「電車で登山へGO!」駅から登れる“桐生・吾妻山”の楽しみ方【ぐんま観光県民ライター(ぐん記者)】

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更新日: 2024年03月27日

群馬県の魅力をぐんま観光県民ライター(ぐん記者)がお伝えします!

みなさん、山は好きですか? 年にどのくらい登っていますか? 「山は好き…だけど、登山は年に1、2回…」「百名山に登るのが趣味で、週末は遠くまで!」そんな登山をライトに楽しみたい人から、すっかり山に魅せられてしまった人まで。自然が好きなすべての方にオススメしたいのが、私の住む街、桐生市にある吾妻山です。

毎日登りたくなるほど、近くて、奥が深い山

いざ登山となると「行きたい山とルートを調べて、道具の準備・手入れをして、まだ暗い早朝に起きて出発…」となかなか気軽ではありません…。私自身も「山や川は好きだけど、登山まではなかなか…」というレベルの万年ビギナーですが、なぜか吾妻山には一年に何度か登ります(週イチで登っていたダイエットブーム期もありました…)。
市街地から歩いて行ける吾妻山は、古くから桐生市民にひろく親しまれてきました。朝の散歩がわりに毎日登る猛者もいるほどで、週末ともなれば多くの登山者でにぎわいます。吾妻山は、それほど気軽に登れる山です。北アルプスのような大迫力こそありませんが、まちに寄り添うようにある吾妻山は、まさに山懐(やまふところ)という言葉が似合う独特の情緒があります。

遠くに赤城山を望む。手前は渡瀬川。桐生は足尾山地のはじまりでもある。

桐生駅・南口/すぐ近くに山が迫っている様子がわかる。

山とレトロな街とのコントラストを楽しみながら登山口方面へ

桐生はJR・東武鉄道・上毛電気鉄道・わたらせ渓谷鉄道と、実に4路線が乗り入れる隠れた鉄道の街です。吾妻山へ向かう人におすすめの最寄り駅は、桐生駅か上毛電気鉄道の西桐生駅です。映画の舞台ともなったレトロな西桐生駅舎など、かつて織物産業で栄えた歴史情緒残る街並を楽しみながら、まずは登山口への起点となる吾妻公園を目指しましょう。50台ほど停められる吾妻公園の駐車場は、天気の良い週末ともなると昼前には満車状態。でも電車でくれば、駐車場も気にせず登ることができます。吾妻公園は、中央の池をぐるりと自然が囲んだ谷あいにある公園。春にはチューリップが咲き誇るなど、散策するだけでも楽しい公園です。この吾妻公園内を横切るように、登山口を目指して登っていきます。


レトロな駅舎とプラットホームがユニークな上毛電気鉄道 西桐生駅

最初の目的地となる吾妻公園駐車場

登山口への入り口となる吾妻公園。四季折々の自然が楽しめる。

吾妻公園を登ると、登山口までは緩やかな尾根が続く

岩場あり、林間あり、さまざまな表情が楽しめるコース

20分ほど歩くと、ようやく登山口。ひと息ついて登っていきましょう。吾妻山の標高は481m。低山ながら、ルート環境は実に多彩です。平坦な林間を歩き抜ける区間もあれば、ゴツゴツとした岩が露出した場所や、ロープや鎖が張られた急傾斜地もあるなど、景色を楽しんでいたと思ったら、いつのまにか息荒く懸命に登っています。この取材当日は快晴ながら、前日の夜に山間部に雪がチラついたため、木々にうっすら積もった雪が暖かい日の光を受け止めて、幻想的な風景を作り出していました。登山といえば、登頂ルートを見失う遭難がなによりのリスクですが、吾妻山のルートは、地元有志の“吾妻山友の会”を中心に、きれいに整備・管理され、岐路には分かりやすいサインもあるため、迷うことはありません。

ようやく登山口に到着、ここから約40分をかけて山頂を目指す

地元有志により丁寧に管理されており、安心して登ることができる。

一年中降雪はほとんどないが取材日の前日の夜にうっすらと雪が積もった。

東京スカイツリーまで見通せる絶景を求めていざ山頂へ

登山口から順調に登り始めて20分。休憩場所にぴったりの場所が見えてきます。桐生のまちが一望できる場所に突き出た巨石、通称“とんび岩”です。ここでしばし休憩、息を整えたら、山頂に向けて再出発します。体力に応じて選べる緩急の違う分岐ルートを過ぎれば、もうひと息。最後の傾斜のきつい岩場をクリアして、ようやく山頂です。晴れた吾妻山の山頂からの見晴らしは格別です。ここ桐生市は関東平野の行き詰まり、眼下の平野には丘陵地がほとんどないため、吾妻山から都心までを一直線で見渡すことができます。よく晴れた日には、なんと東京スカイツリーや富士山まで見ることができます。条件がそろえば、年数回現れるという雲海を拝むこともできるそうです(僕はまだ見たことがありません)。

体力に自信のない方は、このとんび岩を目標にしても良い。

ペースや体力に合わせて緩急の異なるルートを選んで登れる。

関東平野を一望できる絶景をわずか1時間の登山で拝むことができる。

登山のあとは、古くて新しい桐生を楽しもう

まちなかから近い吾妻山は、まちなか周辺スポット巡りにも便利です。吾妻公園のすぐ近くにあるAZM BASE(アズマベース)は、その名の通り、吾妻山を愛するオーナーの上久保さんオープンしたショップ&カフェです。かつて織物の一代産地であった桐生の技術が息づく “山ストール”などのグッズ販売のほか、2024年春には特製のおにぎりを販売する全天候型の“アズマキッチン”をオープンしました。登山前後をさらに充実させてくれるスポットとして、今後の展開がますます楽しみです。すぐ近くには、県内屈指のファミリー向け観光スポットである桐生ヶ丘遊園地や動物園もあり、自然と街が混ざり合うエリアの魅力を大いに味わうことができます。

吾妻山のふもとにオープンしたアズマキッチンの特製おにぎりでエネルギー補給

吾妻公園の近くには桐生七福神巡りのポイントのひとつ光明寺がある

登山後は薪で沸かしたお湯でさっぱりしてから帰りたい

アズマキッチンから15分ほど歩くと、レトロな建物が数多く残る“重要伝統的建造物群保存地区”(通称:じゅうでんけん)があります。2023年、私はこの場所で「まちの魅力の入り口となる宿を作りたい」と古民家を改装して民泊旅館を開業させました。まったく同じタイミングで当宿からすぐの場所に、一時は閉業した老舗銭湯が復活。その共同オーナーのひとりが埼玉から移住してきた山本真央さんです。老朽化した銭湯をその並外れたバイタリティで地元の人たちを巻き込み、見事に復活してくれました。いまや薪で沸かしたお湯と真央さんの笑顔を求めて銭湯好きがたくさん訪れる繁盛店です。普段は午後17時からの営業ですが、日曜日だけは特別、朝7時から13時まで朝湯をオープン。多くの登山者の疲れを癒しています。

まちなかに銭湯 一の湯を復活させた山本真央さんと看板犬のシーくん

まとめ

吾妻山は、一年中雪がほとんど降らず、いつでも登れる山です。街との距離が近いだけでなく、市民の心とも近い地域のシンボルともなっている場所。電車で行ってみるとまた違った魅力ある景色があるはずです。ぜひ一度登ってみてください。桐生でお待ちしています。

インフォーメーション

AZM BASE /アズマキッチン

住所:群馬県桐生市宮本町3-6-30

営業時間等はSNS等(@priret)でご確認ください。

 

銭湯 一の湯

住所:群馬県桐生市本町1-4-35

営業時間:17時―23時、日曜日のみ7時―13時

定休日:毎週月曜日および毎月7日・17日・27日

料金:大人450円

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星野智昭

2016年、桐生市へUターン移住。濃密な歴史・文化残るまちの観光に課題と可能性を感じ、2023年まちなかの宿Dive INN Kiryuをオープン。広告・デザイン制作で培った視点で、まちの魅力の再解釈に取り組んでいる。