を満喫するための施設「川原湯温泉あそびの基地 NOA」があります。
観光案内のほか、自転車の貸し出しやビールの醸造、カフェの運営がされており、くつろぎながらの情報収集が可能です。
また、夏場にはキャンプサイトがオープン。美しいダム湖を眺めながらBBQなどを楽しむことができます。
生まれ変わった温浴施設で絶景を堪能
川原湯温泉の共同浴場は「王湯(おおゆ)」。およそ800年前に源頼朝が発見したという歴史ある温泉です。こちらもダム建設とともに移設され、2014年に現在の場所にオープンしました。
川原湯温泉駅やバス停からは徒歩15分ほどですが、その道中ずっと吾妻川の絶景を眺め続けることができます。
王湯にはほどよい温度の内湯と、吾妻川を眺めながら温浴のできる露天風呂があります。広い空と紺碧の水面を眺め、澄んだ空気のなかで浸かる温泉はなんとも贅沢。至福のひとときを過ごすことができます。
風光明媚な川原湯温泉で逗留するのもいいですが、温泉地をはしごしたいという方はここから草津温泉へ向かうことも可能です。
川原湯温泉駅からJR吾妻線で1駅移動し、長野原草津口駅へ。電車到着にあわせて運行しているJRバスに乗り継ぎ、約25分ほどで到着します。
自然湧出量日本一の草津温泉
上州ゆめぐり号の終点は言わずとしれた温泉郷・草津温泉です。
バスはまず、草津温泉バスターミナルに到着。バスターミナル内には手湯や足湯が併設されており、温泉気分を一気に盛り上げてくれます。
バスターミナルから徒歩約5分で有名な湯畑に到着。もうもうと立ち上る湯気にテンションがあがります。
草津温泉には大きく分けて7つの源泉があり、町のいたるところに公共浴場や足湯、手湯があります。裏草津と呼ばれる地蔵温泉のあるあたりには蒸気で顔を蒸す「顔湯」というユニークな温浴設備もあります。
町内には誰でも無料で入れる地蔵の湯、白旗の湯、千代の湯といった共同浴場が複数存在するほか(町民だけが利用できるものもあるので注意)、有料の公共浴場、民間の温浴施設も無数に存在します。また各旅館でも日帰り入浴を受け入れているので、無限の選択肢が広がっています。温泉好きにはたまらない街でしょう。
無料の共同浴場は湯船と脱衣所のみが設置されているところが多いので、タオルは持参するようにします。なお、草津の温泉は酸性であり、アルカリ性の石鹸は使うことができません。しっかりかけ湯をし、湯に浸かりましょう。
泉質は源泉によって異なりますが、ミネラルが豊富な草津の温泉は白濁していることが多く、硫黄の匂いもしっかりとしているので温泉に入った満足感が高いことが特長です。浴槽の縁や底には湯の花がたっぷり。足元は滑りやすいので注意しましょう。
草津温泉ならではのおもてなし「湯もみ」
また、草津の温泉は源泉の温度が高いことが特長。多くは50℃、一番高い源泉は90℃に達します。しかし、水を入れて薄めてしまうと温泉の濃度が下がってしまうので効果を満足に得ることはできません。そこで考えだされたのが「湯もみ」という入浴方法です。
湯を冷えた空気にさらすことで温度を下げ、快適に入浴を楽しめる温度に調整しています。
湯もみはやがて湯治客へのおもてなしとして行われるようになり、歌や踊りも披露されるようになりました。
現在では湯畑の眼の前にある「熱乃湯」で湯もみと踊りのショーを楽しむことができます。
食べ歩きやレトロな町並み散策も面白い
泉質の優れた草津温泉ですが、楽しめるポイントは温泉だけではありません。大正や昭和を彷彿とさせるレトロ感あふれる街並みは歩いているだけで楽しく、忙しい日常を忘れることができます。迷子になってみるのもまた一興。とはいえ、町のいたるところに案内板があるのですぐに中心地である湯畑に戻ってくることができます。
また、中心部には名物のうどんや上州牛、舞茸を使った飲食店や食べ歩きのお店、土産物屋が軒を連ねており、見て回るだけでも時間が過ぎていきます。
温泉に浸かって小腹が減ったら、温泉まんじゅうや街角で売られている焼き鳥を頬張ってみましょう。温泉卵や群馬名物のこんにゃく料理も見逃せません。
草津温泉は夜が幻想的
夕方になるとライトで照らされた町並みが心を潤してくれます(冬季は16:30が目処)。湯畑は湯気がライトで彩られ、一層幻想的な雰囲気に。湯畑近くにはガス灯の外灯が灯り、温かい光で町を照らしてくれます。
湯畑を見下ろすように立つ五重塔も艶やかです。また冬季限定で設置される湯畑ツリーも豪勢で、美しい街並み色を添えます。
温泉が川のように流れている西の河原公園も、ライトアップされるとさらに幻想的な雰囲気に。非日常的な雰囲気を味わえます。
取材に訪れた2024年2月の時点では世界各地から観光客が訪れていました。都心からバスで気軽に訪れることができるので、若い観光客も多く、活気にあふれています。また草津温泉の伝統を守ろうとされている方々の努力が実り、観光客もマナーを守って温泉を楽しんでいる様子。世界に誇れる観光地となっています。
気軽に行けて、たっぷり楽しめる高速バスによる湯めぐり旅行。ぜひ旅の計画に加えてみてください。
その他、群馬の温泉地と都心を結ぶ高速バス
〈草津温泉に行くなら〉
・ブルーライナー草津温泉号(大宮・川越・高崎発/広栄交通バス)
・Dts line八ッ場・草津温泉号(東京・池袋発/さくら高速バス)
・軽井沢・草津温泉行き(渋谷・中野坂上発/東急トランセ・京王バス)
・横浜・新横浜・たまプラーザ~軽井沢・北軽井沢・草津温泉(横浜・新横浜・たまプラーザ発/東急トランセ・相鉄バス・上田バス)
〈四万温泉に行くなら〉
〈伊香保温泉にも四万温泉にも行けるバス〉
・伊香保・四万温泉号 羽田線(羽田エアポートガーデン発/関越交通)
〈伊香保温泉にも草津温泉にも行けるバス〉
インフォメーション
石段の湯
〒377-0102 渋川市伊香保町伊香保36
TEL:0279-72-4526
アクセス:バス停「伊香保石段街」より徒歩約5分
定休日: 毎月第2火曜日、第4火曜日(祝日の場合は翌日)
営業時間:10:00~20:00 ※最終入場19:30 ※入場は営業終了時間の30分前まで ※点検休有り
https://www.city.shibukawa.lg.jp/kankou/ikahoonsen/ikahoonsen/p003077.html
伊香保露天風呂
〒377-0102 群馬県渋川市伊香保町伊香保581
TEL: 0279-72-2488
アクセス:バス停「伊香保石段街」より徒歩約14分
定休日:毎月第1木曜日、第3木曜日(祝日の場合は営業。火曜日は無休)※点検休有り
営業時間:4月から9月 9:00〜18:00
10月から3月 10:00〜18:30 ※入場は営業終了時間の17:30まで
https://www.ikaho-kankou.com/spring/spa1/
川原湯温泉あそびの基地 NOA
〒377-1302 群馬県吾妻郡長野原町大字川原湯223-5
TEL: 0279-82-5250
アクセス:JR・バス停「川原湯温泉」より徒歩約1分
定休日:月曜日(祝日は営業)
営業時間:10:00~17:00
https://yamba-kawarayu-noa.com/index.html
王湯
〒377-1302 群馬県吾妻郡長野原町川原湯491 6
TEL:0279-83-2591(川原湯温泉協会)
アクセス:JR・バス停「川原湯温泉」より徒歩約15分
定休日:1月1日、1月20日
営業時間:10:00~17:30
http://kawarayu.jp/ouyu.html
熱乃湯
〒377-1711 群馬県吾妻郡草津町草津414
TEL:0279-88-3613
アクセス:草津温泉バスターミナルより徒歩約5分
定休日:無休。ただしメンテナンスやイベントによる臨時休園あり
営業時間:最初の公演9:30~、 最後の公演16:30~(受付時間:8:30〜17:00)
https://www.ikaho-kankou.com/spring/spa1/